第六篇 Nothing venture nothing have.
タイトルは、Nothing venture nothing have.と読み、虎穴に入らずんば虎児を得ずという諺です。
紅達は、未だに館で彷徨っていました。
紅の母親の魔法によって、館から出ることができないのです。雨がやんでも暗い雰囲気は変わらず、不気味です。なんか出そうです。
館内1階。ドアを開けては閉めてを繰り返しますが、一向に脱出口は見当たらないです。
「クレナイマジックでどうにかなりませんか?」
熊沢は紅にそう言いました。
「……やってみようか?」
紅は、人差し指で中空に何かを描きます。そして
「したよ」
しかし、変化は見当たりません。
そのまま、時間だけが過ぎていきます。
熊沢は、黙ってドアノブに手をかけると、
「あっ、ドアが普通にオープンするようになりましたね」
次の部屋の中へ。すると、
「羊羹?」
羊羹がその部屋の中央で宙に浮いていた。
「もしや、無重力? ここは宇宙だったのか!?」
熊沢のボケにツッコミを入れる者はいなかった……ので、
「ハンドパワー!」
熊沢が咄嗟に(?)叫びました。
「言ってる場合か!?」
と、飛蝗くん。
「羊羹が浮かんでる!?」
紅達の目の前に、空飛ぶ羊羹が。
「美味しいのかなぁ~?」
と、熊沢さん。
「あの羊羹を見て、よくそんなこと思えるよな……。普通は不気味がって、食おうなんて気はしないだろ」
と、飛蝗くんが言ったが熊沢さんは無視です。
「羊羹が動き出したよ!」
紅が叫んだとおり、羊羹は左へと移動する。しかも、どんどん速くなり、部屋の壁を破壊した。って、えぇ!?
「そんなバカな……」
そんな飛蝗をよそに、紅と熊沢は羊羹の行方を探ります。
熊沢さんは急に、
「うさぎは、我々を欺くように、館を50Galで逃げ回っている。がさ入れして、洗うぞ。そうしたら、ガラトリだ。ヤツは単犯の可能性が高い。ブリッジを封鎖しろ!」
「……ツッコミ、いる? かろうじて、最後のボケが分かるかもしれないぐらいだけど……」
同時に、飛蝗はため息をつきました。
「警察用語で、うさぎは逃走犯。がさ入れは家宅捜索。洗うは身元調査。ガラトリは逮捕。単犯は単独犯って意味です」
熊沢が笑顔で答えました。説明が必要なボケって何でしょ……。
「ガルって何?」
紅が聞くと、熊沢は
「Galは、1秒間に1センチメートル毎秒の加速度の大きさです」
ちなみに、国際単位はメートル毎秒毎秒。
1Gal = 1cm/s2 = 0.01m/s2 。
「分かんない」
と、紅。
「大丈夫。私も分かんない」
といい、熊沢はすぐに切り替え、
「小倉の水羊羹は何処へ!?」
「何か、勝手に決めてないか? 小倉や水羊羹って確証あるのか?」
完全に呆れた飛蝗の重いツッコミ。
「あっ、イヨカン!?」
紅、驚愕しすぎて、羊羹が何故か伊予柑に!? 舞台設定がもはや、滅茶苦茶なんですが……。
「こっちに来る!!」
紅は伏せ、飛蝗は壁の方へ避けます。
羊羹は熊沢の目の前に!! 熊沢は口を大きく開ける!
羊羹、急ブレーキ! 車じゃないけど、羊羹も急には止まれない。羊羹は熊沢のおなかの中へホールイン。
「まいう~」
熊沢のボケにツッコミを入れる者はいなかった。
To be continued…