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03、きつねたちのいたずら-04

 阪急大阪梅田の改札を出て、急ぎ足で十分も経たないうちに地下鉄谷町線の東梅田駅に着く。

 お初天神に一番近い出口を目指す。出口近くの壁、大きく掲げられた黄色いプレートの上方に「露天神社(お初天神)」と記されている。

 通勤で使う階段を登っていく。なぜだか、はじめて歩く道すじのような感覚があった。

 誰かに急き立てられているような。なにかに背中をグイグイ押されているような。妙な気分だ。

 白い床の階段を登っていく途中、幼い子供が集まって遊んでいるみたいなさざめきが聴こえてきた。

 ふわふわっと風に流れて、小学生くらいの男の子がお喋りしているような声が聴きとれる。

 ――「ねえ、あの人。ケン兄ちゃんの、うどん屋を見つけた女の人だよね」

 ――「あ、ほんとだ」

 ――「遊ぼうよ」

 ――「あの人で?」

 ――「そうだけど?」

 えっ。

 わたしで“遊ぶ”って、なんですか?

 ついつい周りを見渡してしまうが、ちいさな子などひとりもいないんですけど。

 階段途中はもちろんのこと、地上に出ても飲食店や商業ビルばかりの界隈で子供が集まって遊べるようなスペースなどない。階段を登り切って地上と共に一番はじめに視界に入るのは、長距離バスの停留所くらい。それくらいしか、ちいさな子が集まっていられるところ……としか想像力が働かない。

「でも、あのバス停って。子供の遠足で集合場所に使えるようなところだったっけ? 今まで、そんなの見たことないんだけど」

 ふっと湧いた考えを裏づけるように、見えてきたバス停には誰も並んでなどいない。

 そりゃ、そうだ。遠足に行くには遠すぎる、九州方面行きのバス停なのだから。

 でも何故か、聴こえてくるのだ。

 小学校に行くか行かないかくらいの年ごろの子供たちが愉しそうにおしゃべりしたり、笑ったりしている様子が見えてくるのだ。それと何故だか、背中をぐいぐい押されているような気もしてきた。

 ……落ち着こうよ、自分。まずはポケットにある、マスクを着けよう。

(待ってよ)

 心の中でつぶやく。

 すると、背中を押していた「なにか」が、すうっと消える気配がした。

 左側に足を進めると、五分も経たないうちに目的地に着ける。さっきから聴こえている子供たちの声は、ちっとも耳障りな感じがしなかった。それも、とても不思議に思える。

 

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