第15話 Eクラスという隔離区画
Eクラスの教室は、
学園の敷地でもっとも端にあった。
他の教室から、少し離れている。
通路の照明も、どこか暗い。
「……本当に、ここだけ別世界だな」
アレンは、静かに呟いた。
教室に入ると、すでに数名が座っていた。
視線が、一斉に向けられる。
だが、そこにあるのは
嘲笑でも、敵意でもない。
警戒だ。
Eクラスの生徒は、全部で十一名。
共通点は――
**“どこか壊れている”**こと。
Eクラス主要メンバー(初登場)
◆ ログス
大柄な剣士
筋力は高いが、命令を一切聞かない
過去に教官へ暴言 → Eクラス送り
「……お前も、隔離か?」
低い声で、そう言った。
◆ ミーナ
魔力過多の魔法使い
詠唱すると暴発率が高い
実技試験で訓練場を半壊させた前科あり
「近づかないで」
「……勝手に燃えるから」
◆ ハルド
理論派
戦術座学は満点
実戦になると完全にフリーズする
「机上では、勝てるんだが……」
◆ ユリス
元貴族
態度が悪い
何度も規律違反を繰り返し降格
「Eクラス?
まあ、妥当だな」
誰も、仲良くなる気がない。
全員が、一人でいることを選んでいる。
アレンは、空いている席に座った。
しばらくして、教官が入ってくる。
担当は、教官代理ハロルド。
「……Eクラスか」
それだけで、
やる気のなさが伝わる。
「いいか」
「ここは再教育施設じゃない」
「問題を起こさず」
「卒業できれば、それでいい」
誰も、返事をしなかった。
最初の授業は、基礎連携訓練。
だが――
連携する相手がいない。
「二人一組で組め」
沈黙。
誰も、動かない。
「……やれ」
教官の声が、低くなる。
仕方なく、組まれる。
だが、開始一分で崩壊した。
ログスは、合図を待たず突っ込む
ミーナは、詠唱を止められない
ハルドは、動けない
ユリスは、命令を無視する
「止まれ!」
教官が、声を荒げる。
「……ひどすぎる」
その光景を、
遠くの訓練場から見ている者たちがいた。
Bクラスのフィオナ。
補助科Aクラスのエルナ。
「あれが……Eクラス?」
フィオナが、目を丸くする。
「ええ」
「才能じゃなく、“危険度”で集められた」
エルナの視線は、
ただ一人――アレンを追っていた。
「……一人だけ」
「動きが違う」
訓練後。
教室は、最悪の空気だった。
「だから無理なんだよ」
「連携なんて幻想だ」
「一人でやったほうがマシだ」
その中で、
アレンが立ち上がる。
「一つ、提案があります」
全員が、睨む。
「次は」
「誰も前に出ないでください」
「……は?」
「全員、半歩下がる配置にします」
ログスが、鼻で笑う。
「腰抜けか?」
「いいえ」
アレンは、静かに答えた。
「事故を防ぐだけです」
教官ハロルドが、腕を組む。
「……やらせてみろ」
再開。
結果。
不思議なほど、崩れなかった。
誰も、突出しない。
誰も、暴発しない。
「……動いてないのに」
「形になってる……?」
ミーナが、呟く。
ログスが、眉をひそめた。
「……チッ」
教官は、何も言わなかった。
だが、報告書にはこう記した。
「Eクラスに
ただ一人、
危険を減らす存在がいる」
その夜。
アレンは、寮のベッドに腰を下ろす。
(ここは――)
(想像以上に、壊れている)
だが。
だからこそ。
成長補正を積み上げるには、最適な場所だった。




