第14話 最悪のクラス分け
王立士官学園の講堂は、静まり返っていた。
数百名の新入生が、整列している。
その中央に立つのは、白髪の老教官。
「――これより、クラス分けを行う」
淡々とした声が、空間を切る。
「我が学園では、能力測定の結果を基準とし」
「適性・将来性・血統を加味して配置を決定する」
(血統も入るんだ……)
レオンが、ひそひそと呟いた。
「露骨ですね」
アレンは、平然としている。
最初に呼ばれたのは、上位者たちだった。
「セシリア・フォン・アルトヴァイン」
「第一戦闘科・Aクラス」
ざわっ、と空気が揺れる。
銀髪の少女が、一歩前へ出る。
背筋が伸び、
視線は真っ直ぐ。
「首席候補だ」
「やっぱりな」
周囲の声を、気にも留めず、
セシリアは指定席へ向かった。
その途中、
一瞬だけアレンのほうを見る。
――無表情。
だが、どこか“測る目”。
「フィオナ・ルーク」
「第一戦闘科・Bクラス」
「よっしゃ!」
赤髪の少女が、拳を握りしめる。
「Bかぁ! ま、いっか!」
「上行くのはこれからだし!」
場の空気が、一気に軽くなる。
(……明るい)
リリアは、少し驚いたように見ていた。
「エルナ・グレイ」
「戦術補助科・Aクラス」
眼鏡をかけた少女が、静かに前に出る。
「……妥当ですね」
そう呟きながら、
彼女は一度だけアレンを見た。
(この人、見てる……)
リリアは、なぜかそう感じた。
続いて、仲間たち。
「ガルド・バルハルト」
「第一戦闘科・Bクラス」
「悪くねぇ」
ガルドは、満足そうに頷く。
「カイン・レイヴァス」
「第二戦闘科・Bクラス」
「……想定内だ」
短く答え、列を離れる。
「レオン・クラウス」
「第一戦闘科・Cクラス」
一瞬、ざわつく。
「C?」
「平民にしては上だぞ」
レオン自身が、目を丸くした。
「……俺?」
「Cでいいのか?」
「安定性を評価した」
教官は、それだけ告げた。
レオンは、ちらりとアレンを見る。
(あんたのおかげだろ、これ)
そう言いたげだった。
そして。
講堂が、妙に静かになる。
「アレン・フィルド」
全員の視線が、集まる。
「――第一戦闘科・Eクラス」
一拍。
そして、失笑。
「最下位だ」
「当然だな」
Eクラス。
名目上は「育成枠」。
実態は――落ちこぼれ隔離区画。
アレンは、何の反応も示さない。
「……え?」
フィオナが、小さく声を漏らした。
「一緒じゃないの?」
エルナは、眉をひそめる。
「……極端ね」
セシリアは、
一瞬だけ目を伏せた。
(やはり、最下位……)
だが、
なぜか胸に残る違和感は消えなかった。
Eクラスの席は、端だった。
人数も少ない。
設備も古い。
「……露骨だな」
ガルドが、低く言う。
「分かりやすいですね」
アレンは、静かに頷く。
「ここは」
「問題が起きる前提のクラスです」
「前提?」
レオンが、首をかしげる。
「はい」
アレンは、黒板を見る。
「だから」
「何が起きても、想定内です」
その言葉を、
数人の生徒が、怪訝そうに聞いていた。
――Eクラスには、
他にも“問題児”が集められている。
講堂を出るとき。
フィオナが、振り返って叫んだ。
「ねぇ!」
「後で話そうよ!」
エルナは、静かにメモを取っている。
(Eクラス……興味深い)
セシリアは、歩きながら考えていた。
(最下位なのに、
なぜ――彼は平然としている?)
リリアは、アレンの背中を見つめていた。
不安は、ある。
でも――
(大丈夫)
根拠はないのに、
そう思えた。
こうして。
天才、秀才、脳筋、理論派。
そして――最下位。
全てが揃った学園生活が、始まる。
しかも、
一番危険なのは――
Eクラスにいる凡人だった。




