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努力のやり方を間違えている世界で、成長効率チートを授かりました ~現代知識で最短成長、凡人が無双するまで~  作者: 天城ハルト
第1章 冒険者編

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第10話 格上討伐(Eランクの枠を壊す)

ギルドの空気が、明らかに変わっていた。


ざわつき。

視線。

ひそひそとした声。


「……見られてるな」


レオンが、落ち着かない様子で呟く。


「ええ」


俺は否定しない。


「隠しきれませんでした」


昨日のダンジョン攻略は、派手すぎた。

低層とはいえ、完全制圧。

しかも、無傷。


Eランクでは、あり得ない。


受付の女性が、俺たちを見る。


一瞬、迷うような表情をしてから、声をかけてきた。


「……少し、よろしいですか」


嫌な予感はしない。


むしろ――

来るべきものが来た、という感じだ。


「こちらの依頼を」


差し出された依頼書を見て、

鎧の男が眉を跳ね上げた。


「……Cランク?」


「正確には、B寄りのCです」


周囲が、どよめく。


「Eランクに回す依頼じゃねぇぞ」

「死なせる気か?」


受付の女性は、静かに言った。


「本来は、回しません」

「ですが……」


視線が、俺たちに向く。


「“試す価値がある”と判断されました」


依頼内容は、単純だ。


・魔物は単体

・だが、体格は大型

・過去にCランクパーティが撤退


「……正気か?」


レオンが、俺を見る。


「撤退条件は?」


「変えません」


即答する。


「ただし」

「今回は、逃げません」


全員が、息を呑んだ。


「……本気か」


鎧の男が、低く言う。


「ええ」


凡人のまま、

だが――ここは行く。


戦場は、渓谷だった。


逃げ場は少ない。

だが、視界は開けている。


「来ます」


岩陰から、

巨体の魔物が姿を現す。


「……でかっ!」


レオンが、思わず叫ぶ。


「前衛、正面固定」

「レオン、側面」

「弓、目を狙う」

「魔法――」


少女を見る。


「好きに撃ってください」


彼女は、一瞬だけ驚き――

強く頷いた。


戦闘が始まる。


魔物の一撃が、地面を砕く。


「……くそっ!」


鎧の男が、踏みとどまる。


「止まってます!」

「そのまま!」


弓が放たれる。


魔物の動きが、一瞬鈍る。


「今だ!」


魔法が、炸裂する。


派手な光。

爆音。


「……こんな魔法、撃てたのか?」


レオンが叫ぶ。


――撃てたんじゃない。

撃ち切れた。


成長補正と、

恐怖を越えた経験。


それが、合わさっただけだ。


「押せ!」


今度は、退かない。


配置が崩れない。

役割が、噛み合っている。


魔物が、膝をつく。


「……倒せる!」


レオンが、叫びながら斬りかかる。


「今です!」


最後の一撃。


巨体が、地響きを立てて崩れ落ちた。


静寂。


誰も、すぐには声を出せなかった。


「……なあ」


鎧の男が、笑った。


「俺たち、Eランクだよな?」


「ええ」


「なのに、Cを倒した」


弓の青年が、静かに言う。


「……格が、壊れてる」


魔法使いの少女は、震える声で言った。


「……私」

「強く、なってます」


俺は、首を横に振る。


「いいえ」


「正しく、使えただけです」


ギルドに戻る。


報告を聞いた職員が、言葉を失う。


「……確認を取ります」


それから、しばらくして。


「依頼完了」

「……特例扱いとします」


周囲が、完全に静まり返った。


「Eランクのまま?」

「いや……」


視線が、俺たちに集まる。


もう、無視はできない。


宿へ戻る道。


レオンが、笑いながら言った。


「なあ」

「俺、冒険者になってよかったかもしれない」


「ええ」


鎧の男が、拳を鳴らす。


「次は、もっとでかいのをやろうぜ」


弓の青年は、短く言った。


「……面白くなってきた」


魔法使いの少女は、はっきり言った。


「……次も、行きたいです」


俺は、空を見上げる。


――ここからだ。


このパーティは、

もう“偶然勝った”とは言われない。


無双は、始まったばかりだ。

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