⑨魔界のモノ
手入れの行き届いた日本庭園を進む。道の両サイドがライトアップされた緑道を進むと巨大な旅館が僕達の前に現れた。
これが六条院が言っていたセカンドハウス?
金持ちのレベルが、想像を越えてきた。
どんな悪いことをしたら、これほどの富を築けるのだろうか。
「失礼だなぁ、キミは」
ヤベッ。心の声が漏れてた。
「か、か、かか金持ちだからってな、ちょ、調子に乗るなよ! 金より大事なモノって絶対あるから!! お前は知らねぇだろうけど」
明らかに動揺している一二三が、先ほどの筋肉ゴリラのようなことを言って唾を撒き散らしている。
「維持費凄そうだね。広いから掃除とか大変そう」
「あぁ、うん…。そうだな。ってか、なんか…普通のコメント」
「いいでしょ、普通でも! バカっ」
プンスカ怒っている望。理不尽にバカ呼ばわりされた僕を置いて、さっさと前を歩いていく。
「ま、待ってよ」
………………………。
…………………。
……………。
一人一部屋。しかも驚いたことに個人個人に専用の世話人がつけられた。部屋には、十人ほど入れそうな露天風呂まである。
先ほどまでのキツい合宿から解放され、風呂は気持ち良かったし、寝る前の高級アイスは最高だった。
ふわふわと夢見心地。キングサイズのベッドに全身ダイブすると突然、部屋に設置されたスピーカーから、六条院の声がした。
『天馬君。起きてる~? 寝る前にさぁ、少し話せる?』
「あぁ…。大丈夫~」
寝ながら答え、のそのそと起き上がると部屋の外に出た。六条院にまだまだ世話になるつもりなので、なるべく愛想よくしようと思った。
部屋の前には、さっきまでの優しい世話人ではなく、厳つい黒服が立っていた。
「黒龍様。主がお待ちです。どうぞこちらへ」
「…………」
絡み合う蛇のオブジェの隣。下界への専用エレベーターに乗り、黒服と二人下降する。地下五階に到着すると、僕だけ下ろされた。
この階には部屋が一つしかなく、その赤い扉を静かに開けた。
部屋の中には六条院がいて、嬉しそうに僕を手招きしている。巨大な狼の剥製があったり、さまざまな暗殺用の武器や拷問器具のようなものがそこらじゅうにあった。
「ここは僕の秘密基地だよ」
「へぇ~……趣味悪いね」
「少し傷ついたよ」
珍しくシュンとした六条院。僕は慌てて謝った。
「ごめん! ごめん」
「…………」
一際警備が厳重な鉄扉。無言の六条院は凄まじい速さで暗証番号を入力し、映画で見るような網膜スキャンをした。扉が開かれると中は無機質な灰色の部屋で、中央に設置された白すぎる台に赤い棺桶だけが乗っていた。
「見なきゃダメ?」
「もちろん! その為に呼んだんだから」
「はぁ~…」
ワクワクしている六条院を横目で見ながら、僕は恐る恐る棺桶を開けた。
「っ!?」
中にはミイラらしき物が入っていた。ただ僕が驚いたのは、中身がミイラだからではなく、その頭に小さな角らしきモノを見たからで。
「これって、さっきの男と一緒……か?」
「そうだよ。恐らくコイツも奴と同じく魔界の者だと思う」
「こんなものどこで手にいれた?」
「僕の爺様が昔、知人から受け取ったんだ。このミイラはね、百年前の物なんだよ。百年前。つまり、最初に地上に現れた魔物。どうやら仲間割れしたみたいでね、全身はほとんどが欠損していた」
「僕のコレクションの中で一番のお気に入り。いいでしょ?」
「一ミリも羨ましくない」
「またまた~」
その時、突然ミイラの目が光り、その目から赤い光線が出た。その攻撃を僕は尻餅をついて、ギリギリで回避した。光線が当たった場所の壁には、黒い煤が出来ている。
「気をつけてね~。死んでからも人間を殺したいらしいから。コイツ」
そう言うとミイラの頭をペチンと叩いた。無数の赤い光線が部屋を照らす。
「やめろ! バカっ。刺激するなよ!!」
ほんと、冗談じゃない。
一秒でも早く部屋から逃げ出した僕に六条院は、
「近々、また新しいコレクションが増えそうだよ。ほんっと、今の時代に産まれて良かったぁ」
舌をペロッと出し、嬉しそうに痺れている変態。
「ヤバいな、お前!!」
「……ところで、天馬君。君のご両親を殺したのも、コイツの仲間でしょ?」
ザッ!!
ブシュっ。
左手でミイラの頭を完全に砕いた。
「こんな雑魚と一緒にするな」
「フフフフ。一番ヤバいのは、君だろう?」
天馬君