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流れ星  作者: ふみりん
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あやまち

「母さん、どうしよう」

悠治は青ざめた顔で呟いた。

「多分、千里に男がいる」

今まで考えた事もなかった。

「千里さんとは話したの?」

千代は冷静だった。結婚を決めた時何故かそんな不安があったのだ。

「私は知らない事にしておきます」

悠治はショックを隠せない様子でぶつぶつ言っている。

「しっかりしなさい」

悠治の動揺が千代にも伝わってくる。



「もうどうなってもいい」

千里は3人目を出産して心が不安定になっていた。

「今回は男の子を」と言う皆の期待が強すぎて、産む前から調子が悪かった。

「もしかしたら女の子かも」

その予想は的中した。

悠治さんの願いを叶えると決めていたのにまた駄目だった。どうしても自分が悪いと心の何処かで思ってしまう。


女は悲しい。子を産むことは当然の事と思われ、男子が産まれれば「でかした」と褒められる。そうでなければ地獄だ。

そんな時、ふと1人の男性に声をかけられた。社交ダンスで知り合った男性だ。

「大丈夫?何かあったの?元気ないけど」

千里は少し嬉しかった。自分の事を心配してくれる彼に心を許し初めていた。

彼と踊っていると現実を忘れられる。悠治さんの妻であることも、母親であることも…


サークルでダンスをしている内に聡さんの事が気になり初めていた。

その日は悠治さんはゴルフで泊まりだった。千里はいつもより濃いめの化粧でダンス教室に出かけた。

「聡さん、少し時間あります?」

思いきって声をかけた。


大人の付き合いが始まった。彼は悠治さんとは全く違うタイプだった。会うたびに女としての悦びが増していく。こんな愛もあるのだと千里は沼にハマっていった。

「誰にもバレなければ大丈夫」

千里は聡に会うのに躊躇いはなかった。この時の悦びを感じて自分を慰めていたのかもしれない。ただ悠治さんにだけは知られない様注意していたつもりだった。

いつも、悠治さんの男の子どもを欲しいと言う求めには必ず応えていた。


しかしそれとなく悠治は気付いていたのかもしれない。

聡との関係が数ヶ月過ぎた頃突然悠治さんから言われた。

「誰の事考えてる?」

千里は全身の血の気が引いていくのがわかった。

自分の体と心が不自然な事を悠治さんには隠せない。

これ以上は悠治さんを騙す事は無理だ。


千里の頭の中はぐちゃぐちゃだった。

聡との恋は楽しかったが、先には何も見えない事に不安があった。今まで自分が欲しかったものが無くなろうとしている。

妻の座も子ども達の母の座も無くして幸せだろうか?


「相手と別れられるか?今別れてくれればこれまでの事は無かったことにしよう。」

悠治さんの言葉に千里は決心した。

「聡さんとは別れよう」


ダンス教室を辞めた千里は有村家の嫁として悠治に一生尽くす事を願った。

「彼の子をもう1人産ませて下さい」

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