第22話 騎士候補編入試験
騎士候補科の訓練場は、
学園本部から一段高い場所にあった。
建物も、空気も、
これまでとは違う。
「……空気が重い」
ログスが、低く呟く。
「ええ」
アレンも、同意した。
「ここは」
「才能を選別する場所です」
集められた受験者は、二十名。
そのほとんどが――
Aクラス、Bクラスの上位者。
「……場違いじゃない?」
小声で囁かれる。
「Eクラスが、混じってるぞ」
「噂のやつか?」
「でも、数値は最下位だろ?」
視線が、刺さる。
その中で。
一人の女性が、静かに立っていた。
長い黒髪。
引き締まった姿勢。
剣を携え、無駄がない。
セシリア・フォン・アルトヴァイン
学園公認の天才騎士候補。
彼女は、
アレンを見ると、わずかに目を細めた。
(……やっぱり、来た)
教官が、前に出る。
「これより」
「騎士候補科・特別編入試験を行う」
「内容は三つ」
一:基礎適性
二:模擬戦
三:実戦判断
「評価は、総合判断だ」
ざわめきが起こる。
「数値だけじゃない?」
「……嫌な予感だな」
最初の試験――基礎適性。
魔力。
筋力。
反応速度。
結果。
アレンは――
最下位。
会場が、ざわつく。
「やっぱりか」
「偶然だったんだろ」
当て馬が、前に出た。
ヴェイン・クロスフォード
名門出身。
実技首席。
露骨な優越感。
「……なあ」
アレンに、わざと聞こえる声。
「ここは、遊び場じゃない」
「実力がないなら」
「下がっていろ」
ドヤ顔。
完璧な前振り。
第二試験――模擬戦。
組み合わせは、
ヴェイン vs アレン。
観客席が、沸く。
「出来レースだ」
「瞬殺だろ」
ヴェインは、剣を構えながら笑った。
「安心しろ」
「三手で終わらせてやる」
アレンは、何も言わない。
開始。
ヴェインの剣は、速い。
鋭い。
正しい。
「ほら、避けろよ!」
一撃。
二撃。
だが――
当たらない。
「……?」
三手目が、出ない。
(間合いが……)
ヴェインは、気づいた時には遅かった。
アレンは、攻撃しない。
ただ――
位置を奪っている。
「……っ!」
体勢が崩れる。
教官の声。
「そこまで」
沈黙。
「……勝者」
一拍。
「アレン・フィルド」
ざわっ。
「え?」
「攻撃、してないぞ?」
教官は、淡々と言った。
「戦闘不能判定だ」
「剣を振れない位置に追い込まれている」
ヴェインの顔が、引きつる。
「……馬鹿な」
第三試験――実戦判断。
想定状況は、
「護衛中の撤退判断」。
多くの受験者が、
“前進”を選んだ。
セシリアも、前に出る。
だが。
アレンは、
即時撤退を選択。
「……臆病だな」
誰かが、呟く。
教官は、何も言わない。
結果発表。
生存率・被害想定・成功率。
最も評価が高かったのは――
アレン・フィルド。
沈黙。
「……理解できない」
ヴェインが、吐き捨てる。
「数値最下位が」
「なぜ……」
セシリアが、静かに言った。
「……戦場は」
「強い人が勝つ場所じゃない」
彼女は、アレンを見る。
「生き残る人が、勝つ場所」
視線が、交わる。
教官が、告げた。
「以上をもって」
「騎士候補科・特別編入を認める」
「アレン・フィルド」
「及び――」
一拍。
「Eクラス、全員」
ざわめきが、爆発した。
こうして。
最下位クラスは、
国家戦力候補へと引き上げられた。
だが。
これは、始まりにすぎない。




