第十四篇 決意を新たに
「大丈夫か!?」
紅ずきんが目を覚ますと、お父さんがそこにいました。
紅ずきんは、頭を揺らして、起き上がります。周りを見ると、熊沢さんは、栗鼠山さんにクルミで殴ら……、起こされていました。周りの人には、殴打しているようにしか見えませんが……。飛蝗君は青空を見ています。
「あれ? 館は!?」
紅ずきんは、館があったはずの丘を見渡します。しかし、影も形もありません。
「館なら、消えたよ。丁度、フロール達が館から飛び出してきた時に」
と、お父さんは見たことをそのまま告げました。フロールを納得させるために言った噓とかではないようです。
紅ずきんは、大きく新鮮な空気を吸って、ゆっくりと吐きました。
*
フロール達が館から脱出した後は、お父さんが運転する軽トラックに、助手席にフロール、熊沢さんや飛蝗君、栗鼠山さんは荷台に乗りました。
街に着くまでの間、フロールと熊沢さんは、安心したのと疲れで眠ってしまいました。飛蝗くんと栗鼠山さんは、終始喋らず、何も話すこと無く街へと近づきます。
お父さんは、軽トラを花屋の近くで止めました。フロールは軽トラから降り、花屋の前で、お祖母さんとお祖父さんに抱きしめられ、2人から無事で良かったと何度も言われました。
しかし、フロールが魔法を乱用さえしなければ、こんなことにはならなかったのですが……。ただ、何はともあれ、無事に帰ってこれてよかったですね。これに懲りて、魔法は乱用せずに学んで使いましょう。
一方の熊沢書店では、
「おっ、無事だったか、コーズ」
と、熊沢のお兄さんが笑いながら言いました。
「いい加減、弟を芸名で呼ぶのはやめてください」
と、弟の熊沢さん。
(そういえば、ブラック・コメットって、コーズとブラヴのコンビだったな……。コーズのCとブラヴのB。B.C.で、ブラック・コメットっていうことか……)
飛蝗君は、温かみのある二軒の店を通り過ぎると、看板の文字が剥がれ、窓が割れ古びた靴屋の前で立ち止まりました。
(必ず、ここをもう一度賑わせてみせる)
シューズ・ディーラの土地は、まだ所有していました。どんなに酷い目に遭おうが、この土地の所有権は誰にも渡さなかったのです。
飛蝗君は、再び歩み出します。決意を新たに。
熊沢兄弟は、どこかへ行く飛蝗君に気付いていましたが、誰にも言いいませんでした。フロールさえにも……
THE END...
紅頭巾Ⅱ、最後までありがとうございました。
まだ当分先になると思いますが、続編の紅頭巾Ⅲも予定していますので、よろしくお願いします。
そして、紅達が登場する『路地裏の圏外 ~龍淵島の財宝~』が連載中ですので、こちらもよろしくお願いします。