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形のない約束  作者: 紅月 遥香
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動く心、動かされる心

今回は長くなってしまいました、、、、。最後までみてくれるとありがたいです。

では、はじまります!!




自分の存在に途方に暮れていたとき、

「友達になってください!」

偶然会った少女と口だけの友達となった斗真。うれしさの反面、やっぱり不安もあった、、、。


「お疲れライト!」

あのとき出会った女の子、桜ヶ丘 桃に声をかけられる。塾が同じだった。自習室の外で僕が来るのを待ち構えていたのだった。

「お疲れ、、、、」

それだけ言って歩く。桃はついてくる。そして桃は話したいことを僕にべらべらと話し始める。僕はそれにただただ頷いたり返事をしたりするだけである。一応ちゃんと話を聞いた。何を言っているか理解できなくても。しゃべるストラップがついてくる、そんな感じだった。



 

 こうなったのは3日前の出来事が原因である。

それは塾の帰り、駅で地下鉄を待っているときだった。何ヶ月ぶりだろうか、個人からラインが来た。名前は「MOMO」。この前のあいつだった。

“塾一緒だね”

かわいいスタンプと一緒にメッセージが届く。

“そうなんだ”

と返す。それが一体何なのだろうか?すぐに既読がつく。

「じゃあこれから一緒に帰りましょう!」

彼女は僕の後ろからそう声をかけた。僕の体は驚きでピクッと動いた。久しぶりに人に驚かされた。

「なんでですか?」

「いいじゃん!友達だし!」

そういうことでしゃべるストラップがついてくるようになった。ちなみに「ライト」というのは「あ()()()ま」からとられた名前である。桃が勝手に作って勝手にそう呼んでいる。





 おしゃべりストラップとの帰宅は1週間続いた。休みの土、日も僕の塾の出る時間を聞いてきて、ついてきた。時間の嘘はつかなかった。どうせついてくるだけだから。

一緒にいて面白いこともあった。桃は毎回あそこのトイレに行った。そして毎日リュックは重かった。一体何を詰めているのだろうか。

2週間ぐらい過ぎた頃、話すのが飽きたのか、桃は勉強サポーター的な立ち位置になっていた。努力している割には僕の学力がいまいちだと知り“これやれ”“あれやれ”と指示をしてくるようになった。いつもの話の内容、通っている学校のレベルからとても天才なのは察していた。だから勉強のアドバイスに従ってみることにした。僕の彼女に対する見方はストラップから家庭教師のトライさんに変わった。

でも僕はわからなくても質問をしなかった。話したくなかったから。しかしだんだんと話すことを強要されるようになる。“これ説明してみて”と聞かれるからである。見かけ上は少しずつ斗真が話しかけていくように見えた。




 2人が出会ってから1ヶ月ちょっとたった。

「はい!今日は模試の数学の直しをやるからね~~!ライト、間違いがいっぱいあったから大変だけど逃げちゃだめだ、、、!」

桃は相変わらずトライさんだった。僕の予想とは違い桃は僕から離れていかなかった。逃げなかった。独りにしなかった。僕は彼女に対して何もしていないのに、、、、。

そしていつしかこんな関係を楽しんでいる自分がいた。学校よりも楽しかった。でも、それでも、桃を友達としては見られない自分がいる。できるだけ話したくない自分、早くどこかへ行ってしまえという自分も少なからずいた。



「朝も一緒に行こうよ!同じ駅で降りるんだし!」

そう提案された。はい、いいえを問わずに桃はついてくるので何も言わなかった。

「7時50分に私の最寄り駅ね☆」

押し通される。独りだと自分で時間を決められる。多くの人と関われば関わるほど時間に縛られていく。世の中そういうものである。だから断りたい。でもそこまでいつもの登校時間と変わりはなかった。

「遅れたらおいていくから、、。」

そう言った。

「私はライトが遅れたらぶっ殺すから!」

そう言って拳を向けてくる。ボクサーのように。殺せるものなら殺して欲しい。死んだほうが、、、、きっと楽だから。

斗真は気づかない。自分が一緒に行きたいと思っていることに。今までは桃がただたんについてきていただけだが今回は待ち合わせ。2人の合意で成り立つもの。その瞬間、それは一緒に行くことを意味する。それを断らなかった。それを彼は自然と求めていた。いつの間にか、、、、、、。




