第1話
「くそつまんねぇ」
今日も同じことの繰り返しか。どうせ客来ねぇのに。
俺の名前は「神尾 治」
覚えてもらわなくて構わない。
フリーターから派遣に登録してもう半年。
こんな職場なら前のバイトの方がまだマシだった。……まあ、給料はマシになったけどな。
今の職場は家電量販店の携帯販売員。
もともと派遣会社で面接やる方がやりたかったのに、人手が足りないからと気づいたら家電量販店に突っ込まれてた。
携帯とか正直興味ないし、他人の携帯ならなおさらだ。
今もたまに来る婆さんのスマホ操作説明中。
「それで、写真を送りたいんだけど――」
知るか。孫に聞いとけ。
「それはですね、ここをこうして……」
なんでこんなことやってんだよカス。
「ありがとうございました~。またいつでも来てくださいね~。(二度と来んな)」
やっと終わった。
まあ正直、操作説明くらいなら暇つぶしにもなるし、むしろこれだけやる方が楽だ。
プラン案内とか登録とか、そっちの方がめんどくさい。
と、またなんか話しかけてきやがった。
「操作案内にどんだけ時間かけてんの? 成約に繋がるならいいけど、さっさと終わらせてくんない? あと――」
よくあるお局だ。
こいつはもともとどっかの店舗の店長だったとか聞いたけど、でかい顔して文句言う時だけ話しかけてくる。
しんどすぎる。
「はい、はい。すみません」
とりあえず適当に謝っとく。
いちいちうっさいんじゃ。俺の上司でもないくせに偉そうにしやがってクソが。
――再び売り場に立って二時間が経過した。
平日の家電量販店なんて暇すぎて妄想しながら時間が過ぎるのを待つしかない。
そういや昨日見た小説、面白かったな。
タイトル長すぎて覚えてねぇけど、よくある異世界俺TUEEEE系だった。
はぁ……なんか起こんないかな。
「...鑑定」
もはや口癖だ。
……出ないか。そりゃそうだ。
「すみません、この機種って乗り換えでこの値段ですか?」
また来た。うちに乗り換えられたら仕事増えるんだよなぁ。
「そうですね。でも他のキャリアさんも安いですよ!」
「うーん、でも他のとこはネット繋がらないし~」
食い下がってくる客の話を聞き流しながら、頭の中では新しい妄想の設定を考える。
よし、今日は“現代ダンジョンもの”にしよう。
客はなんか話がまとまりそうだから、適当に座らせとくか。
「では、お席にご案内しますね」
――と、店に併設されたカウンターに向かう途中。
またいつもの癖で、つい口に出した。
「ステータス(ボソッ……)」
……?
「どうしたんですか?」
「え、いや……え?」
しばらく立ち止まってしまう。
お局がキモい顔で睨んでるけど、そんなのどうでもいい。
なんか出た。
自分の目の前に、半透明の画面。
ゲームや漫画なんかでよく見る“アレ”。
現実世界では、絶対に出てくるはずのない――
「ははっ……」
困惑する客をよそに、俺の頭の中はフル回転する。これは...
ステータス画面やんけぇぇぇぇ!!!




