第二篇 プロジェクトKUMAZAWA
「フロールを監禁したわね」
「し・つ・け、です!」
母マードレと祖母ルモニーの口論は、何時間にも及びました。
花屋の隣にある本屋、熊沢書店にて、スピーキングベア・クマザワさんが立ち読みしていました。読んでいる本は、熊の冬眠について書かれたものです。熊沢さんは、冬眠しないのですかねぇ……? 熊沢さんは、母と祖母の言い争いに耳を少し傾けました。すると、紅が館に監禁されたということが耳に入り、本を元の場所に戻して館へバイクで向かいます。熊沢さんは、紅ずきんの救出に向かったのです。
一方、終わりそうにもない言い争いは、ルモニーが花屋の関係者立ち入り禁止と書かれた扉の奥へ行くことで、母から逃れ、強制的に終止符を打ちました。母マードレは、とても恐ろしい人なのでした……。祖母ルモニーは花屋のラオ店長を探しについには居住スペースへ。台所、寝室、居間などを探しましたが、いません……。水回り、つまり洗面所に行き、お風呂の扉を開けると、祖母ルモニーはとてもビックリしました。狭いお風呂の浴槽に、トドがいるではありませんか!! 飼っているのでしょうかねぇ……?
祖母はすぐに戸を閉め、もう一度開けて確認しました。これが俗にいう二度見ですね。浴槽の中にいるのは、……トドです。……、いや? セイウチか? まぁ、どちらにしろ、浴槽にいるのには変わりありません。
あれ? まさか、このトド? セイウチ? が……
熊沢さんは、紅ずきんの救出に向かいました。館は姿を変えていません。熊沢さんはまず、紅ずきんが本当に館内で監禁されているのかを確認するため、インターホンを押しました。ピンポーンという音が館内で響きます。すると、インターホンから紅ずきんの声が。熊沢さんは紅ずきんに「今、助けます」と言い、策を考え始めました。
プロジェクトKUMAZAWAナンバー1、扉を開き正面突破。しかし、実行しましたが、内部からまさにブラックホールのような吸い込む風が。熊沢さんはすぐに扉を閉めました。
プロジェクトKUMAZAWAナンバー2、窓から救出。しかし、これも同様に吸い込まれそうになり断念しなければなりませんでした。
プロジェクトKUMAZAWAナンバー3、地下から。しかし、熊沢さんはスコップやシャベルなんて持っておらず、素手では無理なので断念しました。
プロジェクトKUMAZAWAナンバー4、空から。飛べないので却下。これ以上借金を増やしたくはない熊沢さんなら妥当なのですが……。
プロジェクトKUMAZAWAナンバー5、解体して救出。しかし、館は思っていた以上に頑丈で、どんなに殴っても熊沢さんの手が腫れるばかりでした。
プロジェクトKUMAZAWAナンバー6、煙突から赤い服を着た白髭おじさん風に突入して救出。残念ながら、煙突がありませんでした。少なくとも、熊沢さんが入れる煙突は……。
プロジェクトKUMAZAWAナンバー7、魔法を解く。しかし、熊沢さんは普通(?)のくまさんなので、魔法をかけることも解くこともできません。
プロジェクトKUMAZAWAナンバー8、館を燃やし、魔力を弱めて救出。しかし、燐寸などの火を熾せる点火器を持っていませんでした。
その後もプロジェクトKUMAZAWAは次々と案を出しますが、どれも無理でした。そして、遂にプロジェクトKUMAZAWAのナンバーは30に達しました。もう夜です。さらに雨が降ってきました。雨脚が強くなり、バケツを引っくり返したのよな豪雨が熊沢さんを襲います。熊沢さんは急いで雨宿りできそうなところへ……。
……、おそらく、皆さんも同じようなことを予想しているでしょう。えぇ、全くのその通りの状況になりました。熊沢さんは咄嗟に雨宿りできる館内に入ってしまったのでした。何をしに来たのでしょうか、熊沢さんは……。これには、紅ずきんも目を疑いました。しばらく沈黙が続いたあと、熊沢さんは周りを見渡し始めました。どうやら、気づいたようです。あっと声を出し紅ずきんと目が合いました。熊沢さんは左手で頬を抓り状況整理をして、「Oh, my god!」と、嘆きました。熊沢さんが館に入ってしまったことで、紅ずきんと熊沢さんは共に出口を探すのでした……。
To be continued…