冒険者始めます
「ついに買えたな!」
「ああ、2時間も並ばされたんだ面白いんだろ?コレ?」
「間違いねーって!βテスターの俺が言ってんだから信じろよ。修司。」
隣で興奮して喋る友人に溜め息をつきながら、車を走らせる。
「分かったよ。んで、どうする?帰って直ぐに始めるのか?」
「ん~?ちょっとやる事あるから15時に城門の所でどうだ?」
「了解。じゃあ先に始めて待っとくわ。」
「種族はどうする?俺は人族にするけど?」
「ふ~ん、俺はランダムで決めるわ。」
「お前、それ単に面倒臭いだけだろ。」
「別にいいだろ。」
「はぁ・・・まぁいいや。こっちはアバターだけ作ったら直ぐログアウトして用事済ませて来るからよ。」
それから、友人の家に送るまでゲームについてアレコレ語るのを聞きながら小さく溜め息をつくのだった。
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『ようこそ。アナザー・ファンタジー・ライフ・オンラインの世界へ。貴方の名前と性別・種族を決めて下さい。』
「名前はクロス・性別は男っと。」
手元のパネルを操作して名前・性別と入力していく。
「後は、種族と職業だけだな。」
このVRゲームのアナザー・ファンタジー・ライフ・オンライン、通称 AFLOの世界には、様々な種族が存在している。
その種族を挙げるならば、人族・エルフ・ドワーフ・巨人族・獣人族・竜人族・鬼人族・妖精族がある。
さらにそこから、獣人族は獣人・魚人と鳥人があり、一纏めで獣人族となっている。
妖精族はノーム・サラマンダー・シルフ・ウンディーネ・インプ・ドリアード・レイという風に別れている。
そして、一部の種族には、格が存在している。
それが、エルフと鬼人族である。
エルフの場合、上からハイエルフ・ダークエルフ・エルフ・ハーフエルフとなっていて、鬼人族の場合は、上から上級鬼・中級鬼・鬼・オーガ・ゴブリンとなっている。
この格の最上位として、エルフは、セイントエルフが存在するとされ、鬼人族に至っては、個体名を持った鬼が存在している。
因みに、獣人族にも格はあるが、最上位の幻獣種以外は同格になっている。
但し最上位の種族はレアである為、普通には選ぶ事が出来ない。
当然、隠し要素なので公表はされていない。
「正直、これだけ種族が多けりゃ選ぶのが面倒臭いってーの。」
そう言って、ランダム選択をタッチする。
「ふ~ん、鬼人族か。これで良いか。」
そして職業を選択し決定する。
『これがAFLOでの貴方の姿です。よろしいですか?』
とりあえず、自分の姿をパネルで確認してみる。
身長は鬼人族の中で背の高いオーガと同じ位の高さで、190㎝はあると思われる。
体格は良く鍛え上げられていてマッチョであり、引き締まっていて無駄な肉が付いていない。
顔の方はゴブリンやオーガの様な獣じみた顔とは違い、ちゃんとした人の顔なのだが、額には2本の立派な角が生えていて口元からは僅かに犬歯が見える。
そして赤くて長い髪、瞳の色は金色であった。
「これはオーガ?でも角があるから鬼か?でも身長はオーガ位あるな。」
自分の姿を確認し、パネルの最終確認の【yes】ボタンをタッチすると、パネルが光りの粒子になって自分の体に降り注いだと思ったら、体が先程パネルで見ていたアバターの姿に変化していた。
『それでは転送します。貴方の冒険が実り多きものとなりますように。』
こうしてまた一人、AFLOの世界に新たな冒険者が誕生するのだった。