ぼくの従妹と桜井さん
目覚まし時計を止めて、布団のなかにくるまったら、一緒に住んでる従妹が起こしに来た。
「兄さん、起きてってば」
「……だいじょうぶ。まだ起きなくても学校は間に合うでしょ」
「桜井さんが迎えに来てるんだけど?」
言われて慌てて起き上がる。
ぼくの従妹は、名前は夕という。
夕は中学生のころからぼくと同じ家にいるけれど、なんだか最近ちょっとぼくに冷たい気がする。
夕はもう制服のセーラー服に着替えていた。
ちなみにぼくらは同じ高校に通っている。
ショートカットの髪をかきあげて、ジト目で夕は言う。
「付き合ってる女の子を待たせるのはよくないよ」
「前も言ったけど、ぼくと桜井さんは付き合っているわけじゃない」
「なら、彼女でもないのに、なんで家まで迎えにくるわけ?」
「それは桜井さんに聞いてよ」
「それはヤダ。あたし、あの子のこと嫌いだし」
「ぼくは桜井さんのことが好きだけどね」
「女の子として?」
「友達として、だよ。手間をかけてごめんだけど、『すぐ行く』って、桜井さんに伝えといてくれる?」
夕は何も言わずにうなずくと、扉を叩きつけるように閉めて、ぼくの部屋を出ていった。
なんだか夕を不機嫌にさせてしまったみたいで、気分が重い。
ぼくは一通りの身支度を終えた後、玄関へ行って扉を開けた。
「お早うございます、先輩!」
「おはよう。だけど、なんでうちに来たの?」
「可愛い後輩がわざわざ迎えに来てあげたのに、『なんで』はひどいです。来るなって意味ですか?」
「ええっと、そんなつもりはないよ。来てくれてありがとう」
「あ、いまのは冗談です。先輩がわたしを歓迎してくれていることは知っていますから」「へ?」
「わたしのこと、好きなんでしょう? 友達として、ですけど」
「夕に聞いたの?」
「ええ」
夕は桜井さんのことが嫌いだと言っていた。
なのになぜそんなことを伝えたんだろう?
「なぜここに来たかっていう最初の質問に答えてあげましょう。わたしは慌てる先輩と、不機嫌な夕さんを見たかったんです」
「よくわからないな」
「友達として、なんて答えちゃう先輩にはわからないでしょうけどね。でも……」
桜井さんは唇に人差し指を当てて、くすっとほほえんだ。
「目的は達成できましたね」