乗り降り自殺
俺は画期的な自殺方法を考えた。
恐らくこれを聞いたら、みんな「なるほど」って思ってくれるに違いない。とにかくすごいんだ。
まあ、とりあえず落ち着いて話を聞いて欲しい。
自殺の問題点は、結局のところ親族に迷惑がかかってしまうことだ。
最近流行るの線路への飛び込み自殺は、ダイヤが乱れたことによって家族に多大な賠償金が圧し掛かってしまう。
家族を憎んでいるのならともかく、そうでない人にとっては辛い選択だろう。
いや、むしろそんなこと考えられなくなっているだろう。それじゃあいけない。
あくまで自分の責任でない、相手の過失からくる自殺に見せかけることこそ、最良の自殺ではなかろうか。
へっへっへっ、ざまあみやがれ。
というわけでコンセプトは分かってもらえたと思う。
では、本題に入ろう。
乗り降り自殺とは、乗り物から降りたり乗ったりする時、事故に見せかけて自殺することだ。
例えば車から降りた時、猛スピードでやってきたバイクにハネられて死ぬとか。
電車に乗ろうとして溝にハマり、そのまま誰にも気付かれないまま出発されて死ぬとか。
馬から降りようとした時、馬を刺激して俺を蹴落としてもらって、首の骨を折って死ぬとか。
まあ方法はいろいろあるが、とにかく今までに無い自殺だということには違いないはずだ!
疑っているな? よし、なら実践してみせよう!
というわけで、今俺はJPの浜手線、佐津街駅に来ている。
電車がきたら俺は、早速この乗り降り自殺を実践してみせるぞ。
よし、電車がきた。
急行か、確かにこれならあの世へ急行できそうだ。
なんちゃって。
俺は乗り込む振りをして、ストンと溝に落ちた。
溝とはこんなに広いものなのか、俺の身体は見事に溝の中へとはまった。
あとは上手く線路の上に頭を置けば良いだけだ。
しかし、ここで問題が起きる。
あろうことか、頭だけが挟まったのだ。マズイ。発車してしまう。
……いや、これでいいじゃないか! これで俺は事故死できる! 駅員の確認不足を追及できるんだ!
「グガガ……」
が、駅員はバカじゃなかった!
俺に気付いたのか、車掌が俺に近づいてきてこういった。
「た、大変だ。今すぐお助けしますね!」
それをみた俺は、慌ててそれを止める。
「いいから! 俺はこのままでいい! 俺のせいでダイヤがこれ以上乱れたら申し訳が立たない、行ってくれ!」
そう聞くと、駅員さんはテープレコーダーの停止ボタンを押して、ニヤリと答えた。
「確かに聞き届けました。それではあなたにも我々鉄道会社にも責任なしということで」
「あ、いや、そうじゃなくて。あ、ちょっと待って! あのさ、こういう溝を作ったことに対するアンタラの責任をだね!」
「シュッパツシンコー」
グシャッ。
彼は、三百万人の通勤通学のために、尊い犠牲となった。
ライス先生の飛び降り自殺を参考にしました。許可取ってないから著作権で訴えられるかもしれません。そしたら僕は獄中で鉄格子自殺という作品を書くでしょう……か?
鬱屈さが出ただけの作品になっちゃったなあ。