表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

脚本「独女白書」

作者: 夏目歩知


○カラオケボックス・外観(夜)


○同・店内(夜)


   忘年会の二次会。15人ほどのサラリーマンたちが飲んでいる。


   『これが私の生きる道』を熱唱する岩本かす美(35)。一緒になってマイクを握る瀬戸美砂保(38)。曲に合わせて踊る鬼島しのぶ(31)。


   全員完全に出来上がっている。男たち数人はパンツ一丁になっている。


かす美「もりあがってるか~い?」


一同「イエ~イ!」


   寝ている係長の広い額に“肉”と書く美砂保。爆笑する同僚たち。かす美、美砂保、しのぶが一緒に踊る。


○六本木・ミッドタウン(夜)


   アイドルKの巨大ポスターの前。ポスターにへばりつく美砂保。それを見て笑うかす美としのぶ。


美砂保「K~、わたしのK~、あいしてるぅ」


   しのぶはケータイで写真を撮る。かす美は爆笑する。


○××マンション・全景(朝)


○同・かす美の部屋(朝)


   テレビの前で朝のニュースをやっている。かす美は弁当を作りながらテレビをチラチラ見ている。テレビ画面に“いて座の今日のラッキーカラー・ピンク”と出る。


   卵焼きに紅ショウガを入れるかす美。


○××会社・全景


○同・リフレッシュコーナー


   美砂保としのぶが手作りの弁当を食べている。そこへかす美がやってきて


かす美「ういっすー」


美砂保「おつかれちゃん」


しのぶ「おちかれー」


   かす美、ピンク色の大きなハンカチに包まれた弁当を出す。


かす美「っつーか、昨日のことナンも覚えてない」


美砂保「あたしも」


しのぶ「ホレ」


   しのぶがケータイで撮った恥ずかしい写真をいくつも見せる。


   キャハハと笑い転げるかす美と美砂保。


かす美「ちょっとコレ、ちょーヤバくない?」


美砂保「嫁にいけない」


しのぶ「ガハハ」


   三人顔を見合わせて


かす美・美砂保・しのぶ「ま、いっか」


○同・オフィス・営業二部(夕)


   サラリーマンたちが仕事している。


   かす美がデスクでケータイで話している。


かす美「はい、大丈夫です。明日までに見積をお作りしてメールさせていただきます。

 いえ、こちらこそいつもありがとうございます。失礼いたします」


  ケータイを切って、またかけるかす美。


かす美「あ、遠山さん?いつもお世話になっております~。今、大丈夫?……」


  かす美のデスクには養命酒が置いてある。かす美のデスクの向いに美砂保が座っている。


  美砂保はパソコンに向かいデータを作成している。


   隣の島にはしのぶがいる。英語で書かれた書類を読んでいる。


   午後六時のベルが鳴る。ベルサッサの三人。


○銀座・歩行者天国


   和服姿で歩くかす美と美砂保。


   通りすがりの人たちが振り返る。


   歌舞伎座の前までくる二人。立ち止まってニヤリとする。


   “歌舞伎そば”の前に行列ができている。そこに並ぶかす美と美砂保。


○歌舞伎そば・店内


   かき揚げそばを食べるかす美と美砂保。


かす美「やっぱりココのお蕎麦が一番だね!」


美砂保「うん、たまんない」


かす美「しのぶちゃん、今頃海に潜ってるかね?」


美砂保「今日は沖縄って言ってた」


○海の中


   タイトル・沖縄


   ダイビング中のしのぶ。インストラクターをしている。数人の生徒を連れている。サンゴに小魚が集まる。


   写真を撮るしのぶ。イキイキしている。


   上に上がるサインを出すしのぶ。生徒たち、OKサインを出す。海上へ上がるしのぶたち。


○歌舞伎座・全景


○同・中


   中村勘三郎、勘九郎、七之助が演じている。瞳を輝かせて見ているかす美。


   温かい眼差しで見ている美砂保。


   歌舞伎が一番盛り上がる。


   掛け声をかけるかす美。


   拍手をするかす美と美砂保。


○銀座・歩行者天国


   かす美と美砂保が歌舞伎のマネをしながら歩いてくる。


   そこへ、反対側から松本純一(38)が歩いてくる。かす美と純一、目が合う。


かす美・純一「あ」


   美砂保、かす美と純一を見比べる。


○銀座の公園(夕)


   公園の中を並んで歩くかす美と純一。


   かす美がベンチに座ろうとすると、純一がサッと白いハンカチをひく。


   ちょっと驚くかす美。


   ゆっくりとハンカチの上に座るかす美。


   隣に腰掛ける純一。


純一「元気そうだね」


かす美「おかげさまでー」


純一「結婚したんだ」


かす美「知ってます」


純一「かす美は?」


かす美「恋愛お休み中」


純一「モテそうなのに」


かす美「モテないんです。仕事デキルから」


   ちょっとひく純一。


かす美「子供は?」


純一「まだ」


かす美「奥さんカワイイ?」


純一「コワイ」


   笑うかす美。


純一「なんで別れちゃったんだろ、俺たち」


かす美「やめよ、その話。不毛だ」


純一「かわんないね」


かす美「あんたもね」


○リフレッシュルーム


   美砂保としのぶが弁当を食べている。


   そこへかす美がやってきて


かす美「んちゃ」


美砂保・しのぶ「んちゃ」


   かす美、男物の白いハンカチを膝に乗せる。ハンカチを見る美砂保。


かす美「やっちゃった」


美砂保「やっぱり」


しのぶ「なに?なに?」


美砂保「昨日じゅんじゅんに会っちゃったんだよねー」


しのぶ「えーマジでー」


美砂保「二人きりにした私が悪かった」


かす美「フリンだよ、フリン」


しのぶ「自分で言うな」


美砂保「まだ好きなの?」


かす美「好きなワケないじゃん」


   美砂保としのぶ、顔を見合わせる。


   弁当とパクパク食べる三人。


しのぶ「でもいいなーHできて。最近してないもん」


美砂保「えーどれくらい?」


しのぶ「んー二週間?」


   爆笑するかす美と美砂保。


   弁当の横のお茶が湯気を立てている。


○かす美の部屋(朝)


   テレビのニュース“いて座のラッキーカラーは黒”と映し出される。


○大手町オフィス街


   黒のスーツで颯爽と歩くかす美。


   ケータイが鳴る。出るかす美。


かす美「はい、岩本です。お疲れ様です。えっ本当ですか?すぐ戻ります」


  地下鉄の入り口に走り込むかす美。


○オフィス・営業二部


  テレビの前に集まる同僚たち。ワイドショーでアイドルK逮捕の話題。


  走ってテレビの前にくるかす美。


かす美「まずい、まずい、まずい……何やってんだよK!」


   部長(50)がかす美に気づいて


部長「おいっ岩本!大至急キャスティング呼んで打ち合わせだ!」


かす美「はいっ」


部長「あとはお前さんに任せた」


かす美「わかりました」


   同僚がかす美に注目している。


   かす美のデスクの電話が鳴る。派遣(25)が電話をとる。


派遣「岩本さん、クライアントからです」


   振り返るかす美。冷や汗が出るかす美。


   美砂保としのぶが見守る。


かす美「かけ直すって言って」


   うなずく派遣。


   かす美のバッグには白いハンカチが結びつけてある。


   テレビのワイドショーでアイドルKが警察署に連行される映像が出る。


   画面を見ながらケータイをかけるかす美。


               <終わり>


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