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第二十八話−魔術師の隠し立て 2−

ケビンはそう言い放つと、僕に勢い良く肩をぶつけて、教室を出て行った。

僕は、ケビンに何か悪いことを下のではないかと何でも今までの行動を思い返してみた。

しかし、何も心当たりが無い。


―――魔術師が人間の皮をかぶったバケモノだって?

もしもリトル・ビニーがそんな風だったらどうしよう……

いや、そもそも、そんな事いってる奴が一番バケモノみたいじゃないか。抹消するだって? 気がふれているんじゃないか?


そんなことよりも、僕が魔術師だってことが彼にばれてしまった。でも、彼は僕と同じ魔術師だ。

第一に、ケビンがあんなふうになるだなんて、想像してもいなかった。


どうして彼は「俺には誰もいない」といったのだろう?

ケビンには、友達が沢山いる。少なくとも、一人ぼっちということは、今の状況からして無いだろう。

それに、彼が最後に言い捨てた、「力のあるやつだけが生き残れる」という言葉も気になる。


……どうしよう。

取り返しのつかないことになった。

ケビンには、ついさっき、魔術師であることを外部に漏らしてはいけないと忠告されたけど、ジェシーにはもう話してしまった。


「俺だったら、抹消するを選ぶけどな……」彼の言葉が頭の中で蘇る。

だとしたら、僕は少なくともジェシーを守らなくちゃいけない。 「守らなくちゃいけない」だなんて、なんだか、ドラマみたいな格好付けのセリフに聞こえるけど、ジェシーは友達が少ない僕の唯一の親友だし、いざというときに助けなくちゃいけないのが、本当の友達ってもんだろう?

それにリップやウィルソン先生……。放課後、僕たちのちょっとした探検に関わってしまったがために皆殺しにされるなんて……


正直言って怖い。怖すぎる。ケビンのことだ。

何をしでかすかわからない。それもこれ全部僕のせいだ。僕がジェシーにあの神殿のことを話さなければ、こんなことにはならなかった!


よし、ここはリトルに相談しよう。なんてったって、あいつは僕のことを魔術師にしてしまった張本人だ。


その晩、僕は夜遅くに起きだして、トイレに引きこもった。もちろん、電気は消しておく。

リトルに電話をかけるためだ。


携帯の小さな画面から放つ光が僕の顔とトイレの天井を青白く照らし出した。

……今回はメールで打つより、直接電話をしたほうが言いと考えたのは、できるだけ早く話をつけたかったからだ。メールだと文章だけでやり取りしづらいし、途中で居眠りしてしまう危険性がある。

リトルには申し訳ないけど、一番見つからないで済む方法は、これしか思いつかなかった。


『XXX-XXXXX-XX』


しばらく通信音が続いた後で、彼の声が聞こえた。


「リトル・ビニーだ。レンディか? こんな夜遅くに一体何の用がある」


彼の声からして夜中に突然起こされたことにいらだっている様子だった。

僕はできるたけ手短に終わらせるために、簡単に謝った後、早速本題を取り上げた。


「あの……さ、ちょっと相談したいことがあるんだ」


「何だ」


「今日、友達に僕が魔術師だってことを教えちゃったん……」




「バ カ か お 前 は !」




受話器の向こう側から、外に音漏れするのではないかと思うほどの罵声が飛んできた。

思わず耳をふさぎたくなる音量だったが、僕は必死で耐えた。


「大体、お前は何故魔術のことが世間一般にバレたら危険なのか、わかっていないようだな」


うーっ!声がトゲトゲしてて、心に突き刺さる。


「そんなの知るわけ無いじゃない」


僕はぼそぼそと答えると、リトルはハアと盛大に溜息をついた。


「では、教えてやろう。 まず魔術というものはだな、使い手によってその価値が天と地ほど別れてしまう業なんだ」


「どんな風に?」


リトルは改まったせき払いをした。


「例えばだぞ? お前が無理難題名ことを魔術の力に頼って無理矢理解決しようとすれば、その価値はたかが知れたものになる。

しかし、己が成長して、人のためになることだったら、その価値は計り知れないものになるだろう。

無論、我々は利益のためだけの魔術のことを"黒魔術"と定義している。

黒魔術には落とし穴が合ってな?

人間誰しもが心の奥底に潜んでいる欲求の悪魔に食われる危険性があるんだ。その危険性をさらに高めるのが黒魔術だ。それらの業を使うすべを知ってしまった時点で、常に危険がともなうことになる。

最悪の場合は、死を招くこともある。

これらを回避するためには、ちゃんとした魔術修行をして、己の心を上手くコントロールできるようにならなければならない。心を操れる者こそが本当の魔術師だ。だから、一般人にはむやみに教えないほうが良い」


「でも、ジェシーは真面目だし、ちゃんと決められたことも守れるよ」


「しかし、そのジェシーとか言う奴の真の人間性については、本人しかわからないだろう?」


まるで僕がやったことはガキしかやらないようなことだといわれた気がして、僕は腹が立った。

しかし、リトル言っていることは正しかった。

良く考えてみれば、確かにそのとおりである。

魔術の詳細点については、よくわからないけど、ジェシーには危険な橋を渡らせたくないし、そんな面倒なことに付き合うのは、彼女もごめんだろう。


僕はこれからどうしてたらいいのかわからなくなってきた。


「ね、魔術師であることがバレたら、そのバラした相手も魔術師にしなきゃいけないの? もしかして、抹消するとか……」


「確かにそうだ」


胸の奥がチクりといたんだ。

やっぱりジェシーはケビンに……?


「だが、私なら、そのどちらでもない方法を取ることができる」


「え?」


「フフフ。まあ見てろ。私にいい考えがある。だが、それを成功させるためには、レンディ。お前の協力が必要だ」

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