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⑧妙な展開

周りの安全確認終了。少ししたら、またこの場所にも活気が戻るだろう。


「……大丈夫?」


「うん。大丈夫、大丈夫!」


僕にVサインする穏やかな姉を見て安心した。


「あっ……」


だが、本心では穏やかではいられないと思う。折れてしまった日本刀。姉はショックを受けているに違いない。


「これ? あぁ、大丈夫だよ。この刀は安物だし。メルカルで五千円が、タイムセールで半額だったの。お得だよね~」


「え、そうなの? いつも持ってる愛刀じゃないんだ、これ」


「全然違うよっ! 分からないかなぁ。月とすっぽん。バラ園と加齢臭。あれは特別だから、本当にピンチの時にしか出さないよ。勿体なくて、使えないもん」


いや、さっき相当ピンチじゃなかった?


ジィィ…………。


「………………」


無言でチラチラとこちらを見ている望。


「どうした?」


「え、あ、うん? ナンデモナイヨ」


関西弁魔物も帰ったし、ゲートも閉じた。もう必要ないとサングラスを外す。


「ああっ!?」


叫ぶ望。なぜか残念そうに見える。ん? どうしたんだ。


「あのぉ……すみませんが、可愛い我が弟に欲情しないでもらえます?」


「してませんっ! バカなこと言わないでください!!!」


姉さんが僕を抱き締めながら呟くと、望は顔を真っ赤にして否定していた。


数分遅れで、望に飛ばされ星になった一二三が足を引きずり、杖をつきながらやってきた。この中で一番重傷だった。


「はぁ……はぁ…大丈夫ですか? 夕月さん」


お前が大丈夫じゃないだろ。


「大丈夫よ。ありがとう、一二三君。さっきは助けに来てくれて、すごくカッコ良かったよ。……でもね、次は本当に死んじゃうから、こんな無茶は今回だけにしてね」


「はぃ……。分かりました」


分かってないだろ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


そんなこんなで僕達は、ニューワールドの高層ビルに無事に帰還した。


「あっ! そうだ。天ちゃんと栗谷さん。一二三君と六条院君は、これから説教タイムだから第三会議室に十分後に集合ね~」


「えっ!?」


「当然でしょ~? 先生との約束を破ったんだから」


隣でなぜかハァハァ興奮している一二三。


「夕月さんのあの優しい声聞きながら……説教って言ってもさ、ある意味最高のご褒美だよな」


「なに言ってんだ、お前」


はぁ…。早く寝たい。


それにしても先ほどの関西弁魔物は、明らかにSレベル以上だった。たぶん、アイツがその気になったら、全く違う未来になっていたはずだ。


あんなヤツが魔界にはいる。

そのことを考えると身が震えた。


第三会議室に行くと姉さんの姿はなく、ゴツいゴリラのような男が待っていた。


「え、え、え、夕月さんは?」


震え上がる一二三。


「彼女は今回の件を上層部に報告する為、ヘリでアメリカに向かった。だからもう戻ってこないぞ。残りの合宿期間は俺、霜頭(しもかしら) 強羅(ごうら)が引き継ぐからな」


それを聞き、ゴミ箱に吐いた一二三。吐きはしなかったが、僕も目眩がした。


「先生。一つ質問いいですか?」


大人しかった六条院が手を挙げた。


「どうした? 六条院」


「夕月さんならともかく、B+のアナタのつまらない説教など時間の無駄でしかない。解散しても良いですか?」


持っていた竹刀を握りつぶすほどの怒りを露にする霜頭。


「なんだと? 貴様、学生の分際で偉そうに。六条院、少し金持ちだからって調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」


六条院の胸ぐらを掴む。慌てて二人を止めようとした僕を六条院は片手で制止した。


「先生……。はっきり言いますが、僕より弱いあなたから学ぶことは一つもないんですよ。だから、その汚れた手を離しなさい」


「まだ言うか、貴様っ!!」


その時、明らかに場の空気が変わった。霜頭の足元、その影から真っ黒な手が数本伸びて、霜頭の頭を鷲掴みにした。

ここからでも分かるすごい圧力が頭にかかっている。リンゴのように押し潰すことも可能だろう。


これが、初めて見る六条院の能力……。


「その手を離しなさい」


「……………」


霜頭は、ゆっくりと六条院から離れると壁にもたれかかった。完全に戦意喪失した彼からは、絶望以外の感情はないと思われた。


「先生。あと二日。残りの合宿期間、僕達は自由行動しますから。後は、宜しくお願いしますね」


「……………」


「返事は?」


「はい……」


六条院と固まるようにして、僕達は会議室を後にした。


「おいおい、これからどうするんだよ?」


小声で六条院の耳元で囁く。


「この近くに僕のセカンドハウスがあるから、そこに行こう。こんな場所より広いし、快適だよ」


いつ連絡したんだろう。すでにビルの外には、黒塗りの高級外車が数台待機していた。それに乗り込む僕ら。


なんだか妙な展開になってきたな。


「すげぇ快適。この車、飲み物まである。なんだ、これ。見たことねぇ炭酸出てきた。試しに飲んで見ろよ、天馬」


「うん。………美味っ! え、なんだ、コレ。コンビニ限定? あ、違う。全然違った」


でも霜頭の説教+地獄の合宿を回避できた僕には、六条院が救世主のように思えた。


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