第四十三話−決行 2−
ホテルの中は家族連ればかりだ。
もし、ジェシーたちとばったりでくわしちゃたらどうしよう……。
そんなことをもんもんと考えていたとき
「あら? レンディじゃない?」
と、いう不意に背後から女の子の声が聞こえてきた。 やばい、やばい、やばいよ! どうしよう!
声の主はジェシーなのか?!
心臓の音が耳に聞こえそうなほど高鳴っている。
見てみぬ振りをするか、それとも、潔くここに来た理由を話すべきか?
選ぶべき道は二つしかない。
僕は、そっと後ろを振り返った。
……最初に目に入ってきたのは、茶色い髪をした女の子。
そして、その家族と思われる女性と赤ん坊だ。
大丈夫、違うレンディのことを言っている。それに彼等は、ジェシーとは関係のなさそうな人たちだ。
僕は、ほっと胸をなでおろし、急いでホテルの玄関へと向かった。
ホテルの玄関からは歩いて三分のところに薬局がある。
急いで買い物を済ませると、僕はジェシー達に見つからないよう、泥棒かスパイになった気分でホテルの部屋にまで帰った。
そして男に気づかれないよう、そいつのそばにしのびよった。ホテルスタッフだった男は、まだ眠っている。
僕はコップに一杯水を汲み、砕いた睡眠薬をそっと男に飲ませた。
吐き出されたらどうしようかと思ったが、神様は僕のことを思ってくれたらしく、上手くいった。 神様、ありがとう!
あとはリトルが帰ってくるのを待つのみ……いや?
まだやることがある。 ジェシーへのプレゼントだ!
どうやって渡そう?
リトルは事が済んでからにしろといっていた。
事が済むことにタイミングを見計らって、ジェシーの部屋に忍び込めるだろうか?
そもそもリトルとは連絡が取れない。
さっき、リトルの携帯電話にメールをしようと試みたが、圏外だった。
それなら、まずホテルカウンターに電話をして、ジェシー達の泊まっている部屋を確認しなくては。
カウンターのところの予約リストは、薬局から戻ってくるときに確認したが、既に片付けられていた。
「もしもし? あの、クローズですけれども、ぶれいむさんはチェックインされていますか?」
「それをお教えすることは出来ませんが」
やはり、個人情報だからだ。
「どうしても知りたいんです!」
「身内の方でしたら、証明証などを提示していただけないでしょうか?」
「あの、そうじゃなくて、どうしても……」
「そういわれましても、私の一存でお教えできることでは、ありませんので……」
受付の人の声が、イラだっている。 これ以上質問しても、良い答えは返ってこないだろう。
仕方ない。 何か別の方法を探さなくては。
「わかりました」
ガチャ―――。
さて、これからどうしよう……。
しらみぶしに、ホテルの部屋を確認していくのか?
いや、それでは危険すぎる。 ばったり出くわしてしまったら、それでお終いだ。
もっと他に方法はないのだろうか?
……そうだ。リトルを探そう! そうすれば、必然的に彼女の居所がつかめる。 彼は、そのために変装したも同然だ。
しかし、彼を探すためには、やはり人目のつかないところを通っていかなければ……。
僕は、一旦外へ出て、裏口から入り込むことにした。
今は、丁度夕食時だ。スタッフたちは、皆、忙しくしている。
おそらく、スタッフルームくらいは、空いている頃だろう。
そこから忍び込めば、人目を避けていけるはずだ。
僕は、かじかむ外の寒さをしのびながら、ホテルの裏口を探した。
そして、入り口の丁度反対側に来た頃、僕はある声を聞いた。
最初はただの会話かと思ったが、どこか聞き覚えるある声だ。 良く聞いてみると、それはベランダの方から聞こえてくる。
僕は、上を見上げた。
満天の星空だ。 そして、規則的に並ぶ窓からは温かい光が漏れている。 そして、それを背に受けて黒く浮かび上がるベランダ格子の影。
よく目を凝らすと、四階辺りのベランダで、人が会話している様子がうかがえた。
彼等は……いや、彼女等は、ジェシー達である!




