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純、i。 ※休載中  作者: ゆうまに
新しい日々の始まり《プロローグ》
5/31

Episode-5 初めての昼食・初めての雑用 3


キーンコーンカーンコーン


 「それじゃあ今日はここまで、予習しておくように」


 最後の授業・英語が終わって、やっと帰れると思った矢先──


 「純一、ちょっと顔貸せよぉ」


 なんとも悪そうな顔をした竹良が、急に顔を出してきた。


 「なんだよ。俺はお前に用なんてないぞ」


 「僕にはあるんだよ!」


 いつにも増して面倒くさい様子だ。

 きっとろくでもない事だろう。


 「お前にあっても知らん。俺はHRが終わったら帰る」


 「な、なんで!? 話だけでも! ね?」


 しつこい奴だな……。

 

 「ハッキリ言うけどなあ、めんど──」


 「──お前ら、席に着けHRを始める」


 タイミング悪く担任の幕野内が教室に入ってきたため、俺はそのまま言葉を飲み込み前へと向き直った。

 竹良も、すかさず自分の席へと戻って行った。


 「(HRが終わったら、ソッコーで逃げるか)」


 内容が分からない用事に付き合わされるくらいなら、走ってしんどい思いをして家に帰ったほうがマシだ、と俺の直感が告げる。


 「……HRっつっても、今日は特段連絡することがない。なので、今日はこれで……」


 その言葉を聞いた直後、俺の足ははやぶさの如く動いた──。


 「──あ、おい純一! 逃げんなぁ!」


 竹良の呼びかけには目もくれず、俺は一目散に教室から走り去った。


 「(学校内で撒いてみるか……!)」


 俺は普段から運動なんてしていない、が、竹良は何かと運動が出来る。

 そんなやつから追いかけられれば、捕まるのは時間の問題だ。


 俺はとりあえず、人気が少ない体育館裏の物置き部屋の近くまで走った。


 「はぁっ……はぁっ、ここまで来れば、見つからんだろう」


 汗が一滴一滴、額から垂れる。


 「誰に、見つからないんだ?」


 「──ッ!」


 誰も居ないとばかり思っていた物置部屋の中から、昼に見た顔が出てきた。

 

 「おいおい、『万事休す』みたいな顔はよしてくれよ。なんか傷つく」


 「し、雫先輩……」


 「こんな所でかくれんぼでもしてるのか、純一」


 その小柄な体系とはそぐわない仁王立ちで、雫先輩は俺の前に立ちはだかった。


 「かくれんぼだなんて、子供じゃあるまいし……」


 「……そうか、かくれんぼは子供の遊びなのか……」


 「雫先輩?」


 なにやら悔しそうな……いや、今にも泣き出しそうな堪え顔で、俺の事をじっと見つめる雫先輩……。

 なんだ? なんだなんだ?


 「所詮、『子供』の遊びか……」


 やけに『子供』の部分だけを強調して……って、あ。


 「いやいやいやっ! 会長の事を思って言ったわけじゃないんで!」


 全生徒の頂点に立つ人でも、やはりコンプレックスは存在した。

 しかも、そのコンプレックスが体系となると、事は深刻だ……!


 「……おい純一、正直に答えろ。私は幼稚体系か?」


 「えっ!」


 「答えろ!」


 雫先輩は俺を睨みつけるように迫って、もう後がないような……そんな雰囲気になってしまった。

 というか、何で俺はこんなハメに?


 「……はい、そうです。」


 「…………」

 

 俺の言葉を聞いた雫先輩は、その場に崩れるようにペタンと座り込んだ。


 「あ、あの……会長? 大丈夫ですか?」


 「…………」


 俺の呼びかけに、雫先輩はピクリとも反応を見せない。


 「(これは……竹良の件より面倒なことになったぞ……)」


 まさか災難から逃げて、また災難に遭遇するとは……。

 最近の俺は、ちょっと……どころではなく、ついてないような気がする。


 化石と化した雫先輩をよそに、俺はこっそり息を潜め帰ろうとしたが……


 「どこへいく」


 落胆ムードから一変、鬼のような形相でこちらを睨みつける雫先輩になす術もなく、俺はその場に居つづけることになった。


 「仕事を手伝え。じゃないと家まで帰さない、というか着いていく」


 「……ようするに、俺に雑用を任せる。ってことですよね。っていうか、家まで着いてこられたらホントに面倒なんですけどっ」


 ……雫先輩の話によれば、生徒会の雑務で物置の整理を任されていたそうだ。

 だが、他の生徒会のメンバーは既に帰ってしまっていて、会長の雫先輩だけが居残って整理をしていたそうだ。


 こんな小柄な人に任せっきりの生徒会もどうかと思うが、一般生徒に手伝わせる雫先輩もどうかと……。


 「ちゃんと仕事すれば、家までは着いていかん。というか端からそんな気はない。じゃ、ちゃっちゃと済ませてくれ。」


 「って、雫先輩は帰るんですか?」


 「当たり前だ。面倒なんだよこの手の仕事は。あ、あと言っておくけど途中で帰ったりでもしたら先生に『辱めを受けた』と報告しに行くからな。じゃ」


 「……悪魔だ」


 その、小さく恐ろしい……しかし、どこか哀愁を漂わせる背中を俺はただ呆然と見送り、立ちすくんでしまっていた。


 俺を見つけた最初から、きっとこうするつもりだったのだろう。

 

 「やっぱ、先輩って何かと面倒だな……」


 そう愚痴を漏らしながらも、俺は、撒かされた『雑用』にとりかかっていった。




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