味玉ラーメン大盛りで
殺風景な店内には、数人の客がカウンターに並んで、大きな器を手にしている。
ここはラーメン店。背脂醤油ラーメンの有名店だという。
時間がまだ夕方なので、そんなに混んでないけれど。
ぼくのとなりの桜井さんはラーメンを美味しそうに食べていた。
「わたしみたいな可愛い女の子がラーメン大好きって意外でしょう?」
「自分で可愛いだなんて言う?」
「だって事実ですし」
「まあ、意外でもないよ。桜井さん、ジャンクな食べ物好きそうだしね」
「それってどういう意味ですか?」
「見た目は清楚な美少女でも、中身は自由奔放ってこと」
「見た目は清楚系美少女だって認めてくれるんですね?」
「はやくラーメン食べなよ」
ぼくはできるだけそっけなく言った。
けれど、桜井さんはにやりと笑った。
「照れ隠しなんてしなくていいんですよ」
「照れてなんてない」
「ね、先輩。わたしのラーメンの味玉、一つ上げます」
「なんで?」
「わたしのことを美少女だって言ってくれたご褒美です」
「ご褒美、ねえ」
「いいからもらっちゃってくださいよ」
桜井さんは味玉をれんげですくうと、ぼくのラーメンの中に放り込んだ。
味玉はぷかりと浮かび、とても美味しそうに見えた。
「えっと、まあ、もらっておくよ。ありがとう」
「そういうふうに素直にしてくれるといいんですけど」
「ぼくはいつでも素直だよ」
「そうですね。だからからかいがいがあります」
桜井さんはくすっと笑った。
「本当に素直じゃないのは、わたしかもしれませんね」




