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努力のやり方を間違えている世界で、成長効率チートを授かりました ~現代知識で最短成長、凡人が無双するまで~  作者: 天城ハルト
第1章 冒険者編

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第3話 最下位ランクスタート

Eランク。


冒険者ギルドの中で、

それはほとんど「始まる前に終わった札」みたいな扱いだった。


「……またEか」

「すぐ消えるな、あれ」


誰かの声が聞こえた気がしたが、

俺は気にしない。


気にする価値がない。


掲示板の前に立つと、

Eランク向けの依頼が並んでいる。


薬草採取。

街道の見回り。

低級魔物の間引き。


派手さはない。

危険度も低い。

だが――


「回数は、こなせるな」


それが重要だった。


最初の依頼は、薬草採取。


街の外れにある小さな丘陵地帯で、

指定された薬草を一定数集めるだけの仕事だ。


「……楽な仕事だな」


一緒に組んだ若者――仮にレオンとしておく――が言う。


「Eランクらしいな」


「ええ」


俺は頷きながら、足元を見た。


地面は柔らかい。

草は踏み荒らされていない。

視界も悪くない。


「走らなくていい」

「一定の速度で行きましょう」


「は?」

「早く終わらせた方が――」


「転ぶと、全部無駄になります」


そう言うと、レオンは渋々歩調を落とした。


結果として。


時間は、予定より少しかかった。

だが、疲労はほとんどない。


「……あれ?」

「思ったより、楽だな」


「無理してないからです」


俺は淡々と答える。


実際、俺自身も驚いていた。


――体が、よく動く。


走っているわけじゃない。

特別なこともしていない。


ただ、

「昨日と同じ動き」が、少し楽になっている。


「……これか」


成長補正。


努力した分が、無駄になりにくい。

ほんのわずかだが、確実な差。


派手じゃない。

だが、積み重ねると厄介なやつだ。


次の依頼は、街道の見回りだった。


盗賊も魔物も、ほぼ出ない区間。

正直、退屈だ。


「暇だな」

「意味あるのか、これ」


レオンが欠伸をする。


「あります」


俺は、道端を指差した。


「ここ、草が倒れてます」

「昨日までは、なかった」


「……だから?」


「人が通ってます」

「数は少ないですが、定期的です」


レオンが目を凝らす。


「……言われてみれば」


報告書に、そのまま書く。


数日後、ギルドから言われた。


「……よく気づきましたね」

「早めに対応できました」


評価は、ほんのわずか。

だが、確実に記録に残る。


その夜。


「……なあ」

「俺さ」


宿の部屋で、レオンが言った。


「前より、疲れてない」


「当然です」


「なのに、依頼は全部終わってる」


「無理してないからです」


レオンは、首を傾げる。


「普通、逆じゃないか?」


「普通は、そうですね」


俺は、内心で息を吐いた。


俺も、普通じゃない。


同じ距離を歩き、

同じ作業をしているはずなのに、

体の覚えが、明らかに早い。


筋肉痛が残らない。

呼吸が乱れにくい。

翌日、同じ動きが自然にできる。


「……これが、積み上がると」


考えただけで、面倒だ。


数日が過ぎる。


Eランクの冒険者は、次々に消えていった。


「稼げねぇ」

「割に合わねぇ」


そう言って、去っていく。


一方で。


「……あれ?」

「俺たち、まだ続いてるな」


レオンが、ぽつりと呟いた。


「ええ」


「しかも、前より楽だ」


「慣れただけです」


そう言いながら、

俺は確信していた。


慣れ方が、違う。


同じことを繰り返しているだけなのに、

俺の体は、確実に最適化されている。


――凡人のまま、だが。


数値で測れば、まだEランク。

剣も魔法も、相変わらず平凡。


それでも。


「……次、行けそうだな」


掲示板の端に貼られた一枚を見る。


《即席パーティ可・討伐依頼》


難易度は、Eランク上限。


レオンが、息を呑んだ。


「……大丈夫か?」


「分かりません」


正直に答える。


「でも」

「無理をしなければ、死にません」


レオンは、少し迷い――

やがて、頷いた。


「……頼む」


最下位ランク。

凡人のまま。


だが、確実に――

昨日より、今日の方が楽だ。


それが、何より厄介な差だった。

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