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紅頭巾Ⅱ ~彷徨の館~  作者: サッソウ
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第九篇 飛蝗と熊沢の過去

 ゾンビから逃げ切った紅達は、ピアノが置いてある部屋で、今晩を過ごすことにしました。ピアノ以外何もない部屋ですが、窓から月や星を眺めることはできました。

 紅はお疲れの御様子で、グッスリと寝てます。

 一方、飛蝗は紅から離れた所で、溜め息をついていた。

 熊沢は、そんな飛蝗のそばへ行き、飛蝗の隣に座った。

「熊沢は何故その姿になったんだ?」

 飛蝗が単刀直入に聞いた。熊沢は、すぐには応えなかったが、その問いにこう答えた。

「……もう3年も経つんですよ。コレになってから……。君なら、知ってるかもしれませんね。"ブラック・コメット"」

「4年前に、急に売れ出したけれど、半年で姿を消したお笑いコンビか」

「えぇ……。当時、結成7年。ブラック・コメットの人気は(すい)(せい)のように過ぎ去った」

 熊沢は続けて、

「売れなくなって、半年後、コンビは解消」

「行方不明だと……」

 飛蝗は熊沢の顔を見て、

「まさか……」

 熊沢は涙を流していた。

「事務所は、熊と(うさぎ)になったブラック・コメットを()てた! 行方不明として処理したんだ!! ……ただ、あの半年間のように、笑ってほしかったのに……」

 熊沢は、手で涙を(ぬぐ)い、飛蝗に

「すまなかった。……君がツッコミを入れてくれて、あの頃を思い出したんです」

「……そうだったのか。俺の方こそすまない。軽はずみで……」

 今度は、飛蝗が語り始めた。

「俺は、祖父が営んでいた靴屋"シューズ・ディーラ"で暮らしていた」

「兄貴の熊沢書店の近くにあった靴屋ですか?」

「そうだ。フラワーショップ・紅の隣だよ」

「じゃあ、お嬢ちゃんとは?」

「フロールとは、(おさな)()()みだった」

 と、飛蝗。すると、熊沢が

「あれ? お嬢ちゃんの名前って……?」

「本名、フロール・クリズン。昔から、フロールは、花屋で母親達の手伝いをしていた。フラワーショップ・紅。フロールが紅ずきんって、呼ばれ始めたのは、ラオ店長の(いき)(はか)らいで、フロールに紅色の頭巾を被らせて、配達をさせていたからだとか。まぁ、店の宣伝とでも考えていたんだろうな……」

 飛蝗はそう言い、少し笑った。

「飛蝗君、君の名前も教えてくれませんか?」

「……シェイ・ディーラ。父は早くに亡くなり、母は俺を産んで亡くなった。唯一いたのが、祖父だった。祖父の靴屋、シューズ・ディーラは、大繁盛で、お客が毎日途絶えることはなかった。店を閉めるまでは……」

 飛蝗の話に、熊沢は黙って耳を傾けていた。飛蝗は語り続ける。

「祖父の病状が悪化した。病名は、教えてくれなかった。祖父の手術は、この街どころか、この国の医療技術では無理だと言われた。だから、店を閉めた後、医療技術の発達した国に引っ越すことにした。フロールには、この事を言わなかったが、この街を去る時、俺の乗った車を追いかけるように走り、手を振ってくれた。俺は、フロールとまた会う約束をした」

 飛蝗の表情が段々暗くなっていた……。

「祖父の手術は成功した。でも……、祖父は入院生活で、俺は、引っ越した家から毎日祖父の所へ見舞いに行った。そんな日々が半年続いた。いつものように、俺が祖父の所に行ったら、祖父は笑って、ありがとうとだけ言って、息を引き取った。寿命だった……。一文無しの俺は、すぐにフロール達の所に行くことはできなかった。数年間の努力の甲斐(かい)あって、十分なお金が貯まった。でも、そのお金を盗まれた。家賃も払えず、絶望的だった……。そんな時、ある噂を思い出した。願いの叶う石があるという噂を」

 熊沢は、その石の名を言った。

(じゅ)()(せき)ですね」

「あぁ……。魔導師の呪われた魔法がかかった石、呪詛石……」

 飛蝗と熊沢は、夜空に輝く星々を見上げた。

「アレは、あってはならないモノ……」

 熊沢の目付きが変わった。だが、すぐにいつもの調子で

「ところで、シェイ君は魔法とか使えないんですか?」

「少なくとも、この姿だと使えないな……」


To be continued…

次週12/1から、『黒雲の剱』と『紅頭巾』のキャラが繰り広げる『路地裏の圏外 ~龍淵島の財宝~』が連載開始です。こちらもよろしくお願いします。


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