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始まりはいつもこんなものなのかもしれない

初めまして、数覧題と申します。

初投稿なので、至らないところだらけで、読みにくいかもしれませんが、暇のある時に、是非読んでいただけると幸いです。

第一話「それはどうしようもない理由だった」



 

 「ある日の暮れ方のことである。」

 この文章で始まる物語では、一人の下人が羅生門の下で雨やみを待っていた。この物語では、もう少し詳しく書いておくこととしよう。

 高校生活にも慣れ始めていた5月の春、夕刻、夕日の差し込む教室では、4人の生徒が机を囲んで各自が思い思いの時を過ごしている。一人は本を読み、一人は睡眠、また、二人は真面目に宿題に取り組んでいた。

名目上、”文芸部”として活動している彼或いは彼女らの実態はこんなものである。是非、全国の真面目な文芸部に対して、謹んで謝意を示していただきたい。かといって、彼彼女らとて、好き好んでこの”自称”文芸部に所属しているわけではない。彼彼女らなりの”どうしようもない”理由によってこの部に入ることになってしまったのである。



 それは、1か月前のことであった。

荻野奏は、自身の教室でやや緊張気味に座っていた。彼は、幼馴染とともにこの「私立光が丘学園」に入学したのであるが、その彼とはクラスが離れてしまった為に、周りに知り合いが全くいないのであった。とは言っても、教室全体がそのような雰囲気であったので、彼が周りから浮いているというわけではなかった。

時は経って、放課後。その幼馴染である木原唯斗が彼のクラスにやってきた。

「奏、久しぶりだな」

「そんな久しぶりって程じゃないだろ」

「それもそうだな」

そう言って唯斗は笑った。唯斗は奏と違って”当たり”のクラスを引いたようで、もうクラス全体が仲良くなっているらしい。

「どうだ、そろそろ喋る友達ぐらいはできたのか?奏」

「全然だよ。俺もそっちのクラスがよかったよ」

「そうか、まあ、ぼちぼちやれよ」

「うるせえ」

そして、唯斗はまた笑った。

この二人は小学生の頃からの仲であり、このように冗談を言い合える仲であった。

「そんなことよりも聞いた?唯斗、この高校、必ず部活動に参加しなきゃいけないらしい」

そう言って、奏は机に”白紙の”入部届を出した。

「ああ、聞いたよ。どうするよ。俺ら一回も部活に入ったことないんだぜ」

「そうだよなー。」

「いっそ、このままの(白紙の)状態で提出しようぜ。どうせやりたいことなんてないし」

「そうだな、じゃあ、提出しに行こう」

「おう」

そうして、荻野奏、木原唯斗の二人は白紙で入部届を提出したのだった。



 それは、1か月前のことであった。

朝礼で、部活動への参加が強制であることを知った上宮あおいは愕然としていた。それもそのはずである。というのも、彼女は”不思議なこと”が大好きな少女であり、”今はなき”「研究調査部」なるものに入ろうと思い、この高校に入学したものの、その肝心な「研究調査部」は廃部になっているという可哀そうな少女なのである。

時は経って、放課後。

終礼が終わった瞬間に、教室に駆け込んでくる人影が一つ。

「あおいー!」どんっ

あおいの背中に柔らかな衝撃が走る。そう、それはとても柔らかな感覚であった。

あおいが背後を振り返ると、そこにはあおいに抱き着いている如月蓮花の姿があった。

「蓮花ちゃん、どうしたの?」

「あおい、いいにおいするね」

「変態みたいだね」

「そうだよ」

そう言って背中にくっついている蓮花を、あおいは背中から引きはがす。

「まあいいや。それより、蓮花ちゃん、この紙もらった?」

そう言って、あおいは”白紙の”入部届を机の上に置いた。

「もらったよ。でも私は特に入りたい部活もないし、そのまま(白紙のまま)提出するつもりだよ。」

「そうなんだ」

「うん。あおいはどうするの?入りたかった部活なくなっちゃったんでしょ?」

「んー、私もこのまま(白紙で)提出しようかな」

「じゃあ、一緒に提出しに行こ!」

「うん!」

そうして、上宮あおい、如月蓮花の二人も白紙で入部届を提出したのだった。



 四人がそれぞれに”白紙の”入部届を提出した一週間後、その当人たちはそれぞれの担任教員から呼び出しを受けていた。そして彼らは同様の言葉を聞くこととなる。

「お前、文芸部に入らないか」

その言葉に対する、反応は四者四葉であったが、活動目的が文化祭で文集を発表すること以外、特に何も指定されていないこと、また、部員がいないということで学校内で落ち着ける場所を持つことができるということから、四人とも渋々了承したのだった。



 このような”どうしようもなく”しょうもない理由によって、彼彼女らは”自称”文芸部に所属することとなったのだった。この部で、今後どのような活動が行われ、どうなっていくのかは、この時はまだ誰も知らない。










ここまで読んでくだっさて、本当にありがとうございました。

このシリーズはまだまだ続く予定なので、また次も読んでいただけると欣幸の至りとする次第です。

では、また、次の話でお会いしましょう。

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