 斗真も桃も遅れなかった。一緒に登校した。ただ、ある日のこと、

“風邪引いちゃったから、今日は学校行かない”

“ごめんね”

悲しそうなスタンプとともにラインが来た。いつもは桃の最寄り駅でいったん下車するが今日はそのまま乗っていった。なぜだか、いつもより寂しく感じている自分がいた。あれほど人と関わるのを嫌っていたのに。どうせ独りにされるからと。

ここでふと思った。いつも独りにされる斗真だから思い浮かんだ。仮病を使って僕からいったん離れようとしたのではないのかと。いくら桃でもこんなつまらない僕といるのはもう限界だろうと思う。少しずついけない日が増えて全く来なくなる。ラインはいつしかブロックされる。そういうパターンだと確信した。やっぱり、独りになるんだよ、、、、、。

ただここで自分に矛盾を感じた。いつもは友達になろうと思って接していたが確か今回は出会ったときから“つまらない”と思われる行動をしようとしていた。“できるだけ話しかけないように”などとマイナスナ行動をしようとしていた。それで自分は何もないやつだと見せつけていた、、、、。そしておそらく桃は僕に対して仮病という当たり前の逃げの行動をしているのにまるで悪者のような人であると勝手に自分の頭で決めつけて、、、、こんなくだらない人間に1ヶ月ほど付き添ってくれているのに離れて欲しいと願っている自分がいて、、、、、、情けないと思った。謝りたいと思った。

斗真は自分に絶望していた。“何もないから”と人を避けてきた結果、他人に“何もないこと”を認めさせようとしている自分がいることに。何もないままでいいと思っている自分に、、、。

今日1日、閑静な世界に感じた。周りのクラスの人たちの話し声も、笑い声も、授業も、街にいる人の会話も、耳に入ってこなかった。本当の孤独だった。

自習室の終了時間。参考書をリュックに詰める。今日は1人。うるさいラジオはついてこない。自習室の扉から外へ出る。

「おつかれ~~~!」

目の前に、桃はいた。マスクを着用して、私服で、いつものリュックをしょって、目の前に立っていた。

「ずっと独りで寂しかったんじゃないの~~?」

からかってくる。そして桃は咳き込む。まだ治ってなさそうだった。

俺の体は勝手に動いていた。桃から重いリュックを引き剥がす。そして自分のお腹側にかける。いままでこんなこと1度もしたことない。

「お疲れ、、。」

そう言って先にスタスタと歩いて行く。

「えっ、、、ちょっと待ってよーーーーー!」

振り向かなかった。決して。だって少し涙を感じたから。これが友達なんじゃないのかなって初めて思った。僕はつまらない、そして何もない。でも、桃にはできることはしてあげたい。こんな僕のそばにいてくれたから。そして、いつか()()の友達だと思って欲しい。

「ごめん、、」

「何か言った?」

「何も、、、、、」

「私の気のせいか、、。そういえばライト、あのね、、、、、」

2人並んで駅へ向かう。今日の空は雲1つなく、星が輝いていた。




 次の日、

“体調悪化しちゃった、、私ってバカだね。今日もごめん。”

悲しそうなスタンプとともにラインが来た。今日も1人のようだ。桃の最寄り駅への到着を知らせるアナウンスがなる。今日も下車せずそのまま行くつもりでいた。しかしふと頭にあのときの会話が思い浮かぶ。ーーーーーー。

“まもなくドアが閉まります”

扉は閉まり地下鉄は次の駅へと走り出す。俺は下車していた。そして駅の公衆電話を手に取る。

「今日、体調が悪いので学校休みます。」




“ピンポーン”

インターホンが鳴る。朝9時。こんな時間に何だろう?私は体がえらいが布団から出て玄関へと出向く。

“は~い”

