ブスに好かれなくても平気なはずなのに・・・
電車に乗るも、正直、げんなりしていた。
だって、想像してごらんよ。
乗客の女性が全員豚みたいな顔になるように、
目を細めるメイク+鼻フックしてるんだぜ。
豚みたいな顔になるメイクをしてるっぽいので、
原型の顔が分からないが、少なくとも、
そんな醜くはならないはず。
だって、鼻の穴が丸見えなんだぜ・・・・。
笑う時も、息を吸い込んで、豚鼻を鳴らしてるしさ。
週刊誌の中吊り広告も、
豚みたいな容姿のグラビアアイドルだったり、
豚みたいな顔した女優のスキャンダルだったり、
もう訳が分からなかった。
途中の駅で、同級生と合流する。
「お、お前も2限からか。」
その同級生は、
ナチュラルに鼻が突き出てて、豚に似ている顔だった。
ということは、この世界では、
こいつがイケメンで
自分で言うのも何だが、
顔が整ってる俺がブサイクって扱いなのかな?
それとも豚みたいな顔が良くなるのは女だけで、
男は昨日までの世界と同じ美的感覚なのかな?
と、考えていたら、すぐに答えが分かった。
「今日の夜の、合コンさ、
せっかく俺がセッティングしたんだから、うまくやれよ。」
こんな豚顔の同級生がセッティングできるということは・・・
キョトンとしていると、
「何、キョトンとしてんだよ。
いいか、とにかく緊張しなきゃお前は面白いから。
顔で勝負できない分、面白さで場を盛り上げてくれよな!!
面白ければ、特に男は、顔なんて関係ないんだから。」
その瞬間、
この世界では俺はブサイク設定なのねってことが分かった。
「しかし、今日の電車はブスばっかだな。
鼻フックつけなきゃいけないブスばっかだな。
自然と鼻が上向いている美人じゃないと、げんなりするよな。
でも、夜の合コンは美人を揃えたから、気張れよ!!」
「お、おう」
俺は頷くしかなかった。
夜は、モンスターとの合コンなわけか。
この世界では美人でも、俺にとっては・・・。
大学に着き、授業を受ける。
学食を食べる。
そして夕方・・・。
我ながら凄いと思うが、この状況に慣れてきたわ。
ただ、昨日までとは真逆で、
女からブサイク扱いされるのが心に突き刺さるが、
それ以外のことには大体慣れていた。
夜、約束の通り、
合コンが始まる。
男5人、女5人の合コンさ。
同級生すごいな。
本当に可愛い子しかいない・・・いや、皮肉ですけど。
ホント、全員ナチュラルに豚みたいな顔してるし。
他の男は鼻息荒くなっているが、
俺には罰ゲームでしかない。
5人の容姿を言葉で表すと、
子豚、白豚、黒豚、ブヒー、ブヒィィィィ
子豚:小柄な豚顔
白豚:肌の白い豚顔
黒豚:焼けた肌の豚顔
ブヒー:体重80kgぐらいの豚顔
ブヒィィィィ:体重120kgぐらい? 常に何か食べている。
俺はげんなりしていたが、
せっかく同級生がセッティングしてくれたんだから、
こんなブスやデブスばっかでも、
とりあえずこの場を楽しませよう!!と場を盛り上げる。
人生で一番と言えるほど、
俺は盛り上げに盛り上げた。
合コン終了間際のマッチングタイムで、
さすがに誰かから声がかかるだろうと思っていたら、
誰からもかからなかった。
俺以外の全員はカップル成立。
イケメンの同級生が、
2人を持ち帰りしたとのこと。
というわけで帰りの電車は1人だけの帰宅となった。
車中で考えていたのは、
あんなブスどもに接触されなくて良かったじゃん!!
これで良かったんだよ・・・・・
そう思いながらも、
釈然としない俺がいた。
やっぱり、こんな顔だからかな。
もっと豚みたいな顔に生まれればよかったのかな。
いやいやいやいや、いかんいかん、
こんな世界は今日で終わるはず。
切り替えていこうぜ!!
と思いながらも、ショックを引きずっており、
ドラッグストアで、
鼻フックを買い、
鼻フックを装着しながら寝ることとした。
お久しぶりの投稿です。
こんな世界に行きたいような、行きたくないような。
豚顔に限らず、容姿の美的感覚が全く異なる世界って、
面白いと思う。