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流れ星  作者: ふみりん
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お小遣い

半分大人になった千里は髪をカーリーヘアにして、化粧して、人との出会いを求めて青春していた。

ショーウィンドウに映るカーリーヘアの自分を見て千里はウキウキしていた。

「お小遣い無くなりそう」

学生の彼女には美容院代はいたい。黒髪の美しい千里はお化粧にも興味が出てきた。今月はピンチだ。顔立ちがハッキリしていたので化粧すると大人びて見える。

母からはそんなには貰えない。余り気が進まないが父に貰えないか相談した。

「何に使ったのか教えなさい」

そう言われて使った物と金額を紙に書いて渡した。

すると大体足りない分を渡してくれた。毎回足りなくなると父の方に頼んでいる。


千里の家庭は少し複雑だ。

母は若い頃芸者で今は父の愛人である。踊りや三味線が上手く、歌舞伎が大好きである。そんな母に産まれた千里は一人で生きていくためにも資格のとれる職業に就きたかった。母には悪いが男に頼る人生だけは送りたくないと小さい頃から思っていた。

だからと言うわけでもないが、日本舞踊は余り好きではない。男に媚びている感じがするからだ。

反対に社交ダンスは好きだ。対等な感じがして男性と踊っていてもワクワクする。千里は入学すると舞踏研究会に入部した。ワルツ、タンゴ、ルンバ等色々な種目を練習する。見た目とは違ってハードな練習が続く。大会になると化粧して踊る。自分の背筋が伸び、相手の呼吸に合わせるように…

こんな快感はないと感じた。


父と母の出会いなど千里には関係なかった。母の家に通うようになって自分が産まれて、その後も私たちが生活していける援助は続いた。私が大学まで行けたのも父のおかげであることは間違いなかった。

生活費で足りない分は申告して貰うというシステムに不自由は感じていたが就職するまでもう少しだ。「自分で稼げればもっと自分の好みでの物を買える」


粋な着物を着て父が来る日には手料理でもてなす母は嬉しそうだった。たまにしか会えない父を幼い頃は不思議に思っていた。

「家は他とは違うんだ」

運動会も父親参観も顔を出さない父に怒りや憤りを覚えた事もあったが、年を重ねて理解が出来てきた。

「仕方のない事なのだ」


夜になって友達と大家さんが経営するスナックに出かけた。大家さんは他県から来た千里達に優しく、時々団子汁をご馳走してくれる。

「スナックに飲みに行こう」

そう言われてアルコールに強かった千里は興味本位で出かけた。

大人の世界は千里には刺激的だった。此処で働いている女性は客の男性にお酒をすすめて、隣に座る。客の手は女性の体を触っているのがわかった。近くでは若い子が泣いている。

オーナーが触られることを嫌がっている子に説教しているようだった。

「ここは、大人の世界。学生の来るところではない」

そう思った千里は帰りたくなった。

夜の世界で働く事は覚悟がいるんだと千里は怖くなった。お小遣い稼ぎに働くにはリスクがある。ズルズルと堕ちていく自分の姿を想像すると思わず吐きそうになった。



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