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流れ星  作者: ふみりん
7/8

ダンス教室

義父から受け継いだ歯科医院も軌道に乗っている。千里も歯科医師として忙しい毎日を送っていた。

「千里先生、お願いします。」

スタッフから声がかかる。

「はい」と返事して患者の待つ椅子に座る。

「先生の仕事は丁寧で良いね」

そんな言葉を聞くと千里は自然と微笑む。

「自分は妻として、母としてだけでなく社会人としても認められている」

この思いは千里を頑張らせている原動力なのかもしれない。


年に2回お盆とお正月には親戚が集まる。

いつもは義母の家でやるのだか今年は悠治さんの家でやることが決まった。

悠治さんの兄弟姉妹は8人いて、子供達も一緒なので食事の支度も一苦労だ。

「大変、何にしようかな?」

色々考えてローストビーフを作ることした。お寿司は出前をとって、後はそれぞれ何か一品ずつ持ってきて貰うことを義姉に提案した。

「良いと思うよ」

快く賛成してくれた義姉は、当日から揚げとポテトサラダを持参してくれた。

「お姉さん、助かります」

千里はそう言うとNINA RICCIの大皿に姉の持ってきた料理を盛り付けた。

義姉とは同じ嫁という立場もあって仲が良かった。子供達同士も年が近いこともあって、海に行ったり、お互いの家にお泊まりしたりしていた。

食事会でも子供達は、ゲームをしたり、音楽を聴いたり、真由美の怪談話に聞き入ったり、とても楽しそうだ。


千里は幼い頃、親戚や家族の団欒を経験したことがなかった。いつも母と2人で食事をしていたので、親戚付き合いは苦手で不安だった。

たまに皆で集まって食事する事は、自分が悠治さんの妻であること、歯科医師として成功している事をアピールする場でもあった。

千里の作ったローストビーフを

「これ、美味しい!誰が作ったの?洒落た料理だね」

何て言われると心の中で「やった」とガッツポーズする。それぞれ家庭の話を聞くのも悪くない。

「これが、家の繋がりなんだ」

皆が帰った後、労いのワインを悠治さんと頂く。


悠治さんは休みになると、医師会のゴルフに出かける。「これも仕事の内」と本人は言うが、とても楽しそうだ。

千里も社交ダンスに行くようになった。

悠治さんは千里が外で何をしても怒らないし、反対もしない。

「なかなか3人目もできないし、良いかな…」

軽い気持ちで始めたサークルだったが、なかなかハードで筋肉を使う。仕事柄前かがみになりがちな姿勢を正し、リズミカルに踊る。


千里はダンスに出かける時、赤い口紅をつける。たったそれだけの事で気持ちは高まる。

そんな時1人の男性に出会った。端正な顔立ちは千里好みだった。

「ダンスを踊るだけだから」

自分に言い聞かせて心に歯止めをかけていた。










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