東の森へ.2
「私? 行かないけど?」
ギルドの外。じゃ、行ってらっしゃいと言うリリに、急に何を言ってるんだと思いながら聞いてみたら、こんな返事が。
「なんで行かないんだ? 用事でもあるの?」
「私、虫って見るのも無理なのよね。今から森行くんでしょ? どうせうウジャウジャと居るんだから」
リリは明らかに嫌そうな顔を見せる。いやまぁ、女性なら虫が苦手なのも分からなくはないけどさ。
「それなら、上空から様子を見てくれるだけでもいいしさ」
「いーやーよ! そんなの、いつまで飛んでれば良いか分からないじゃない。ずっと飛んでるのって重労働なのよ? こないだの護衛でもう懲り懲りなんだから」
分かってんの? と言うリリ。実際飛んだことも無いから、俺には何とも言えない所だった。
「そんな訳だから。私がいなくてもライムがいるし、なんとでもなるでしょ。じゃあね」
リリは翼を広げ、そのままどこかへ飛んでいってしまった。住民の視線が集まっているが、お構いなしだったリリ。相変わらずだな、と思いつつそれでも前みたいに騒ぎは起こさないだろう、と安心している自分がいた。……起こさないよな?
「相変わらず、ですね」
アメルは呆れた様に言った。すぐにいつもの表情へ戻ったが、リリ相手だとアメルは素になっている気がする。ある種、心を許せているみたいだ。アプサラスは、リリが飛んでいった方をじっと見つめていた。何か思うことでもあるのかな?
「じゃあ、出鼻を挫かれる形になっちゃったけど、この面子で東の森へ向かおう」
「はい」
「もりー!」
こうして、俺を含めて四名で東の森へ向かうこととなった。
中央都市を出て、東の森はすぐに見えた。大樹が往々に根付いており、中でも奥の方に山のように見える、樹とは思えない程の巨大なモノが見える。見えるといっても一部だけで、上の方は霞んでいてよく分からない程。本当に樹なのか? あれ。
「あそこへ、向かうんですよね?」
見たことはあったが行ったことはない。アメルはそう言った。
「うん。俺もじいちゃんの言いつけ通り、行ったことは無いなぁ。獣はいるだろうけど、中央都市で表立って被害が話題に上がることは無かったし、油断しなければ大丈夫だと思うよ」
それでも、当時ちゃんとと言ってはなんだが、何名かは実際に行方不明になっていると聞く。気を引き締めないとな。
「分かりました。あ、あの、カイルさん」
「うん?」
「カイルさんのおじいさんって、どんな方なんですか?」
「じいちゃん? そうだなぁ……強いて言うなら、若い」
「若い?」
「うん。本当に老人なのかって思う位。会ったら驚くと思うよ」
それを聞いたアメルが、勢いよく俺に提案してきた。
「こ、今度連れて行ってくれませんか! 私、カイルさんのおじいさんとお話、してみたいです!」
「う、うん? じゃあ、行く時があれば一緒に行こうか」
ーー二年以上になるか、冒険者になると言って村を出てから、じいちゃんとは会ってない。それでも多分、ピンピンしてる。年齢を聞いたことはないが、あれは多分誤魔化してるに違いない。調子が悪いじいちゃんを上手く思い浮かべられない程だ。アメルに言われてから考えるのもどうかと思うけど、一度ちゃんと冒険してるよってのを伝えに行っても良いかもな。
俺が感慨にふけっていると、何故かアメルは拳を握ってよしっ! と気合いを入れていたし、肩にいるアプサラスはやりましたね、アメル様! と称賛を送っていた。じいちゃんと会えるのをそんなに喜んでくれるなんて、俺もなんだか気分が良くなった。




