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⑪雨上がりに

梅雨でもないのにもう二日も雨が降り続いている。望は、あの日から学校を休んでいた。最後に見たあの泣き顔が頭から離れない。


「望ちゃんさぁ、風邪ひいたみたいだよ。熱もなかなか下がらないみたい」


「え、大変。明日、お見舞いに行こうよ。みんなで。あ…、でも皆で行ったら迷惑かな」


そんなクラスの女子の話をこの地獄耳で聞いていた。


風邪……。傘もささないで、相当濡れたからな。


あぁ……全部僕のせいだ。望が風邪ひいたのも。


鬱が鬱を呼び、剥げるくらい髪をかきむしった。


『三年三組、黒龍。黒龍天馬ぁ。放課後、職員室に来なさい。来なかったら、留年だからな~』


さらに鬱を超加速する先生からの呼び出し。


「この世は地獄……地獄しかない。ほんと。はぁ~~~」


「はぁ~~~」


僕と同じように前の席の一二三も背中を丸めて深い溜め息を吐いていた。そういえば、数日前から元気がなかった。


「この前の合コンでさ、イケメン君殴っちった」


「……………」


「…………………」


「………………………」


「なんで殴ったの?って聞けよ!!」


「…………いや、そんなのクソどうでも良いんだわ。今は、それどころじゃないんだ」


「友達なくすぞ? お前」


「いいよ、別に。だから今は少し静かにしてくれ。心を落ち着かせたい」


「…………」


「……………」


「………………」


「ワっっーーーーー!!!! ワワっーーーーーーーー!!!!!!」


机に体を乗り上げ、一二三が僕の耳元で叫んだ。この幼稚過ぎる行為に不覚にも笑ってしまった。


「や、やめろって! ハハ」


「ワワワっーーーーー!!!!」


「ハハハハ」


一二三のこの大人になりきれない感じ。無邪気さが、意外と僕は好きだった。


しばらく、友達継続しようと思った。


………………………。

………………。

…………。


放課後。生徒指導室での補修をやっと済ませ、帰り支度。いつもよりだいぶ遅い帰りになってしまった。


廊下で前から歩いてきた副会長にばったり会った。


「キミさぁ、黒龍天馬君だよね。補修は終わったの? これ以上、会長に迷惑かけるなよ。彼女の足を引っ張ってる自覚はさすがにあるよな? いくらバカでも」


こんな嫌味なクソ野郎が望の彼氏………。


「早く帰りたいから、もういい?」


「いや、まだキミには話がある」


肩に手をかけられた。その時、非常時のサイレンが校舎内に響き渡った。嫌な予感がした僕は、慌てて窓を開けて外を確認した。引き裂かれた空からはボトボトと魔物が落下していた。その落下地点を見つめる。


走り出そうとした僕を引き留める副会長。


「まだ話があるって言ってるだろう」


ピキッ。


空間が歪むほどの殺気が自分の体からだだ漏れている。


副会長の手を折らないように握り返し、


「今は、忙しい。後にしろ」


「っ!!?」


なぜか、頬を染めた副会長。


その姿が少し気になったが、無視して魔物の落下地点に急いだ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



サイレンの音が私の部屋にも聞こえた。

ベッドから起き上がると軽い目眩がした。相当体力が落ちている。食欲なくてあまり食べてなかったからなぁ。


「……………………」


魔物達の気配を感じる。ここからそう遠くない。すぐ近くまで来ている。


逃げるわけにはいかない。この店は、絶対に守らないといけないから。


着替える時間もない。パジャマ姿で外に出た。


「はぁ……はぁ…」


家の角から魔物達の悲鳴が聞こえた。

走って、確かめる。


そこにはーーー。


「おい! 寝てなきゃダメだろ」


傷だらけの天馬が、魔物達の屍の上に立っていた。


「大丈夫だよ。ここから先には、絶対にっ! 行かせないから。安心して寝てて」


「天馬……」


彼の優しさが伝わってきて、また泣いてしまった。


もう我慢ができなくて。私は、抱きついた。


「天馬。天馬。天馬ぁ」


「ちょっ、ちょっ! まだ魔物来るかもだから。離れて! 危ないって」


「嫌っ! 離れない!!」


「…望………あのさ…………こんな場面で言うのは絶対に違うと思うんだけど……。だけど言うよ」


「……?」


「す…す……。あ……。好きだっ! だからさ!! 死んでも守る」


天馬の頭を鷲掴みにして、そしてその口にキスをした。天馬は、目を丸くしてすっごく驚いてた。


「私も好き。ずっとずっーーーと前からあなたが好きです」


「あ、好き?」


「うん。好き」


しばらくして魔物討伐のプロが来て、残った魔物も一掃された。


いつもの日常。だけど今は世界が少し違って見えた。天馬はキョドって辺りを見ている。


私達の想いは、その繋いだ手から共有され、それは萎んだ心をゆったりと揺らした。


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