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努力のやり方を間違えている世界で、成長効率チートを授かりました ~現代知識で最短成長、凡人が無双するまで~  作者: 天城ハルト
第3章 騎士候補編

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第30話 選ばれる理由

王都・騎士団本部。


白い石造りの会議室には、

五名の人影があった。


階級章も、立場も、揃っていない。

だが共通点が一つある。


全員が、現場を知る者だ。


「……報告は以上です」


水晶板の映像が消える。


未開発区域。

特別研修。

そして――一人の少年。


「アレン・フィルド」


誰かが、名を口にした。


「数値は?」


年配の男が尋ねる。


「突出していません」


即答。


「魔力量、身体能力、剣技」

「どれも“上”ではない」


「つまり?」


「単体戦力としては、平凡です」


空気が、わずかに緩む。


だが――


「では、なぜここにいる?」


今度は、別の声。


鋭い。

感情を削ぎ落とした声。


「なぜ」

「特別研修の中心に据えた?」


答えたのは、

第三部隊長グラハムだった。


「理由は、三つある」


全員の視線が集まる。


「一つ」


グラハムは、水晶板を再起動させた。


映し出されたのは、

研修初日の戦闘記録。


「想定外発生率」


数値が浮かぶ。


「平均、初動混乱時間」

「通常は、三十秒以上」


「彼の班は?」


「……七秒」


誰かが、息を呑む。


「二つ」


映像が切り替わる。


複数回の戦闘ログ。


「彼は」

「一度も“最善”を選んでいない」


沈黙。


「……どういう意味だ?」


「常に」

「“最悪を回避する選択”をしている」


「勝つためではない」

「生き残るための判断だ」


「三つ目」


ここで、グラハムは一拍置いた。


「周囲が、自然に従っている」


別の映像。


誰も命令されていない。

だが、動きが揃う。


「彼は」

「指揮官を“演じていない”」


「……役割が、流れている」


誰かが、そう呟いた。


「結論を言おう」


グラハムは、はっきり言った。


「彼は」

「英雄ではない」


「最強でもない」


一拍。


「だが――」


「戦場を壊さない」


「国家が欲しいのは」

「前に出る剣ではない」


「崩れない判断基準だ」


別の人物が、腕を組む。


「……つまり」

「“使える”のか?」


グラハムは、首を振った。


「違う」


「使えない」


一瞬の沈黙。


「彼は」

「命令で動くタイプじゃない」


「だが――」


視線が、鋭くなる。


「選択肢を渡せば、必ず考える」


「そして」

「考え抜いた判断を、引き受ける」


「……面倒な人材だな」


「ええ」


グラハムは、認めた。


「だが」

「国家が最も必要とするタイプです」


その場にいた女性が、静かに言った。


「段階を、上げましょう」


「観察は、終わり」


「次は?」


「試す段階です」


決定が下される。


評価段階:第二段階へ移行

対象:アレン・フィルド

方針:直接拘束なし

条件:選択肢のみを提示


「……ずいぶん、回りくどい」


「だからこそです」


「彼は」

「檻に入れた瞬間、価値を失う」


同時刻。


未開発区域・野営地。


アレンは、焚き火を見つめていた。


(……見られている)


理由は、分からない。


だが。


(段階が、一つ上がった)


成長効率補正スキルが、

静かに告げている。


数値ではない。

経験でもない。


世界の“距離”が、縮んだと。


その夜。


リィナが、ぽつりと言った。


「……ねえ」


「はい」


「アレンって」

「どこまで行くの?」


アレンは、少し考えた。


「……分かりません」


正直だった。


「でも」


焚き火の向こうを見る。


「選ばれる理由があるなら」


「それを、理解したい」


王都。


会議室を出たグラハムが、独り言のように呟く。


「……まだ、入口だ」


「だが」

「ここからは、国家の物語になる」


選ばれる理由。


それは、

強さではない。


速さでもない。


壊さずに、前へ進めること。


国家は、

それを最も高く評価した。

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