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努力のやり方を間違えている世界で、成長効率チートを授かりました ~現代知識で最短成長、凡人が無双するまで~  作者: 天城ハルト
第2章 学園編

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第19話 理解できない存在

Aクラスの訓練場は、

いつもより静かだった。


演習が終わってから、

セシリア・フォン・アルトヴァインは

一度も剣を振っていない。


「……セシリア?」


同級生が声をかけても、

彼女は反応しなかった。


(引き分け)


結果だけを見れば、そうだ。


だが、

あの場にいた者なら分かる。


主導権は、完全に奪われていた。


(なぜ……?)


自分は、いつも通りだった。


剣速。

判断。

踏み込み。


どれも、完璧。


なのに――

「勝てる形」に、入れなかった。


一方、Eクラス。


昼休みの教室は、

妙に落ち着いていた。


「……なあ」


ログスが、ぽつりと呟く。


「昨日のやつ」

「俺、何もしてねぇのに生きてた」


ミーナが、小さく笑う。


「……私も」

「暴発しなかった」


ハルドは、ノートを見つめたまま言う。


「……理論通りだった」

「でも、俺の理論じゃない」


全員の視線が、

自然とアレンに集まる。


「次は、どうする?」


誰かが聞いた。


「次は――」


アレンは、首を振る。


「ありません」


「……は?」


「ここから先は」

「相手が動きます」


その頃。


教官会議室。


数名の教官が、

重い空気の中で向かい合っていた。


「Eクラスの件だ」


主任教官が、口を開く。


「これ以上、自由にさせるべきではない」


「賛成だ」


別の教官が、頷く。


「数値最下位が、戦場を支配するなど」

「学園の理念に反する」


「だが、排除すれば問題になる」


主任教官は、視線を落とす。


「……ならば」


一人の教官が、静かに言った。


「公式な形で潰す」


その案は、すぐに決まった。


・Eクラス vs 特別選抜チーム

・指揮権は相手側

・条件は公開

・結果は、全校掲示


「負ければ――」


「Eクラスの解体も、視野に入る」


「アレン・フィルドの」

「“危険性”も、証明できる」


誰も、反対しなかった。


夕方。


中庭で、アレンは

エルナに呼び止められた。


「……狙われてるわね」


「ええ」


否定しない。


「理由は?」


「理解できないからです」


エルナは、息を吐いた。


「あなた」

「“説明できない正解”なのよ」


「それは――」


「最も、嫌われる」


アレンは、少し考えた。


「なら」

「説明するしかありませんね」


エルナは、苦笑した。


「それが、一番無理」


同じ頃。


セシリアは、

一人、夜の訓練場に立っていた。


月明かりの下、

何度も剣を振る。


完璧な軌道。


――なのに。


(また……遅れる)


脳裏に浮かぶ声。


「完璧な人が、完璧であろうとすると」


彼女は、剣を止めた。


「……私は」


自分が、初めて分からなくなっている。


勝てない相手ではない。

だが、

同じ土俵にすら立てていない。


その事実が、

何よりも、恐ろしかった。


翌朝。


学園内に、告知が貼り出される。


【公式特別演習】

Eクラス vs 特別選抜チーム


指揮権:特別選抜側

観戦:全校可


ざわめきが、爆発した。


「公開処刑じゃねぇか」

「Eクラス終わったな」


フィオナは、掲示を見て拳を握る。


「……やり方、汚くない?」


エルナは、静かに言った。


「ええ」

「だからこそ、本気」


Eクラスに、

告知が伝えられる。


ログスが、歯を食いしばった。


「……完全に、潰しに来てるな」


ミーナは、震える声で言う。


「……負けたら、どうなるの?」


アレンは、全員を見る。


「負けません」


即答だった。


「勝ちます」


「……どうやって?」


一拍。


「説明できる形で」


理解できない存在。


それは、

排除される。


だから――

次は、

**誰にでも分かる“勝ち”**を見せる。


それが、

この学園への答えだった。

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