第三篇 館の謎
熊沢さんは館の見取り図を作るため、各階を調べていました。宝箱から、マップとか、コンパスとかを入手できれば、脱出の糸口が分かるかもしれません。
案の定、そんなものはなく、
「1階は一応調べ終わりましたね」
熊沢さんがそう言うと、紅ずきんが
「でも、通じない扉が……」
「そうですね。扉を開けても部屋には通じず、暗闇に通じるだけで……」
熊沢さんと紅ずきんは、玄関の大広間に戻り、そこから2階へと上ります。階段を上りきると、そこには扉がありました。熊沢さんと紅ずきんは、扉のノブを持ち、押して開けました。すると、2階に到着しました。って、当たり前ですが……。紅ずきんが扉を閉め、2階の捜索を開始します。全ての扉を開け、部屋に通じているかどうかを調べたあと、壁を叩き妙な空間がないかを調べていきます。1階と同様に、いくつか部屋に通じない扉がありました。紅ずきんと熊沢さんは、階段で3階へ。3階は部屋数が多く、通じない扉が多いようです。廊下をぐるりと反時計回りに回ると、突き当たりには扉だらけの部屋がありました。
「気味悪い……」
「Wherever doorsみたいですね……」
これぞ、熊沢流の英語。某秘密道具を意味もなく英語に。でも、これからは特にはいじりませんので、自分で処理してください。
「何かいる」
紅ずきんが何かを指さします。そこには、弱っている虫がいました。近寄ってみると、それは飛蝗でした。えぇ、バッタがバタッと……。今のは撤回します。え~っと、飛蝗は、意識がありません。ですが、足が震えていたため、まだ生きていると思った熊沢さんは、ポケット(?)からパンを取り出しました。飛蝗って、パンを食べるんですか? ……というより、ポケットなんてありました?
「くまたん、そのパン……」
「一階で見つけました。黴が生えてないから大丈夫でしょ」
熊沢さんが飛蝗の口元にパンを近づけると、飛蝗はゆっくりと口を動かして、一口食べました。
その後、飛蝗の看病をしながら紅と熊沢さんは、3階の入れる部屋を全て調べました。2階に下りて、食べ物を探しにさらに1階に行こうとしましたが、
「あれ!?」
紅が異変に気づきました。
なんと、2階と1階とを繋ぐ階段への扉が通じないのです。つまり、1階に戻ることができなくなったのです……。
「戻れないよ……」
紅がドアのノブに手をかけたまま、何度も押し開けます。すると、目を覚ました飛蝗が、
「ドアは押して開けるだけとは限らない……」
と、弱々しく喋りました。
「プッシュじゃなければ、プル。つまり、引けば……」
熊沢さんがドアを引いて開けると、そこに1階への階段がありました。
「通じた!」
「この館の扉は、コウヘキホウホウによって、通じる場所が変わるみたいなんだ……」
飛蝗は、そう言いました。
「コウヘキホウホウ?」
紅が熊沢さんに聞きます。熊沢さんは汗をかきながら、
「えっと、……ト、ト、トビラノ、ア、ア、アケカタッテコトデスヨネェエ?」
熊沢さん、飛蝗にパス。飛蝗は、
「扉の闔闢方法は、前後いずれかに押し引きする方法と、左右いずれかにスライドする方法……、上下いずれかにスライドする方法など、様々な方法があるみたいで……」
飛蝗が説明している最中に熊沢さんは心の中で、(やっぱり、開閉の仕方だったんだ。良かった、当たって……)と思っていました。どうりで、変なしゃべり方を……。それと、あまり難しい漢字を使わないでもらえますかねぇ、特にバッタくん……。
さて、扉の謎を解き明かせた紅ずきんたちは、調べ直し始めました。一回目では通じなかった扉が通じるようになり、熊沢さんの見取り図は、にぎやかになってきました。ただ、建築関係のことを知らない熊沢さんが描いた見取り図は、熊沢さんにしかわからない仕上がりになってしまいましたが……。
「でも、まだ開かない扉があるよ」
紅ずきんの言う通り、まだ扉は少なくとも約2割がバッタが言った開け方でも部屋には通じませんでした。
館で紅ずきんたちが苦戦をしている頃、森であの方のクルミが盗まれるという事件が発生したのでした……。
To be continued…
このあたりから、情景描写の言い回しが原案で変わっており、
今までと合わせるように だいぶ手を入れてます。
ちなみに、闔闢は漢検1級で出るって今回の再編集で知りました。
そもそも変換候補で出ないよ。