プロローグ
━━このドラマを、もしかしたら人類を救ったかも知れない一人の女の子、そして・・・私の初恋の男の子(照)に捧げます━━
テレビ画面にバァーンと、無数の墓。いくつかの火の玉が漂っている。ゆったりずっしり響く重低音。いかにもといった、おどろおどろしい音楽。
夏休み、冬休み、春休みの時期、昼のワイドショーで必ず特集されるお馴染み恐怖コーナー。
『誰も知らないけれど、本当にあった話』
最初は夏休みだけの恒例だったのだが、あまりにも好評なため、調子に乗って冬休み、春休みにも進出して来た恐怖コーナー。
「さぁ、今年の夏休みも始まりました。『誰も知らないけれど、本当にあった話』!」
男性司会者の第一声。すかさず女性司会者が続く。お馴染みの始まり方。
「視聴者の方の体験手記を元に製作した、再現ドラマをお送りするわけなんですが、今回は東京都にお住まいの、福田理子さん、24歳から頂いたお手紙に基づいています」
(えっ?いつも年齢言ってたっけ?)
そしてまたもやお馴染みゲスト登場。女性司会者が呼び込む。
「そしてゲストは毎回お馴染みです。心霊研究家の、倉岩庭男さんです」
「こんにちは。倉岩です」
(あれから10年・・・あれが本当にあった出来事なのか?未だにあれは悪夢だったんだという気さえする・・・でも10年という節目を迎えて、私はあの出来事を公にする決心をしました)
━━ちょうど今から10年前の出来事です━━
東北の山奥、鬱蒼と生い茂る山林。中は悪魔に魅入られでもしたかのように、漆黒が鎮座している。
山道を普通自動車が走っている。かなりの高級車のようだ。車内は父、母、後部座席で幼い女の子が遊んでいる。子犬も一緒に━━。
「わぁ。気持ち良さそう」
女の子が窓を開けた瞬間、
「キャンキャン」
と、子犬が外に飛び出す。
一瞬の出来事だった。
「あぁ、私のワンちゃん・・・」
「バカ!いきなり窓なんか開けるからだ」
「しょうがないじゃない。また新しい子犬買ってもらいましょう」
事も無げに言ってのける母だったが、女の子も、
「え〜。でもいいや、パパ!新しいの買って」
「ったく」
まるで子犬を消耗品のごとく扱う一家。まさかこの些細なことが、恐怖へのプレリュードになろうとは、誰が予想し得ただろう━━。
よろしくお願いいたします。