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初戦闘と代償

 黒い毛並みの獣人は周囲のプレーヤーを掻き分けて出てくると、クロスに毒消し薬を渡して二人組に向き合う。


 「おい!何してくれてんだよテメー‼」

 「黙るであります‼この人はプレーヤーであります!あなた達のやっている事はPKであります‼」

 「はぁ?何言ってんだ?どう見てもボスモンスターだろーが!邪魔するならテメーも狩るぞ!」


 黒い毛並みの獣人と二人組が言い合ってる間に、毒消し薬で毒を消すと、クロスは黒い毛並みの獣人の横に立つ。


 「ありがとう。助かったよ。え~っと・・・」

 「ミックであります。吾輩の名はミックであります。」

 「ミックね、俺はクロスだ。それより何で助けてくれるんだ?」

 「それは、その珍しいアバターについて話しが聞きたいからであります。なのでこの後、話しを聞きたいでありますが良いでありますか?それに吾輩、PK行為が嫌いであります‼」

 「ふ~ん。そんなんで良いなら構わんよ。どうせ大した話しじゃないし。」

 「それよりも大丈夫でありますか?先程からやられっぱなしでありましたが?」

 「あぁ、問題ない。と言いたい所だが、一対一なら格ゲーで慣れてるけど、一対多は経験が少ないからなぁ。」

 「では吾輩が一人抑えるであります。それならば大丈夫でありますな。」

 「それなら大丈夫だ。けどいいのか、俺に手を貸して?コイツらの恨み買うんじゃないか?」

 「ここに出てきた時点で買ってると思うであります。」

 「そうか。なら、頼む。」


 クロスとミックが手短にやり取りを終えると、ミックが両手に短剣を構える。

 その行動を見た剣士の男がミックに向かって吠える。


 「テメェ‼俺らの獲物を横取りする気か!だったらテメェも一緒に殺ってやるよ!」


 そう言うと剣士の男はミックに斬りかかって行く。

 ミックは短剣を交差させ相手の剣を受け止める。

 その様子を見て任せても大丈夫そうだと判断したクロスは、残る魔法使いの男と対峙する。


 「スピードバースト・パワーバースト!」


 魔法使いの男はいつの間にか唱えていた強化魔法を自分に掛けて、クロスに襲いかかってくる。


 「っしゃあ‼」

 「チィッ!」

 強化魔法によって上がったスピードはクロスの予想を上まっていたらしく、魔法使いの男の一撃目がクロスの肩を浅く切り裂くが、続く二撃目は完全に見切って避けて三撃目にはタイミングを合わせてカウンターパンチを顔面に叩き込む。


 「へぶっ!?」


 顔面でパンチを受けた魔法使いの男は、五メートルほど吹っ飛んで起き上がる。

 クロスがその一瞬の間に自身のHPを確認し、魔法使いの男を追撃する。


 (毒のダメージとさっき肩に受けた攻撃で残り一割か。相手に攻撃させない様、このまま攻めきるしかない!)


 「オラオラァ‼」


 クロスは素早く間合いを詰めてパンチやキックを繰り出す。

 パンチやキックの他に掌低や抜き手を撃ち込むが、あいては魔法使いとはいえ革の鎧を着てガードする相手に素手での攻撃では中々ダメージが通らない。


 (素手での攻撃じゃあダメージが通って無いみたいだ。このまま攻撃してても疲れるだけだ!疲れた所に反撃されたら終わりだ。どうする?どうする・・・・)


 クロスは考えながらも攻撃の手は緩めず、逆転の策を考える。


 (ダメージが通らないなら毒で弱らせるか?いや、そもそも毒が使えないし・・・ん?待てよ、毒じゃ無くても相手を弱らせるか、無力化してしまえばいい!)


 クロスはそう考えると、サッと周囲を見渡し使える物を探す。

 そこに、ちょうどいい長さのロープが目に入る。

 そのロープは、クロスが吹っ飛ばされて突っ込んだ屋台の荷物を固定していたロープだった。


 (あれならちょうどいいな。問題はどうやって縛るか?とりあえず、気絶させるか。)


 クロスは考えをまとめると、わざと攻撃の手を緩め相手を誘い出す。

 なにも知らない魔法使いの男は、クロスの攻撃が緩んだのをチャンスと思いナイフで突いてくる。


 「っしゃぁ‼」


 クロスは突いてきたナイフを避けてその手首を掴み体を引き寄せ、もう片方の手首を掴むと体を捻り背負い投げの様にして相手の体を宙に浮かせると、掴んでいた両手首を引っ張り頭から地面に叩き落とす。

