クラスメイトと対抗心
「せ、ん、ぱ、い! お昼ご飯、一緒に食べましょう」
「いいけど、昼休みにうちの教室まで来なくてもいいのに」
「へえ、それはわたしいが誘えば中庭とかで一緒にお昼してくれるってことですか?」
「そうだよ」
「そんなこと言って、ホントはわたしと一緒にいるのが恥ずかしいんでしょう」
たしかに、教室に桜井さんが来ると目立つのがちょっと面倒だ。
桜井さんみたいな可愛い女の子の後輩が、ぼくを訪ねに頻繁にやってくると、男子の視線が痛い。
そして、美少女好きなのは男子に限らない、ということもある。
「なーに、やってんの?」
「べつに灯里の気にするようなことじゃないよ」
ぼくが言うと、その女子生徒はにやにやしながらぼくの肩を叩いた。
彼女の名前は白川灯里。ショートカットの髪型で、女子にしては背の高い、さっぱりとしたタイプのクラスメイトだ。
「灯里?」
桜井さんがつぶやき、ジト目でぼくを見た。
「わたしのことは下の名前で呼んでくれないのに」
「白川さんって学年に何人かいるからね。呼びわけないと面倒で」
ぼくが慌てて補足する。
「そうそう。べつにこいつのことをとったりしないから、安心してよ。桜井ちゃん」
あっさりと灯里が言う。
桜井さんは警戒したように一歩後ろに下がった。
「なんでわたしの名前を知ってるんですか?」
「だって、桜井ちゃん、有名でしょう? 学校一の美少女で、頭も良くて、それに行動も目立つし」
「ちゃん付けはやめてください」
「対抗心むき出しで面白いなあ。あたし、可愛い女の子、好きなんだよね」
くすくすっと笑うと、灯里はひらひらと手を振って、「じゃあね」と言って去っていった。
あとに残された桜井さんは無表情だった。
やがて小声で言う。
「先輩って意外と女子と仲が良いんですか」
「意外と、は余計だよ」
「そうですね。意外でもないかもしれません」
桜井さんはつぶやいた。
それから、桜井さんは微笑んだ。
「ともかく、お昼を一緒に食べましょう」
「そうだね」
「わたしの手作り弁当がありますから!」
「また唐辛子入りとかじゃないよね?」
「さあ、どうでしょうね」
「食べ物で遊ばないでよ」
ぼくが言うと、桜井さんはくすくすっと笑った。
「先輩に唐辛子入り弁当を食べさせるのは、わたしの特権ですから」




