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第四十話−二番目の計画−

「言っておくけど私、パーティーにはでられないから」


「ええっ、そんな……!」


僕はたいそう驚き、そしてパーティに出られない理由をジェシーに迫ったが、彼女は心ならない態度だった。


「何か用事でもあるの?」


「ええ。 確か、十二月二十四日でしょ? その日は、家族で出かける予定があるの」


まさか。

これで、僕がケビンから日記を取り返すめどは崩れ去った。

その前に、僕の思考がジェシーにバレていたことに驚いた。


「どうにか、都合をつけられないかな?」


「無理よ。 その日しか、家族で出かけられる日は無いもの」


すると、視線を落とした僕をみて、彼女は溜息をついた。


「ケビンだって、事情を説明すればわかってくれるわよ」


「そうかなァ……」


しかし、いつまでもうじうじしている僕に、流石のジェシーもいらだったらしく、さっきよりもひどいため息をつた。


「レンディ? 時にはやってみなきゃわからないことだって……」


「わかってる。 わかってるよ……けど……」


僕の中にある素直になれない心がジェシーの気遣いをはねつけようとする。

しかし、その数秒後に僕はあることに気づいた。

いままでは、ケビンにありとあらゆることを、行動で現さなきゃいけないと考えていた。 つまり真正面からぶつかるということだ。 さっきの言動が、そのいい例だと思う。

でも、ジェシーは、頭の悪いケンカごっこなんて、よく思わないのだろう。

だから、「ときには やってみなきゃいけないことだって……」といったんだ。


僕はジェシーに向き直った。


「わかった。 それなら、ためしてみるよ。 でも、ダメだったら……」


そう言いかけたとき、ジェシーが釘をさした。


「だめなんていうのは無し」


そして、僕のことをじっと見据える。


「そ、そうだね。 うん、きっとそうだ」


僕はその無言の圧力に屈して、答えを返さざる得なかった。

しかし、まだ心には思いとどまるものがある。

ジェシーの意見は一応、理解できたよ? でも、もしかしたらそんなことしても無駄なんじゃないかって……。

何せ、ケビンには口で勝ったためしがない。


***


やはり結果は、予想通りだった。


幾度となく、僕は ケビンに日記返してくれるようたのみ込んだが、その意見が通ることは一切なかった。 そして、とどめの一言にケビンはこう言った。


「お前みたいなやつがただで俺から物を譲り受けようだなんて十年早いんだよ!」


十年どころか、マイナスで引いてやるくらい、お前には早すぎるって話だ。

それは、あの日記はもともと僕のもの!


どうしても返してもらわなくちゃ。

そのためには……やっぱり。


受信メール001

      12月22日

宛先:little-vegney@abchotmail.com

件名:お願い!

―――――――――――

ケビンに日記をとられちゃった。

向こうは僕がカップルパーティとかいうもの

に出ないと、日記を返さないつもりらしい。

ジェシーが一緒に行くはずだったんだけど、

彼女は都合が悪くていけないみたいなんだ。


どうしよう!!


   -end-

―――――――――――


僕はメールの返事が待ちきれなかった。

二分おきに受信メールを確かめたが、一向にリトルからの返事が来ない。

気分転換に、好きな本を読んでいたら、丁度終盤に差し掛かった頃に、電話が鳴った。


「もしもし、レンディか?」


「うん! 僕だよ」


「メールはみたぞ。 お前の日記というものについて、少し聞かせてくれないか?」


リトルの口調は、若干焦っているようだった。


「わかった。 えーっと……、たぶん僕の父さんの日記だと思うんだ。 すごく不気味なんだよ。 真っ黒い表紙に、白い線で星がかかれていてね。 ケビンによると、魔術師か何か日記じゃないかっていうんだ」


「それは本当か?」


リトルが突然、大声で叫びだすので、僕は失笑した。


「ちょっとまってよ。 何も僕の父さんが魔術師だったなんていう証拠はない」


そう言いかけたところでリトルにさえぎられた。


「わかった。 もう良い。 まったく、お前はどうしてそんな大切なものを……!」


リトルはひどく嘆いている。


「学校に持っていったんだ……」


僕が申し訳なさそうな口調で答えると、今度はリトルがため息をついた。


「ああ……なんてことだ。 これは大変なことになったぞ」


「大変なことって?」


「フン。 お前な、それはお前の父さんなんかの日記じゃない。 話を聞く限りは」


え、どういうことだ?


「所詮お前は何も知らないだろうが、簡単に説明させてもらうと、それは魔王、ウィッカーゾルクの研究日記だ」


「魔王、ウッカーゾルク?」


僕は取って付けたように返事した。


「とりあえず、詳しい説明はあとだ。 今、いっぺんに話しても理解しきれないだろう。

 ところで、どうしてもそのケビンとかいうやつから日記を取り返せないのか?」


「う、うん……。 無理だと思う」


僕の思いつく答えは一つしかなかった。

しかし、リトルはあきらめず、僕に聞きつづけた。


「他に、付き添ってくれそうな女の子はいないのか?」


そんなものがいたら、今更……。

僕は、皮肉と落胆を交えて、こう言った。


「それがいたら、今更リトルなんから電話してないよ」


それを聞いて、とうとうリトルも煮詰まってしまったらしく、「ふうむ……」と言ったあと、何も言葉を返さなくなってしまった。


その後、僕たちはしばらく考え込んでいた。

ジェシー以外に、僕とパーティに出てくれそうな人がいるのか、またケビンから日記を取り返すにはどうしたらよいのか。

 二人とも思いつけばすぐに発言していったが、十分経っても、なかなかいい案は見つからなかった。


そして、次第に諦めのムードが漂ってきたとき、リトルが突然、こんなことを言い出した。


「私が、女になったらダメか?」

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