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第四十一話−尾行−

僕は、リトルの発言に度肝を抜かれた。


「え?! リトルが、なるの?! その……女の人に?」


リトルは平然と


「そうだ」


と、答えた。

これまた、リトルが大真面目に言ってのけたので、僕は思わず噴出した。

冗談だろ……?


「おい、笑いすぎだぞ。 こちとら真剣に言ってやっているというのに」


冗談ではないようだ。


「ごめんごめん、そんなつもり無かったんだ。 で……、どうするっていうの?」


「フン、お前なんかには想像できないだろう。 今に見てろ? 美の絶頂というものを見せてやる」


確かに、彼は未来人だ。 と、いう事は、正体をバラさないためなのか?

 でも、彼が未来から来たという証拠なんて、どこにもない。 確かに、過去を変えれば未来は変わる……。

 普通に考えたら、そんなこと絶対にありえないんだろうけど、でも今は信じられないようなことが目の前で起こっている。

 こいつをどこまで信用していいのかわからないが、仮にそれが真実だとして、仮定した場合、どこかにリトルの昔の姿の奴がいるのかもしれないということだ。

 だとしたら、そいつにバレないようにするために変装しているのか?


 一体、だれが昔のリトルビニーなんだろう……。


「日どりはいつだ?」


不意にリトルが尋ねてきた。 確か、ジェシーは


「クリスマス・イブの日」


と、言っていたハズだ。


「わかった フフ」


彼はせせら笑うようにそう言った後、


「まずは、あの計画を実行してからだ」


と付け加え、電話を切った。


 実は、あの計画というのは、ジェシーの記憶を消すことだ。

 僕が、ケビンやジェシーに魔術師であるということをバラしてしまったあの日、僕はリトルから信じられないことを聞かされた。

 それは、魔術師であることが一般人にバレだ場合、そいつを抹消するか、同じ魔術師として受け入れるかしか、ないことだ。

 しかし、彼はそのどちらでもない方法を取ることが出来る。

 その方法というのは、本人の記憶を消してしまうというものだ。


 彼は、相手の脳に特殊な電波を当てることで、記憶を消すことができると話していた。

 電波を調節することで、必要な部分だけの記憶を消すことができ、強ければ強いほど、何日分もの記憶を消すことが出来る。 しかし、失敗しやすいのが難点らしい。


結果、ジェシーの記憶を消し、僕が魔術師であったことをなかったことにするという話になった。

しかし、そんな夢のような話が、本当にあるのかと言いたいところだが、彼は未来人。

未来の科学技術がどの程度発達しているか想像できない分、今は彼を信じるしかない。


次の日。

僕は、朝からドキドキとワクワクとソワソワを同時に味わっていた。

そんなことをよそに、ケビンはいい気になって、僕のことをからかう。

「どうしたんだい? パーティはもうすぐだぞ」ってね。


でも、そんな彼を、明日、僕がぎゃふんと言わせてやれると思うと、ウフフ……楽しみで仕方がない。


それにしても、リトルは明日、どんな格好をしてくるんだろう?

まさか、女の格好をしたまま、仮面をつけてくるのではあるまい。 いや、ちゃんと取ってくるはずだ。


僕はそれゆえ、こっそりと楽しみにしていた。

今度こそ、見てやる。 リトルの仮面の下を……。


「妙に嬉しそうだけど、何かいいことでもあったの」


「ううん、別に」


やはり、ジェシーは一番早く僕の変化に気が着いた。

もしかしたら、僕がわかりやすいだけなのかもしれないが、今回のことも、ジェシーには秘密にしておこう。

リトル・ビニーが関係しているからだ。 彼は、自分のことをできるだけ外部に教えないでくれといっていた。 彼のことが一般人に知れると、大変なことになるらしい。 どのように大変になるのかはわからないが、とりあえず彼の言う事に従っておこう。 後々になって、ややこしい事にしたくない。


と、いうワケで、ジェシーとはいつのもように、接しておいた。


「そういえば、ジェシー。 クリスマス・イブの日はどこに出かける予定なの?」


「ブロードウェイのストリーブスホテルよ。 でも、そのまえにレストランによるけど」


ほうほう、なるほど。


「へえ。 旅行、楽しんできてね」


僕が、調子よくそういうと、ジェシーは浮かない顔で


「わかったわ。 レンディのことは心配だけど……」


と、言った。


「大丈夫だよ。 ちゃんと、手は打ってあるから」


そう、手は打ってある。

***

下校してから、眠りにつくまでは、明日のことだけを考えていた。

明日は、夜の10時にセントラスホテルの三界に集合することになっている。

そまでに、どうやっていえからこっそりと抜け出せるか、メールで、リトルと話あった結果、あらかじめ彼に家の前で待機してもらうことになった。

そして、僕は、友達の家に泊まりに行くということで午後六時に家を出る。


そして外で待機してくれていたリトルの車に乗って、ジェシーのでかけ先に行き、チェックインするのだ。 そうすれば、ジェシー達が寝静まったのを合図にリトルがジェシーの記憶を消せる。

しかし、それにいたるのでの方法については、詳しく説明してくれなかった。


***


「母さん、友達の家に遊びにいってもいいかな?」


一通りの荷物を抱えて、僕はリビングにいる母にそう告げる。


「何言ってるのよ。 もう六時でしょ?」


「泊まる約束をしちゃったんだ……。 明日から冬休みじゃないか。 向こうの親御さん達は歓迎しているよ。 ね、いってもいいでしょう?」


すると母は、皿をタオルで拭きながら、いぶかしげに振り返る。


「どこのおうちなの?」


「えっと……そう。ケビンだよ」


嘘じゃなかったら、はくところだ。


「珍しいわね。 まあ、いいわ。 向こうが歓迎しているのならいってらっしゃい」


天にも上るほどではなかったが、うそが通ったことにちょっとした喜びを感じた。


母に別れを告げた後、僕は急いで家の近くにある駐車場へと向かった。 外はもう真っ暗だ。 冷たい夜風が身にしみる。


「遅れてごめん」


僕が来たと同時に、濃い銀色の車の前方ドアが開かれた。


「待ちくたびれたぞ」

僕は、リトルのとなりの助手席に座る。

それと同時に、リトルはサイドポケットに挟まっていた地図を取り出して、中身を吟味し始めた。


「お前の女の子は、どこにいるんだ?」


そう言って,リトルはオックスフォードシャー州周辺の地図を広げてみせる。


「ジェシーは確か、ブロードウェイのストリーブスホテルに泊まるって言ってた。 でも、其の前にレストランで食事をしてから来ると思う」


「レストランだと?!」


するとリトルはあえいでハンドルを叩いた。

僕は、心配になったので、「何か不都合なことでもあるの?」 と、尋ねてみた。


「本当は、ホテル内で食事をしているときに忍び込みたかったのだが…… ふむ、まあ良い。 先を回るに越したことは無い。 行くぞ、レンディ」


リトルは少し納得のいかない様子だった。


そして、車にエンジンがかかり、僕等はストリーブスホテルへと向かっていった。

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