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冒険者支援センターへ

 クロスが城門の近くで立っていると、再びフレンドチャットのコールが入る。


 『どうした?着いたのか?』

 『ああ、着いたんだが、お前がどこにいるか分からんのよ。せめて、アバターの特徴を教えてくんね?』

 『言ってなかったか?さっきから、チラッチラッ見られてるから目立ってると思うぞ?』

 『そうなのか?』


 そう言われて、辺りを見渡す政臣マサオミことアルフレッド。

 そしてある一点を見たところで、視線が固定される。


 『あ~、もしかして、和服を着た鬼人族か?』

 『おう、よく分かったな。やっぱり、目立つか?』

 『当たり前だ!わざとやってるのか?』


 そう言いながら、クロスの方に歩いて行くアルフレッド。


『そんな訳あるか!』


 白髪の人族の男がクロスの前に現れる。


 「よっ!久しぶりだな。修司シュウジじゃなかった、クロス!」

 「久しぶりって言っても、今朝会ったばっかりだけどな。政臣マサオミじゃなくて・・・アルフレッドでよかったよな?」

 「おいおい、さっき名前教えたばっかりだろ?アルフレッドであってるよ。」

 「長ったらしいからアルでいいか?」

 「むぅ、良いだろう。特別に許可してやる。」 

 「生意気な!」

 「プベッ!?」


 イラッとしたクロスは、アルフレッドにデコピンをする。

 額を押さえてうずくまるアルフレッド。


 「それで、街の外に行くか?」

 「ああ、その前に、冒険者支援センターでクエストを受けてからにしようぜ。」

 「分かった。じゃあ行くぞ。」


 二人は街の中心にある四階建ての大きな建物を目指して歩いて行く。

 冒険者支援センターに向かう途中で、アルフレッドは気になっていた事をクロスに聞く。


 「なぁ、何で和服を着てるんだ?初期装備か?」

 「いや、自分で作った。」

 「は?何でわざわざそんな事を?」

 「それはだな、・・・」


 クロスはログインしてからすぐにPKにあった事、その時の戦闘で服がボロボロになった事、その後、裁縫スキルを取得して服を作った事を説明する。

 その際に、マチルダ嫗の事等は伏せて説明しておく。


 「ふーん、そいつは災難だったな。それにしても、鬼人族か。また、扱いづらい種族を選んだな。」

 「扱いづらい?何が?」

 「あ~、そうか、種族特性について説明してなかったな。」

 「種族特性?そんなんあるのか。で、鬼人族の特性って?」

 「それはだな、鬼人族は初期のステータス全てが高くなっていて、しかも魔法抵抗力が高くて、ほとんど魔法が効かない。」

 「何それ!チートか?」

 「まぁ、話は最後まで聞けって。それで、魔法抵抗力が高いって事は当然、味方の回復魔法や強化魔法が効きづらいって事でもある。」

 「えっ、それって結構大変じゃね?」

 「それと、一番の問題が、魔法・・が使えない事だ。」

 「おいおい、剣と魔法の世界で魔法が使えないってどうなのよ?」

 「さぁ、どうなんだろうな?攻撃魔法が使えない職業もあるからアリなんじゃね?」


 そんな話をしていると、冒険者支援センターに到着する。

 中に入ると、沢山のプレーヤーがクエストボードを覗いていたり、端の方にある飲食出来るスペースでは、パーティーを募っていたり勧誘したりと、活気に溢れていた。


 「よし、先ずは冒険者登録するか。」

 「ん?それしないとクエスト受けられ無いのか?」

 「いや、しなくても受けられるが、登録しておくと素材の買取り手数料が無料になったり、ランクが上がると二階のBランク以上のクエストが受けられる。その代わり難易度も報酬も高くなるけどな。因みに一階のクエストは、Cランクまでしか無い代わりに登録しなくても自由に受けられるけど、二階のクエストは、実力がBランク以上あっても登録して無いと受けられ無いんだよなぁ。」


