表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
努力のやり方を間違えている世界で、成長効率チートを授かりました ~現代知識で最短成長、凡人が無双するまで~  作者: 天城ハルト
第2章 学園編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/23

第18話 Aクラス代表

訓練場に、異様な緊張が漂っていた。


見学席には、

Aクラス、Bクラス、教官たち。

いつもより、明らかに多い。


理由は一つ。


Eクラスが、Aクラスと演習を行う。


それ自体が、異例だった。


「……正気か?」


ログスが、低く呟く。


「Aクラスだぞ」

「首席候補がいる」


「ええ」


アレンは、いつも通りだった。


「だから、今日の目的は」

「勝敗ではありません」


「……は?」


「確認です」


Aクラス側が、前に出る。


その中心にいるのは――

セシリア・フォン・アルトヴァイン。


銀髪が、風に揺れる。

立ち姿だけで、周囲を圧する。


「……あの人か」


ミーナが、息を呑む。


「Aクラス代表」

「当然ね」


エルナが、冷静に分析する。


「全員が、彼女を基準に動いている」


教官が、演習内容を告げる。


「五対五」

「戦闘不能判定が出た時点で脱落」

「勝敗が決するまで続行」


ざわめきが起こる。


「Eクラス、即終わりだろ」

「何分もつか、だな」


そんな声が、隠れない。


配置につく直前。


セシリアが、アレンを見る。


「……あなたが指揮?」


「はい」


「理解できないわね」


彼女は、はっきり言った。


「数値最下位が、何を判断するの?」


アレンは、少し考えてから答えた。


「数値では」

「分からない部分です」


一瞬。


セシリアの目が、細くなる。


演習開始。


Aクラスは、速かった。


無駄がない。

連携が完成されている。


「来るぞ!」


ログスが、歯を食いしばる。


「下がらないでください」


アレンの声。


「……っ!」


Eクラスは、後退しない。


正面から、受ける。


一瞬で、圧がかかる。


「……耐えてる?」


見学席のフィオナが、目を丸くする。


「いや」

「耐えてない」


エルナが、即座に否定した。


「押し返されてる」


Aクラスの前衛が、

わずかに体勢を崩す。


「……今?」


セシリアが、違和感に気づく。


その瞬間。


「右、二歩」


アレンの声。


ログスが、横にずれる。


「ミーナ、今は撃たない」


「……了解!」


Aクラスの連携が、

噛み合わない。


「何をしている!」


セシリアが、声を張る。


彼女自身は、完璧だ。


だが――

周囲が、彼女についていけていない。


「……指示が、早すぎる?」


一人のAクラス生徒が、焦る。


「違う」


エルナが、見学席で呟いた。


「相手の“選択肢”を消している」


数分後。


Eクラスに、脱落者はいない。


Aクラスに、

一名、戦闘不能判定。


ざわっ、と空気が揺れる。


「……Eクラスが、先に?」


「嘘だろ……」


セシリアは、歯を食いしばった。


「……私が前に出る」


剣を構え、一歩踏み込む。


瞬間。


アレンが、静かに言った。


「来ます」


「当たり前よ!」


剣が、閃く。


だが。


「……っ!」


セシリアは、止まった。


彼女の前にいるEクラス生徒は、

誰も倒せない位置にいた。


「……邪魔?」


「いいえ」


アレンが、答える。


「最適です」


教官の笛が鳴る。


「そこまで!」


時間切れ。


結果は――引き分け。


だが。


空気は、完全に変わっていた。


「……Eクラス」


主任教官が、低く呟く。


「いや」

「一人だ」


視線が、アレンに集まる。


演習後。


セシリアは、剣を納めた。


そして、アレンを見る。


「……あなた」


「はい」


「私が前に出ると」

「必ず、全体が遅れる」


「ええ」


「……なぜ?」


アレンは、少し考えた。


「完璧な人が」

「完璧であろうとすると」


一拍。


「周囲が、追いつけなくなります」


沈黙。


それは、

セシリア自身が、

ずっと無視してきた事実だった。


その夜。


フィオナは、興奮気味だった。


「ねぇ!」

「あれ、めっちゃ面白くない!?」


エルナは、静かに言う。


「……ええ」

「学園の“正解”が、壊れた」


リリアは、胸に手を当てていた。


(やっぱり……)


(この人は)


(前に立つ人じゃない)


(でも――)


(誰よりも、前を見ている)


最下位と首席候補。


交わるはずのなかった二人が、

同じ戦場に立った。


そして――

勝敗よりも重いものを残した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