コーラの正体
「ここにコーラがあるでしょう?」
と、桜井さんが言う。
「ぼくにはコーヒーに見えるけど」
ぼくはテーブルの上のペットボトルのなかをのぞき込んだ。
ここは放課後の教室。
夕日がさすなか、クラスメイトたちは部活なり遊びなりに励んでいるのに、ぼくらはなぜこんなシュールなことをしているのか。
もとはといえば、ぼくのクラスメイトの大木というやつが飲み物をやるよ、といってペットボトルを置いていったことがはじまりだ。
中身もいわず、大木は足早に立ち去った。
残されたぼくと桜井さんはそのペットボトルを前に立ちすくんでいた。
「この飲み物は黒色です」
「それはぼくにもわかるよ」
「だから、コーラだと思うんです」
「でも炭酸ガスがない」
「気が抜けているだけでしょう」
「素直にコーヒーだとみるべきだと思うけど」
「飲んで見ればわかります」
「こんなえたいのしれないもの、飲む必要はないよ」
しかし、桜井さんはペットボトルをつかむと、それに口をつけた。
そして、にやりと微笑む。
「これは……あれですね」
「なんだったの?」
「先輩、気になります」
「うん」
「教えてあげません」
くすっと桜井さんは笑うと、ぼくにペットボトルを渡した。
ぼくはためらった後、好奇心に負けた。
ぼくはペットボトルの飲み物を飲もうとし、そして吹き出した。
「そばつゆじゃないか」
「はい。そばつゆですね」
「大木のやつ……」
なんでこんなものを学校に持ってきているのか。
ぼくがつぶやくと、桜井さんはぼくの方をぽんと叩いた。
「それは重要な問題ではありませんよ」
「なにか重要な問題がある?」
「間接キス、しましたよね」
そう言うと、桜井さんは唇に人差し指を当て、柔らかくほほえんだ。