  ドカンッという音がして頭から地面に叩き落とされた魔法使いの男は、見事に頭部だけ地面に突き刺さった状態で垂直に立っていた。

 魔法使いの男は腕の力でなんとか頭を地面から引き抜こうともがいていたが、助走からジャンプして勢いをつけたクロスの踵落としが見事に股間に決まり沈黙する。

 クロスは魔法使いの男が沈黙するのを確認すると、落ちていたロープで縛り上げ地面から引っこ抜いてそこら辺に転がしておく。

 その一部始終を見ていた周囲の反応はドン引きであった。


 「ミック、こっちは片付いたぞ。」


 そう言ってクロスはミックの方を振り向き加勢しようとするが、ミックが相手していた剣士の男は体のあちこちを斬られ、片膝をついてこちらを睨んでいた。


 「おお、クロス殿。早かったでありますな。」

 「そっちこそ、やるじゃないか。加勢する必要なさそうだな。」

 「いやいや、これでもギリギリでありますよ。」


 クロスとミックがそんなノンビリとした会話をしているのを聞いて剣士の男は激怒する。


 「テメェらふざけやがって‼リョータの奴、殺られたのかよ!」

 「ん?あの魔法使いの男のことか?そこに縛って転がしてあるけど?」


 クロスはリョータと呼ばれた魔法使いの男の方を指してやる。

 それを見た剣士の男は、いきなり武技アーツを使って攻撃して来た。


 「クラッシュソード‼」


 体ごと突進してくる突きの武技アーツを放つ剣士の男、クロスとミックはそれをヒラリと避ける。

 気が付くと先程縛って転がしておいた男の側に剣士の男がいた。

 どうやら先程の攻撃は最初から当てるつもりはなく、仲間を助ける為に放ったらしい。

 一応、仲間を助ける位には冷静だった様だ。


 「クロス殿、トドメ刺さなかったでありますか?」

 「ああ、俺がモンスターだと勘違いしてるみたいだから、落ち着いて話せばプレーヤーだと分かってもらえるんじゃないかと思ってな。」

 「クロス殿、それは幾らなんでも考えが甘すぎるであります。」


 ミックは呆れてため息をつく。

 そんなミックの言葉を肯定するかの様に剣士の男が吠える。


 「舐めやがって‼そこの鬼人族がプレーヤーかモンスターかなんて、もうどうでもいい!テメェは必ずこの手で殺ってやる‼そこの獣人もだ!テメェらのツラァ覚えたからなぁ‼覚悟しろよ‼」


 そう言って、剣士の男は魔法使いの男を担ぎ背を向けて立ち去ろうとしたが、直ぐにこちらを向き捨て台詞を残す。


 「俺様の名はコウガだ!貴様らを殺る男だ!覚えておけ‼」


 それだけ言うと周囲の人を掻き分けて去っていく。

 だがミックが黙っていなかった。


 「なんてマナーの悪い奴でありますか!お仕置きが必要であります‼」


 ミックはそう言うとコウガと名乗った剣士の男の後を追いかける。


 「お、おい、もう放って置けって!」


 クロスはミックを止めるが、既に後を追って行ったミックにその言葉は届いておらず、仕方なく後を追いかける。


 「待つでありまーーーす!」

 「なっ、しつけぇぞ。今回は見逃してやるって言ってんだろーが!」


 二人とも走っていたが、コウガの方は人を一人担いでいるのでどんどん距離を詰められる。

 そこでコウガは、周囲に置いてある木箱や果物の入った籠等を道路にぶちまけて足止めをする。

 さらに、武技アーツを使って真空の刃を数発撃ち出すと一目散に逃げていった。

 一方、ミックの方はというと、コウガによって道路にぶちまけられた木箱を避けたり、果物に足を取られていると、コウガが放った真空の刃が飛んで来た。

 一発目と二発目はガードしてやり過ごし、三発目を避けると四発目が飛んでくる。

 これも避けようとしたが、何故か落ちていたバナナの皮を踏んでしまい転んでしまう。


 「しまっーーー」


 その時、ミックを追いかけて来たクロスが、ミックに襲い掛かる真空の刃を見て思わず前に出て庇う。


 この時、クロスは忘れていた。

 自身のHPが残り一割しか残っていないことを。


 そしてミックを庇ったクロスは、その体で真空の刃を受けて残りのHPを0にする。

 クロスの体が砕けてその場に人魂が残る。

 この人魂の状態で20秒の待機時間が過ぎると、死に戻りしてしまうのだ。

 この20秒の間に蘇生薬を使ってもらうか、蘇生魔法を掛けて貰わないと蘇生出来ないのだ。


 「ク、クロス殿!?」


 目の前で突然、人魂になってしまったクロスに驚いたミックは二人を追いかけるのを忘れて茫然としていた。

 その間にリョータを担いだコウガは完全に逃げ失せたのだった。

 暫くして待機時間の20秒が過ぎると、クロスの人魂は炎が消える様にパッと消え、最初のスタート地点である街の中心の広場に転送されるのだった。

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