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⑩二人の想い

プロ活を終えた僕達は全員無傷で帰還した。次の日から通常授業だったが、合宿終わりのあの嫌な筋肉痛もなく、むしろ行く前より調子が良かった。


それもこれも。あれも全部。六条院様のおかげ。僕と一二三は彼の前で膝をつき、ゆっくりと手を合わせた。


「は? なにそれ」


戸惑う神様。ありがたや~。


…………………………。

…………………。

……………。


放課後、一二三に誘われた。


「天馬、天馬。この後さ、合コン行こうぜ。どうせ暇だろ? 帰ってもエロいゲームやるだけなんだから」


「ご、合コン?」


「あぁ。いつものイケメン君が来なくてさ、仕方ないからお前来いよ。ただのメンバー合わせだけどな。たまにヘラヘラ笑ってれば良いから」


「………………あなた、そんなんじゃ友達なくしますよ? そんな不快極まる誘いで行く奴いるか? この地球上に」


「拒否るなよ。西高の女子との合コンだぞ。あいつらお嬢様の癖に尻軽だからすぐヤれるってさ。今回は、当たりなんだよ」


「おーい、おい! おい!! おいって!!! お前、よく好きな人の弟の前でそんなこと言えるな。二度とっ! 二度とだ。姉ちゃんに近づくなよ? 同じ空気を吸うな。腹立つから」


「そんなに怒るなよ~。本当に好きなのは夕月さんだけだよ、マジでさ。他の女は、ただの遊びだよ~」


「触るなっ! クズが!!」


「天馬ぁ~~。一緒に合コン行こうよ~~。ヘラヘラするの得意だろ?」


「死にさらせっ!!」


僕に後ろから抱きつくクズをやっとのことで引き剥がし、足早に教室を後にした。

正面玄関で靴を履き替えていると、甲高い女子二人の声がした。内緒話が、丸聞こえ。


「ねぇねぇ、さっき生徒会長がさ、副会長に告白されてたよ」


「えぇ~! 副会長? 五十嵐君が?え~……ショック。私、狙ってたのに」


「あんたじゃ絶対に無理だよ」


「はぁ? 無理じゃねぇし」


くつ紐を結ぶ手が止まった。


「……………」


「でもさぁ、お似合いのカップルだよね~。美男美女って感じでさ。はぁ~……いいなぁ。私も早く付き合いたい」


「ってことはさ、残すは六条院様だけかぁ。でも彼、ハードル激高なんだよね~。競争率、副会長の比じゃないし。この前さ、他校の女子まで見に来てたよ」


「うん。あれは、ムリ。私達じゃ絶対に。それは、分かる」


二人の笑い声が、響き渡る。


「……………………」


望が誰かと付き合うなんて想像したこともなかった。それを今、想像し………目眩がするような感情の乱れ、不調を感じていた。


帰り道。明らかにいつもより何倍も足が重かった。


「…………………」


方向転換し、急遽小腹がすいたため、望の弁当屋に行くことにした。電信柱の影から様子を伺う。


店先では、ダメージジーンズに堕天使のシャツを着た望のお母さんが、お客の相手をしている。相変わらず、ヤンチャ美しい人だ。


「まだか……」


望はいない。


少し待とう。望がいたら、割引いてくれるだろうし。


「……………」


ま、まだ?


「…………………」


まだなのか??


ずいぶん遅いな。


夕方を過ぎ、辺りが暗くなった頃、ようやく望が帰ってきた。


「っ!?」


笑いながら、副会長と一緒に帰ってきた。


「……………」


二人の姿を見て、吐きそうだった。

こんな惨めな思いをするくらいなら、一二三と一緒に合コンに行けば良かった。


長身の副会長に手を振り、別れた望は早速、店の手伝いを始めている。


そのエプロン姿を見て、僕は何も買わず遠回りをして、家に帰った。


その日から、僕は望を避けるようになった。朝もなるべく望に会わないように遠回りをして登校したり、学校で会っても軽い挨拶くらいで、あとは一二三とずっーーとつるんでいた。


一週間が過ぎた頃。その日も足早に学校を去ろうとした僕の左手を誰かに掴まれた。


「なんで避けるの?」


望は、明らかに怒っている。


「避けてないって」


これ以上話すのも嫌だったし、僕は望の手を振り払うとすぐに学校を出た。急に天気が悪くなり雨が降りだしたが、なぜか傘をさす気にならなかった。


家の屋根が見え始めると、後ろから誰かが走って来る音が聞こえた。姿を見なくてもそれが誰だか分かった。


「天馬っ!」


「……………」


「どうして私から逃げるの?」


「………これ以上、構わないでくれ。望は僕といない方が良いよ。変な噂が立つから。二人の仲を邪魔したくないし……」


「え、どういうこと?」


「だからさ! 僕に構うなって!!」


なんでこんなにイライラするんだ?


副会長と望が笑っている姿が、ずっと頭から離れない。



「………どうして」


泣いている。雨の中。傘もささず。


気付いたら僕は、振り向いていた。


「どうして……そんなこと…言うの?」


絞り出すような声。

望は、涙を流しながら僕を真っ直ぐ見つめていた。


その泣き顔を見て、やっと分かった。



僕は、望が好きなんだと。好きだから、望が誰かと一緒になるのが許せなかった。


「あっ……望……あの…」


望はそれ以上何も言わず、僕の横を足早に通り過ぎると、雨の中消えてしまった。


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