表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後輩とぼく ―あるいはどうして美少女にぼくは振り回されているのか―  作者: 軽井広@北欧美少女コミカライズ連載開始!
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/16

さくら

 その年の十二月二十四日は金曜日で、ちょうど二学期最後の日だった。

 あと三か月ちょっとでぼくは高校三年生になり、桜井さんは二年生になることになる。


 同じ学校にいられるのも、あと一年ということだ。


「前も言いましたけど、同じ大学に行けばもっと一緒にいられますよ?」


 隣の桜井さんがからかうように言う。

 いま、ぼくらは二人で、ターミナル駅のビルの上に展望台にいた。


 もう日は沈んでいて、目の前にはぼくらの住む地方都市の夜景が広がっている。

 ここは完全にデートスポットで、周りにいるのはカップルばかりだった。


 ぼくと桜井さんも、恋人同士に見えているかもしれない。


「先のことはわからないから」


 ぼくがつぶやくと、桜井さんは少し不機嫌そうにぼくを見つめた。


「わたし……先輩と一緒にいたいんです。この意味、わかりませんか」


「それは……」


「今日だって、先輩からわたしのことを誘ってくれて期待しているんですよ?」


 少しいたずらっぽく桜井さんは笑ったけれど、その瞳は不安そうに揺れていた。

 ぼくはわざととぼけてみせる。 


「高所恐怖症のぼくをからかえるっていう期待?」


「違います! だいたい高所恐怖症はわたしも同じで……」


 桜井さんは窓の外の景色を見て、ぶるっと震えた。

 長い綺麗な黒髪が揺れる。


「怖いなら、来たくないっていえばよかったのに」


 ぼくが笑うと、桜井さんは頬を膨らませて、ぼくをにらんだ。


「先輩が誘ってくれたのに断るわけないです。それに、ここに来れば……わたしたち、カップルに見えるかもしれないなって思ったんです」


「カップルに見えてほしいの?」


「そういうわけじゃなくて……っ。今日の先輩は意地悪です!」


 ぼくはいつもどおりで、むしろ桜井さんがいつもの調子が出せていない感じがする。

 なんだか緊張してそわそわしているように見える。

 髪先を指でいじり、桜井さんが目を伏せた。


 ぼくは意を決した。


「ぼくは桜井さんと彼氏彼女に見えてほしいと思っている」


「それって……」


「桜井さんのことが好きってこと」


 桜井さんは黒い瞳を大きく見開いた。

 そして、みるみる顔を真っ赤にする。


「先輩のほうから言ってくれるなんて思いませんでした」


「そのためにここに誘ったんだし」


「そうだったんですね」


 クリスマスイブに雰囲気の良い場所に誘ったのは、べつに偶然じゃない。

 ぼくは緊張して桜井さんの返事を待った。


 桜井さんはくすっと笑った。


「わたし、これで先輩のことをもっとからかえるようになりましたね」


「ええと、返事は……?」


「今日からわたしは先輩の彼女ですよ?」


 桜井さんの言葉を聞いて、ぼくは顔を赤くした。

 そう。


 ぼくと桜井さんは彼氏彼女ということになる。

 桜井さんがぴょんと飛び跳ねるようにぼくに近づいた。


 そして、正面からぼくに抱きつく。

 びっくりするぼくの唇に、桜井さんが人差し指を当てる。


「こういうことをされても、先輩は拒否できないわけですよ!」


「もともと拒否するつもりなんてないけれど」


「そうですよね! 先輩もうれしいでしょう?」


 嬉しいのはそうだけれど、このままだとからかわれる一方だ。

 ぼくは反撃に出た。


「さくらさんも嬉しいんだよね?」


 さくらさん、という言葉を聞いて、桜井さんがぴたりと動きをとめた。

 桜井さくら、というのが目の前の少女の名前だった。


 桜井さんは、いや、さくらさんはぼくに抱きついたまま、上目遣いに僕を見つめた。


「その名前で呼ばれると恥ずかしいです。桜井っていう苗字に、さくらって名前、変じゃないですか?」


「可愛いと思うけど」


「そう、ですか」


 さくらさんは目を伏せて、耳たぶまで顔を赤くした。

 

「先輩に呼ばれるなら、悪くないかもしれません」


 さくらさんはそう言って、瑞々しい赤い唇を、そっとぼくに近づけた。

●作者からのお知らせ●

これにて「ぼく」と「桜井さん」の物語はいったん完結です!


面白かった、桜井さんが可愛かったという方は、ぜひページ下のポイント評価欄からポイントを入れていただければ幸いです!


また、教え子のお姫様、幼馴染の聖女、明るいメイド、美人の師匠といったヒロインが登場するラブコメ・ファンタジー作品『追放された万能魔法剣士は、皇女殿下の師匠となる』(日間ランキング総合最高3位)も投稿していますので、そちらもよろしくお願いします! 


もう一つの現代ラブコメ作品『クールな女神様と一緒に住んだら、甘やかしすぎてポンコツにしてしまった件について』とあわせて、下にURLがあります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