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純、i。 ※休載中  作者: ゆうまに
独りの美少女
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Episode-8 仲良し作戦2


 佳織の告白を聞いた翌日、俺は朝早くから学校に登校していた。


 理由は、例の件で、ちょっと相談したいことがあると佳織が言って、それで早めに学校に来てほしいらしい。

 何で昨日の内に相談しなかったのか疑問だが、相談を持ちかけた本人がそう言うんだから仕方なかった。


 いつもより早めに家を出てるだけあって、人通りはいつもの光景とは違う感じに思える。出勤する人、ランニングしている人。

 その中に、制服を着ている人は見当たらない。


 「……さむっ」


 コートを羽織ってくればよかった。こんなに寒いとは……。


 なれない早起き、まだ少し重いまぶたが完全に閉じられないように目を擦って眠気を覚ましていると、学校に着いた。


 いつもとは違った空気の昇降口から、いつもとは違う感じの階段を上がり、いつもとは違うように感じる教室のドアに手をかける。


 「おはよう、純一くん」


 「よう。」


 教室にはただ一人、佳織が居るだけだった。

 そうだろうとは思っていたが、やはり、違和感を覚える。


 「さっそくだけど、どうするか一緒に考えて欲しいの」


 「……どうするか、って、具体的に何も決めてなかったのか?」


 「うん、だって……純一くんが手助けしてくれるなんて、思ってもいなかったから……」


 そりゃこっちの台詞だ。

 まさか転校してきた美少女に悩みを打ち明けられるなんて、思ってもいなかった。


 「手助けって言っても、微力だしなあ。ホントにお前の助けになるかどうか……」


 「大丈夫だよ。だって、純一くんだもの」


 「何を根拠にそんな……」


 「大丈夫、だよ」


 これでもか、とばかり佳織は言い切る。

 そこまで俺を信頼してくれているのはありがたい事なのだが、理由がないとなるとこっちも、どうして信頼されているのか不思議に思う。

 

 まあ、おそらく、佳織が転校してきた日のことや俺が雫先輩にこき使われた日、そして俺に悩みを打ち明けた日が、『理由』になっているんだろう。


 「……んじゃ、何か案でも出してくれよ。俺はその案について考える」


 「案、ねえ……。無いこともないのだけれど」


 「勿体ぶらず話せよ。こうなった以上、打てる手は何でも打っていくのが筋だ」


 「そうよね、じゃあえっと……」


 そう言って、佳織は自分の鞄から一冊のノートを取り出した。


 「なんだそれ」


 俺が催促をかけると、佳織は少し頬を赤らめ、「これ、読んでみて」と俺にそのノートを手渡してきた。


 「……『仲良し作戦』?」


 そのノートの題名は『仲良し作戦』とかかれている。

 

 表紙をめくると、『みんなと仲良く話すための秘訣』『自然に会話に入る秘訣』『話し方の秘訣』など、何個もの項目が並んでいる。


 「それね、この学校に来てから、図書館とかでハウツー本を探して読んで、自分なりにまとめてたの」


 「こんなにも……か」


 次のページにも、そのまた次のページにもそのような項目が書かれていた。

 

 「そう。……でも、その本を読んでも、まとめても、全然役に立たなかった。多分、本は悪くないんだけど……」


 佳織が言う通り、このノートにまとめられた事は間違ってはいない。

 どれも、相手の心理、性格、態度を徹底的に解説したような事が書かれている。


 「読んだ本人が悪い、ってことか」


 「……そうなると思うの。だから、他の人の知識とか知恵を頼っても解決されないんだよ。」


 「……自分で考えるしかない、か」


 この手の問題は、カウンセリングをすれば一発で治るなんて信じられているかもしれないが、本当はそんなことはない。

 特に佳織は、幼少期からそんな境遇に居たため、深く根付いてしまっているのかもしれない。そうなれば、簡単に解決は出来ないだろう。

 

 俺も、こんな性格からか一人で居ることは多く、佳織と同じような悩みを持ったことはある。

 しかし、俺は誰かに相談する訳でもなく、ただただ時間が過ぎ行くのを待っていた。そして現在、何かが変わったわけでもなく、昔と変わらない日々だ。


 そういう点だけを見れば、佳織と同じかもしれないが、実際は違う。


 佳織は、俺とは違って『自分から一人になった』わけではない、『一人にされた』という方が当てはまる。


 ようするに、佳織は、今まで一人で考え一人で生きてきた。

 

 そんなやつが、十何年経った今、変わろうったってそう簡単にいかない。


 この問題は、自分で考え、自分で解決するしかない。

 佳織がそれを一番よく分かっているのだろう。


 「それでね、また新しく考えたの。」


 「そうか、もう考えていたのか」


 「うん、それが……『仲良し作戦2』って言うんだけど……」


 「……さっきのと、何が違うんだ?」


 「ええっと、この作戦の内容は、私と純一くんがとても仲のいいように振る舞って自然と話しやすいムードを作る。そして、そのムードの中私と純一くんが他の子達に会話を持ちかける。そしたら、きっとその子も一緒に話してくれるんじゃないかな」


 商談か談判でもする気なのか? と言いたくなるくらい堅い内容の作戦だった。


 「……まあ、悪くないだろう。でも、俺とお前が仲良くするってのは……どんな風に?」


 「え? それは……」


 佳織は困ったように顔をしかめた。


 そして少し悩んだ末、また口を開く。


 「『よく話す』とか、『いつも一緒にいる』とか……じゃないかな?」


 「うーん……」


 あってるようで、あっていないような気もするが……。


 まあ、佳織にそれしか案が無いとなると、他の案を考えるのもまた面倒だからな……。


 「それでいいんじゃないか。お前、俺となら上手く話せるみたいだし」


 「うん。純一くんじゃないと、私ダメみたいだから……」


 「…………」


 その言葉は何か誤解を生みそうで怖いな。

 

 

 そうして、俺と佳織は今日から『仲良し作戦2』を実行することとなった。




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