表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

新しい世界

今日も彼は本を読む。

ヘタクソで、一生懸命で、想いに溢れた朗読を聞きながら、私は指先で打点をなぞっていく。

彼の声に瞼が重くなり始めた私は、本から指を離すと、すっと彼へと身体を預ける。


***


あの日、彼は病室に入るなり、いつものように謝罪の言葉を口にした。

慌てて帰ろうとする彼を呼び止めると、私は昨日の本を返し、彼に向けてひとつのお願いをした。


――貴方の言葉で聞かせてほしい――

暫く黙っていた彼が、自分の言葉でその想いを紡いでいく。

それは、いつもの朗読と同じような口調で。

私は嬉しさと可笑しさで、声を上げて笑ってしまった。


あれから、貴方はずっと側にいてくれたよね。

一緒に勉強しよう。そう言って点字を勧めてくれたのも貴方だった。

ふたりで学ぶのは楽しかったけれど、でも、私はもう大丈夫だったんだよ。

自分の側に、新しい世界を見つけていたから。


***


背中で彼を感じながら、膝の上で寝息を立てるあなたをそっと撫でる。

私達を繋いでくれた、あなた。

今は、私達の愛娘。


ふたつの温もりに包まれながら、私はゆっくりと瞼を閉じた。

『私の世界』もこれで完結です。

あえて前編・後編に分けたのは、二つの間で時間が経過していることを表したかったからです。

最後までお付き合い頂きまして、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