Episode-2 新春新学年新クラス 2
衝撃の幕開けから一日経った。
新春には、よく、『出会い』があると言われているが、なんとも喜びがたい出会いとなるとこの先の日々が思いやられる……。
「…………」
あまり気乗りしない朝。いつもより、学校へと歩く足が重く感じる。
なに、理由は分かってる。
──昨日、ふと舞い降りてきた『天使』の所為で、あやうくクラスメートに天国へ逝かされそうになった。
平穏さえあればいい、そう願っていた新学期は俺の望みと正反対の形となって、今の俺の足を重くさせているのだ。
体を動かしたわけではないが、どっと疲れが溜まり、その日はそのまま家に直帰した。
ふと冷静になって、事の整理をつける。
ある日──と言っても、偶然ではないだろう、しいて言えばアイツが転校してくる事は『必然』だった──
どんな理由かは知らんが、アイツは俺の隣に座りたいと申し出て、担任の幕野内も易々と了承した。
たったそれだけの事なのだが、クラス全体(主に男子)の目つきが一変し、急に殺意を俺に対し向けるようになった。理由は……何となく分かる。
「……面倒な事になった」
正直、転校生だとか、美少女だとか、俺はどうでもいいと思っていた。
なんとか矛先だけは、向けられたくないと願っていた。
そして学校に着いた。
「(頼むから何も起こらないでくれ……!)」
ただそう願い、俺は昇降口へと向かった。
「おはよう」
教室へ入ると、真っ先に聞こえたアイツの声。変に意識していたせいなのか、それ以外の環境音がまったく聞こえない。
俺は黙り込んだまま、自分の席につく。
「あれ、聞こえてないのかな? ……おはよう、純一君」
「……へっ?」
「お、は、よ、う。って言ったんだよ? 聞こえてたでしょ?」
「あ、ああ……! おは、おはよう……」
「どうしたの? 私、何か変だった?」
……変なのは俺だ。そして、俺の背後からものすごい殺気を発してるやつらだ……。
「う、ううん! 全然、そんなことないんだけど……」
俺が言葉を濁すと、佳織は首を傾げるようにして俺の様子を窺っている。
その行動一つ一つが、俺の寿命を縮めているんだ……! 気づいてくれ!
「そっか……」
何かを諦めたか、佳織は前へ向き直り、途端に静かになった。
「(気分屋なのか……?)」
そんなことを頭で考えつつ、授業開始のチャイムがすでに鳴っていたのを聞き、すぐに授業の準備を始めた。