 アルフレッドがなぜか遠い目をして答える。

 そんな説明をされて冒険者登録をしておこうと思うクロス。

 受付へ行くと登録の為、水晶に手を置かされると水晶が薄く光る。

 光りが消えると登録が完了したと伝えられ、ステータスウィンドウを開くと、冒険者ランクが追加されていた。

 因みに、冒険者ランクは、下からF・E・D・C・B・A・S・SS・SSSである。



  名前 クロス  性別 男  職業 侍Lv1

    種族 鬼人族  格 酒呑童子

    冒険者ランク F


    スキル 格闘技Lv1 気配察知Lv1 索敵Lv1 威圧Lv1 裁縫Lv3 料理Lv1



 「それで、クエストはどれを受けるんだ?」

 「そうだな、薬草の採取と魔物の討伐の二つがいいだろ。」


 その二つのクエストを受けると、出て行こうとしたクロスだが、アルフレッドが反対の地下に行く階段の方へ歩いて行く。


 「おい、アル。どこに行くんだ?出口はこっちだぞ。」

 「地下の訓練所に行くんだよ。いいからついてこいって!」

 「?」


 そう言うアルフレッドの後について地下に下りるクロス。

 地下に下りるとそこは、テニスコートが六つも入ろうかという位の広さのフロアだった。

 その中に五つのリングがあり、色んなプレーヤーがパーティーの連携の訓練したり、色々な武器を試してみたり魔法の練習をしていた。


 「なんだ、戦闘訓練でもするのか。」

 「違うよ。ほら、あそこ分かるか?」


 そう言ってアルフレッドが指差した先には、様々な練習用の武器が置いてある倉庫にいるこのフロアの管理と指導をしているNPC達がいた。


 「あの人達がどうかしたのか?」

 「フッフッフ、実はあそこにいるNPCは、お金を払うとスキルを教えてくれるのだよ!」

 「ウザイ!」


 ドヤ顔で語るアルフレッドに目潰しをするクロス。


 「うおぉぉ~目がぁ~目がぁ~!」


 目を押さえて転げ回るアルフレッド。

 そんな様子をサクッと無視してアルフレッドを引きずって行くクロス。


 「ほら、着いたぞ。さっさと覚えて街の外に行くぞ。」

 「分かったよ。じゃあ、やるけどクロスはしないのか?」

 「金が足りん!」


 クロスがそう言うと、アルフレッドが何かを考えてからクロスに提案する。


 「だったら俺が金出してやるよ。その代わり、服を作ってくんね?」

 「いいのか、そんなんで?でも何でだ?」

 「いや~、お前の服見てたら俺も欲しくなってな!その服の代金の代わりって事で!」

 「分かった、引き受けよう。で、どんな服がいいかリクエストはあるか?」

 「ん~、おまかせにすると執事服とか用意されそうだから、とりあえず、俺の職業が剣士だからそのイメージに沿った服って事で!」

 「ッチ、分かった。」

 「今、舌打ちした!?したよね?マジで執事服作るつもりだった?」

 「うるさい!とりあえず覚えておいた方が良いスキルとかあるなら教えろ。」


 そう言って話題を逸らすクロスに不安な顔をするが、アルフレッドは答える。


 「そうだな、プレースタイルにもよるが、必要と思うのは、暗視と気配察知と気配遮断それから策敵かな?暗視は洞窟や夜の狩りに役立つし、気配察知と策敵は不意討ちやPK対策で、気配遮断は隠れる時とか獲物に近づく時に便利だな。それから、俺が出せるお金は、三つまでだからな!」

 「なるほどな。じゃあ、気配遮断と暗視、後は・・・何でもいいや。」


 クロスはアルフレッドからお金を受け取ると、暗視と気配遮断のスキルを教えてもらう。


 「あと一つは何にするかな?」


 そう言ってキョロキョロしていると、一人のNPCと目が合う。

 ボロボロのローブを着たげっそりと痩せた若い女性だった。

 その女性は目が合うと、今にも泣き出しそうな様子でクロスに近づいて来ると、すがりついて必死な形相で訴えてくる。


 「お願いですぅ~!私にお金を恵ん・・・じゃなくてスキル教えますから、どうか、どうか私に・・・ねっ、ねっ、良いでしょ?良いよね!よし、決まりだね!」

 

 ボロボロのローブを着た若い女性はそう言うと、返事も聞かずにクロスからスキル伝授の代金とクロスの持ち金全部を強奪すると、クロスの手を取って魔力を体内に流していく。


 「へっ、あっ、ちょっ、ちょっと待てって!」


 クロスが抵抗する暇もなく魔力を体内に流されていると、体の中心に力が湧いてくるのが分かってくる。


 (何だこれ?どんなスキルなんだ?)


 クロスが体の中から沸き上がってくる力に驚いている間に、ローブを着た若い女性は魔力を流し終わった事でスキルを伝授し終わる。


 「じゃ、そういう事で!バイバイ!」


 そしてダッシュで去って行く。

 クロスは追いかけるのも忘れて呆然としている所に、様子に気づいたアルフレッドが声をかけてくる。


 「おい、どうした?何があった?」


 アルフレッドに頬をペチペチと叩かれ正気に戻るクロス。


 「あ、ああ。なんか、ボロボロのローブ着たNPCに強引にスキルを伝授された上に持っていた金、全部持ってかれた。」

 「ははっ、それは災難だったな。それで、何のスキルだったんだ?」

 「ちょっと待て。今、確認するから。・・・魔力操作だってよ。」

 「何だそれ?初めて聞くな。正規版から実装されたのかな?それにしてもよ、魔力操作って名前からして魔法関係のスキルだと思うんだが?」

 「やっぱそう思うか?何があるか分からんから、とりあえずは鍛えてみるけど。」


 そう言うとクロスは階段を上がって行こうとする。

 その背中に、アルフレッドが声をかける。


 「オーイ、俺はもう少し時間かかるから、一時間後に西の城門の所に集合な!」


 クロスはその声に手を挙げて答えると冒険者支援センターから出て行くのだった。



*****




 クロスは冒険者支援センターを出てマチルダ嫗の家に行くと、工房を借りてアルフレッドの服と自分の予備の服を残っていた布地で作り上げる。

 それが終わると、ちょうどお昼だったので、マチルダ嫗が用意した昼食を食べると西の城門に向かっていった。

 その途中で、ちょうど冒険者支援センターから出てきたアルフレッドと鉢合わせると、そのまま一緒に西の城門から街の外に行くのだった。

名前 クロス  性別 男  職業 侍  Lv1

    種族 鬼人族  格 酒呑童子

    冒険者ランク F


    スキル 格闘技Lv1 気配察知Lv1 気配遮断Lv1(New) 魔力操作Lv1(New) 索敵Lv1 威圧Lv1 暗視Lv1(New) 裁縫Lv3→6 料理Lv1


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