伝説
「毎晩、『さみしい』と泣いてるのはお前かい?」
ある夜、またあの2本足の生き物が1匹近づいてきた。
噛んでやる。
走り寄って押し倒し左肩に噛み付く。
いつもの苦い味がする。
「私は人より少し耳が良くてね。
あまりにお前の声がうるさくて、夜寝れなくて困っている。」
いつもと違う。
いつもならこれで動かなくなるか、動けたらどこかに逃げるのに。
思わず、噛む力が弱くなる。
「『さみしい』なら、うちの子になりなさい。」
急に抱きしめられた。
「竜は1000年生きたら 人にもなれると伝説に聞く。
私のところに来なさい。
そして、選びなさい。
竜になるか・・・人になるか・・・。」
噛まれていない右の腕でわたしの背に回した。
「お前が寂しい夜は、一緒に寝てあげよう。
困ったら一緒に考えてあげよう。
涙を流せば拭ってやろう。
何時でも何処でも守ってあげよう。
どんな時でもお前の味方だ。
共に大きくなっていこう。
世界で一番お前が大好きだ。」
わたしの頬に自分の頬を当てて囁き続ける。
「私がお前のお母さんだ。」
もう、わたしの口は肩から離れた。
「そしてお前は、私の可愛い子供だ。」
わたしの目から涙がこぼれた。
とても温かい抱擁に包まれながら、私は気を失ってしまった。