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努力のやり方を間違えている世界で、成長効率チートを授かりました ~現代知識で最短成長、凡人が無双するまで~  作者: 天城ハルト
第1章 冒険者編

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第8話 想定外の魔物

ギルドに戻ると、空気が少しだけ違っていた。


掲示板の前に、人だかりができている。


「……何だ?」


レオンが首を伸ばす。


近くにいた冒険者の話し声が聞こえた。


「低層で負傷者が出たらしい」

「Eランク向けのダンジョンだぞ?」


「魔物の種類が、違ったって話だ」


俺は、足を止めた。


――来たな。


受付で詳細を聞く。


「今日、別のEランクパーティが同じダンジョンに入りました」

「帰ってきたのは、二人だけです」


受付の女性は、淡々とした口調で言った。


「原因は、想定外の魔物」

「群れで動くタイプだったそうです」


鎧の男が、舌打ちした。


「……俺たちが出くわしたのと、同じか」


「見た目は、低級」

「ですが、知能が高かったようで」


俺は、静かに頷く。


「……入口付近で、数を減らす」

「追撃をさせる」


「完全に、罠だな」


弓の青年が低く言う。


「ええ」


そして――

それに引っかかるのが、普通のEランクだ。


宿に戻り、情報を整理する。


「俺たちが逃げたのは、正解だったんだな」


レオンが、ほっとしたように言う。


「ええ」

「ただし――」


俺は、地面に簡単な図を描いた。


「次は、同じ場所で同じことが起きます」


全員が、息を呑む。


「魔物は、学習している」

「一度、餌を逃がしたからです」


魔法使いの少女が、不安そうに聞く。


「……じゃあ」

「次は、もっと危険ですか?」


「はい」


即答する。


「想定を変えないと、死にます」


鎧の男が、腕を組む。


「突っ込めば、囲まれる」


「ええ」


「逃げれば、背中を取られる」


「その通りです」


弓の青年が、ゆっくりと息を吐いた。


「……普通なら、詰んでるな」


「だから、準備を変えます」


俺は言った。


「戦いません」


沈黙。


「……は?」


レオンが、間抜けな声を出す。


「倒さないのか?」


「正面からは、倒しません」


地面の図に、線を足す。


「入口付近で戦ったのが、間違いでした」

「次は、魔物の“動き”を使います」


「誘導か?」


「はい」


鎧の男が、ニヤリと笑う。


「それなら、前に出る意味があるな」


「出すぎなければ」


「……分かってる」


翌日。


再び、ダンジョンへ向かう。


だが、昨日とは違う。


・入る前に、退路を三つ確認

・魔法は、撃つ場所を限定

・弓は、足止め優先

・前衛は、倒さず押す

・レオンは、囮役


「……俺、囮か」


レオンが苦笑する。


「一番、引き際を覚えたので」


「……褒めてる?」


「ええ」


魔物は、やはり現れた。


数は、五。

昨日と同じ。


「来ます」


「予定通り」


レオンが、わざと音を立てて前に出る。


「こっちだ!」


魔物たちが、一斉に反応する。


「……本当に、追ってくるな」


弓が放たれる。


狙いは、足。


魔物の動きが鈍る。


「今、押す」


前衛が前に出る。


倒さない。

弾く。

押し返す。


魔法は、通路を塞ぐように撃たれた。


「……あっ」


少女が息を呑む。


だが、詠唱は乱れない。


魔物たちは、動きを制限され、

自然と――分断された。


「……これ」


弓の青年が呟く。


「戦ってないのに、楽だぞ」


「想定通りです」


俺は答える。


数分後。


魔物たちは、撤退した。


こちらに、傷はない。


「……勝った、のか?」


レオンが、信じられない顔をする。


「追い払っただけです」


「それでいい」


鎧の男が、はっきりと言った。


「生きてる」


魔法使いの少女は、深く息を吐いた。


「……私」

「初めて、魔法が怖くなかったです」


ダンジョンを出る。


昨日よりも、疲労は少ない。


俺は、内心で確認する。


成長補正のおかげで、

同じ動きをしても、体の消耗が減っている。


だが、それ以上に――


「想定を変えた」


それが、結果を分けた。


帰り道。


レオンが、ぽつりと呟く。


「なあ」

「俺たち、普通のEランクじゃないよな」


「ええ」


即答する。


「だから、気をつけてください」


「……何に?」


「噂になります」


全員が、顔を見合わせた。


問題児だらけの即席パーティ。


だが――

“おかしな勝ち方をする”パーティとして。


それは、

良くも悪くも、目立つ兆しだった。

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