元気を偽って扉を開けると制服姿の、、ライトがいた。

「えっ、、、、、」

スーパーの袋を持ったライトがそこに立っていた。

「ライト、なんでここに!、、ていうか学校は、、、」

「休んだ。お見舞い、いや、、、、ぶっ殺しに来た!」

私は初めてライトの笑顔をみた。それは作っていなく本物だった。彼は袋を私に掲げて見せてきた。



桃はきっと俺が遅れても待っていてくれた。7時50分を過ぎてもきっと待ってくれた。約束したあのとき“ぶっ殺すから”そう言っただけであって“おいていく”とは言わなかった。だから自分の“おいていく”という言葉がひどいものだと感じた。後悔した。だから、今日はおいていかなかった。風邪で休みだろうとおいていきたくなかった。早く今までに犯した桃に対する罪を返したいし、それに、桃に早く元気になって欲しい。毎日会いたいから。




「ありがとう!」

私は袋を受け取った。

「何かできること、、ある?」

「そうだな~~まあ、まずあがって!」

私は家に入ることを勧める。うれしかったからだろうか、緊張しているからだろうか、体調が悪いからだろうか、私は玄関の段でつまずき転びそうになる。

“パシッ”

ライトに手を握られる。私は転ばずにすんだ。

「桃、大丈夫?ゆっくり寝ててよ、病気なんだから、、。」

「、、、あ、、ありがとう」

ライトは、また転ばないように手を取って付き添って、布団に寝かせてくれた。なんだか私はドキドキしてしまう。

急にどうしたのだろう?こんな人だっけ?いつも無口でおとなしい人だったよね?これ、うり二つの兄弟とかじゃないよね?

「ねえ、、、ライト、何かあったの?いつもと様子が変だよね?」

そう尋ねるとライトは真面目な顔で答えた。

「今までごめん。ずっと桃から遠ざかろうとしてた、、。でも、気づいたんだ。自分に、、、。自分の気持ちに、、、。だからこれからは偽らず桃には自分でいたいと思う。だって、、、友達だから!」

、、、なんだかうれしかった。今までのライトでも十分私はうれしかったけれども、今、友達だって言ってくれて。

「じゃーあ、、朝ご飯に冷蔵庫に入っているりんごむいてくれないかな?ライトならやってくれるでしょ?」

「わかった。」

彼は台所へと向かう。

何分か経つと戻ってきた。それはとても不格好だった。ごつごつで、ボコボコで。そしてリンゴは少しぬるかった。ライトの体温で。それでも、私は食べた。おいしかった。うれしかった。こんなの、、、、初めてだった。



俺は桃に頼まれたことをやった。掃除、ゴミ捨て、アイロン、、、。洗濯は下着をみて欲しくないからやめてと言われた。それでやることがなくなったら別の部屋で静かにしていた。勉強などをして。桃にはゆっくりと寝てもらった。でもたまに買ってきた飲み物を持ってたり、少しだけ勉強の質問をしたりした。午後4時に俺は塾へ行くことにした。このまま居座っても迷惑だから。

「早く元気になってね!」

桃は見送ってくれた。

「今日はいろいろありがとう。明日はライトのおかげで、学校いけると思うから!」

そう笑顔で言われた。初めてありがとうと言われてうれしかった気がした。




斗真は少しずつ変わっていく。

「おはよう、桃」

「おはよう」

自分から挨拶するようになった。

「今日のその服、似合ってるね。」

「えっ、、、そ、、そう。」

思ったことをためらわず言うようになった。

目を見て話すようになった。

笑うようになった。

自分から話すようになった。

彼が心に閉ざしていたものが解放されていくのだった。いままで自分の感情を素直に人に言わなかった。他人に感情を知られたくなかったから。もしかしたら他人に変な印象を与えてしまうかもしれないから。だから偽るか黙っていた。でも、桃には本心を隠さず話せた。行動できた。そしてそれが友達だと思う。お互いに本心を言える関係が。




桃のおかげで変われた斗真。新しい2人の関係がはじまる。



最後まで読んでくれてありがとうございます。これでようやくあと2話ぐらいで転移します!正直早く転移させたいですが、焦らず土台を固めていこうと思います。

活動報告で今後の流れなどを書いておいたので、暇だったらみてください。暇だったらでいいです!

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