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努力のやり方を間違えている世界で、成長効率チートを授かりました ~現代知識で最短成長、凡人が無双するまで~  作者: 天城ハルト
第1章 冒険者編

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第1話 凡人として、冒険者ギルドへ

この世界に来てから、俺は一度も「選ばれた」と感じたことがない。


異世界転生。

それ自体は、確かに特別な出来事だった。


死んだはずの俺は、気づけばこの世界に立っていて、

名も知らぬ神に「一つだけ恩恵を与える」と言われた。


与えられたのは、

剣の才能でも、魔法の資質でもない。


ただの――成長効率補正。


努力した分が、少しだけ無駄にならない。

それだけの、地味な能力だった。


派手な力はない。

数値で測れば、今でも平均以下だ。


だから俺は、今日も凡人として歩いている。



冒険者ギルドの扉を開けた瞬間、空気が変わった。


酒と汗と鉄の匂い。

怒号、笑い声、剣がぶつかる乾いた音。


村とは、まるで別世界だ。


「……荒れてるな」


壁際には傷だらけの冒険者。

中央では、若い連中が戦果を誇り合っている。


ここは、力の世界だ。

才能が評価され、

数字と実績で人が測られる場所。


――つまり、俺には向いていない。


「登録ですか?」


受付の女性が、事務的に声をかけてきた。


「はい」


「身分証は?」


「ありません」


「……では、こちらへ」


淡々としたやり取り。

そこに期待も警戒もない。


それでいい。


用紙に名前を書きながら、周囲を観察する。


視線は、俺を素通りしていく。

派手な装備。

大きな声。

強そうな連中に、人の意識は集まる。


俺は、その外側だ。


「……居心地は、悪くないな」


凡人。

無名。

最下位候補。


この位置は、案外自由だ。


手続きを終えると、受付の女性が言った。


「では、次に進んでください」


「次?」


「冒険者登録には、順序がありますので」


そう言って、奥の通路を指さす。


その先には、

魔法陣の描かれた部屋がいくつも並んでいた。


緊張した表情の新人たち。

深呼吸を繰り返す者。

拳を握りしめる者。


……ああ、なるほど。


「ここで、測られるわけか」


俺は、静かに息を吐いた。


派手な結果は、期待できない。

むしろ、期待されない方が都合がいい。


凡人として始める。

それが、俺のやり方だ。


奥へ続く扉の前で、足を止める。


「……さて」


ここから先は、

この世界が俺をどう評価するかの話になる。


そして――

その評価が、どれだけ的外れかを、

俺だけが知っている。


扉の向こうへ、一歩踏み出した。

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