そして俺は面食いへ・・・
鼻フックを装着したまま寝て、翌朝。
あまりにも、熟睡していたのか、登校前の、妹(鼻フック装着)に起こされる。
妹「おい、起きろよ、バカ兄貴。」
妹「え・・・・!? お母さん、兄貴が鼻フックつけてるよー!!」
俺「いや、これは、ちょっと。」と恥ずかしくもあり、言い淀んでいたら、
おふくろ「あなたも見た目に気を使うようになって嬉しいわ。
いくら男は顔じゃないとはいえ、少しはマシにならないと、
女性に見向きされないもんね。
私があんたのことをブサイクに産んじゃったのが悪いんだけど、
あんたが前向きに鼻フックつけてカッコよくなろうと
しているのには、感激だわ。」
最初は寝ぼけていたということもあり、
おふくろや妹に変態扱いされるかと思っていたが、
そういえば今は、
豚顔がカッコイイ、美しいとされる世界にいたのである。
当然のように妹もおふくろも鼻フックを装着しているため、
俺の鼻フックも問題とならないのであった。
俺が鼻フック装着したことがよほど嬉しかったのか、
昨日の朝の喧嘩とは打って変わって、
妹は俺に話しかけてくる。
妹「兄貴の鼻フック似合ってるけど、
もう少し、カッコよくできる気がするなぁ。
その鼻フックはどこで買ったの?」
俺「駅前のドラッグストアだよ。」
妹「そうなんだ。
少し高いけど、
隣の市のショッピングモールでいいの見つけた方がいいよ。
そこには、鼻フック専門店があるから、
つけ心地とか似合い具合とか、
兄貴にぴったりな鼻フックとか見つかると思うし。」
俺「そんなの、あるのかー!?」
妹「え!? 世間知らずすぎでしょ!
美を追求するためなんだから、
あるに決まってるじゃない。」
そうか・・・美的感覚が逆なんだから
鼻フック専門店もあっても不思議じゃないんだな。
と、無理やり納得する俺。
妹「私もそこで買ったんだよ。この鼻フック。
おかげで、コンプレックスだった高い鼻から、
鼻の穴が丸見えの可愛い女子高生になれてるわ。
すっぴんはブスだけど、
メイクでけっこうだませてるはず。」
目の前では、鼻フック装着+アイメイクで細い目にする等で、
すっかり豚顔になっている妹が嬉々として話している。
豚顔とはいえ、妹のこんなに嬉しそうなところを見るのは、
久しぶりかもしれない。
妹「おっと、そろそろ行かなきゃ。」
そして妹は登校し、おふくろは出勤していった。
俺は昨日同様、2限が始まるまで、
ネットやテレビを適当に見て回っていた。
どこを見ても、
可愛い、美しいと評されるのは豚みたいな顔した女性である。
おそらく、以前の世界の俺ならまず近寄らないだろうなという、
豚顔のモンスターが美少女扱いされている。
目があるんだか分からないぐらい目が細くて、
突き出ている&穴が丸見えの鼻、
顔の肉つき、
笑う時に「フゴッ」と鼻を鳴らしちゃう、
などなど、そんな女性ばかりが取り上げられるのを見ているうちに・・・。
1か月経った。
慣れというのは、恐ろしいものだと、我ながら思う。
こちらの世界に来て、
俺の頭というか美的感覚は洗脳されつつある。
だってテレビつけても、豚顔のタレントやアイドルばっかだし、
グラビアとか成人向け雑誌も、本当に豚みたいな女性の裸だらけ。
アニメとか漫画のヒロインもほとんどみんな、豚顔だしな(笑)
最初は、こんなのに洗脳されずに、
俺はブス専を貫く(元の世界では面食い)と思っていたが、
段々、難しくなっている。
だって、この世界でのブスな子(目が大きく、鼻は高い)と一緒にいるとさ、
本人がブスって自虐的になってるのか、笑顔も少ないしさ。
そんな表情の子といると、こっちもつまらなくなってくるわけだ。
そして、更に2週間経つと、
俺は豚顔の女の子を可愛いと思う、面食いになってきていた。
ブス専、最高!!
豚みたいな顔した女性、最高!!
ま、主人公の世界では、面食いってことにはなってますがね。