これまでのお話
僕はもともと普通か、それ以下の少年だ。
きっと何処にでもいるような、ネクラ系のさえない、コレといって特技も無い。
ただ、本を読むことは他の何よりも大好きだった。
しかし、これがネクラという肩書きをさらに強調するものなのだろう。
誕生日に本をたったの一冊でもプレゼントしてもらえれば、それで大満足だったし。
そんな僕は、あることを切欠に、魔術師になった。
その切欠というのは、単に、僕の携帯電話に見知らぬ男からのメールが届いたことだ。
僕がそのメールに勝手な好奇心を寄せた。 そして、そいつとやり取りをして出た結果がこれだ。 まったく、かたじけない。
魔術師になる儀式は、とんでも無いものだった。 これが現実の世界で起こったら、誘拐か、殺人未遂のどちらかに決まっている。
それにしても、僕のどこがどんな風に魔術師になったかなんてわからない。 僕の大好きな本に出てくる魔法使いキリマン・ジェーロの使っている呪文を、この前ベッドのなかで誰にも見つからないように、こっそりと試してみたけど、何もでてこなかった。
サンダー・クラッシュなんて技は繰り出せないし、箒で空を飛ぶこともできない。 (ご存知の通り、僕は魔法戦士・キリマン・ジェーロの大ファンだ)
しかも、あの日からというものの、妙にリアルな夢ばかりを見ている気がする。 一体、これはなんなのだろう?
現実世界と対して変わらない世界が、夢の中にもできはじめているらしい。
だから、朝目が覚めると、変な感覚になっているときがしょっちゅうある。
現実世界なのに、まだ夢の世界とつながっていそうな感じで、現実味が無い。
朝起きたとき、よくほおをつねってみたけど、痛いときでも、夢の世界だった、なんてときがしばしばあった。
だから、そのうち、今僕のいる世界が夢か現実か、わからなくなってしまうのでないか思うと、怖くてたまらなくなる。
それにしても、あの日、リトル・ビニーは、冬休みになったら、また会おうと言っていた。 また会うだなんて、ごめんだな。 僕をあれだけ怖い目に合わせておいて、お次は一体どんなことをされるんだろう?
でも、このことを相談しようとは思う。だって、僕を魔術師にした本人じゃないか。 最低限の責任はとってもらわなくちゃ。
それにしても、どうして彼は”冬休みはできるだけあけておけ”といったのか。 それが気になるところだ。
もしかしたら、冬休みに魔術の修行をするのかも!
でも、一体どんなことをするんだろう……?
気になるなァ。
そんなことを考えながら、僕は今日も学校へ行った。